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暗殺者のベイン
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「全然似ていないですねぇ」
名無しのナナシを見たホクベルの第一声はそれだった。
一同はその言葉を、ホクベルがナナシの親である事を否定する意味で言ったものなのかと思い、ヒヤリとした。
皆の不安をよそに、ホクベルは細い目に涙を溜めて鼻を啜っている。
「・・・確かにハナの子だ。ハナにそっくりだ! 僕のような細目じゃない! 僕に似なくて良かった!」
そう言ってホクベルはナナシを抱きしめた。
「パパでちゅよ、ナナシ! 僕がパパでちゅよ!」
「パパはあっちぃ」
と言ってナナシはナンベルを指差した。物心ついたときから、ナンベルが父親代わりをしていたのでそういう反応があって当然か、とホクベルは今は諦める。
(これから親子の時間を作っていけばいいのです。なぁにすぐに馬鹿弟の事なんて、忘れさせてみますよッ!)
自分を父だと呼んだナナシに、ホクベルは激しいタップを踊って喜びを表す。
「うほぉ! ナナシ様からご指名入りましたぁ~! これよりこの道化師ナンベルがッ! ナナシィー様の父親を務めさせていただきまんもす!」
そう言ってナンベルはナナシのぷくぷくのホッペに触れるか触れないかぐらいの距離で、口をパクパクさせてキスを繰り返した。ヤキモチを焼いたルビが同じことを父親にする。
「気持ちの悪いことをしないでください、君たち。我が子が真似をしたらどうするのです? あっちへいきなさい、ナンベル」
ナナシを取り合う兄弟を見て、イグナは珍しく感情を顔に出してヒジリに抱きついた。
「良かった! これでナナシはお父さんと一緒にいられるね!」
「そうだな。ナンベルはハナとの約束を破ってしまったが、結果的にこれで良かったのかもしれない」
なんとく見たイグナの顔に寂しさがよぎったような気がヒジリはした。
(そうか、サヴェリフェ家の両親は、今もエポ村の草原で石と化したままなのだった。父親との思い出は彼女にも沢山あるだろう。流石にこの星に来た時点で、石化していた者を直す事はカプリコンですら無理だ。生身の状態を先に記憶していたならば、石化など何でもない事なのだが・・・。今後は石化を治す術を見つける事も視野に入れておくか・・・)
ヒジリは、寂しそうな顔をして父子の再会を見るイグナの頭を撫でて思う。
(君の両親が石化から復活するまでは私が父親だ、イグナ。それまで存分に頼ってくれたまえ)
父親と言うには歳が近すぎるが、それでもヒジリは絆を結んだサヴェリフェ家の姉妹たちが望むなら、私は父親にでもなんにでもなってやるさと心に誓って、その後の食事会を過ごした。
「チッ! 妙なオーガ達に絡まれて逃げるのに手こずった・・・」
旅慣れた風貌のゴブリンは、長い鼻の頭に浮く汗をハンカチで拭った。
「もう夜中じゃねぇか。明日にするか? いや、ここに泊まっている可能性もある。さっさと確かめて、いなければピンク色の城の方だ」
ゴブリンが見た門の看板には、ナンベル孤児院と書いてあり、その横に学校とも書いてあった。
「それにしても、王がこんな孤児院兼学校に何の用だ?」
気配を殺し、暗視で地面を確かめて音を出しそうな物が無いかを確かめる。
「【目標】!」
上位アサッシンが使う魔法【目標】は狙った相手が近くにいるかどうかを確かめことが出来るが、半径十メートル程しか効果がない。
ゴブリンは庭を通って建物にピッタと張り付いて歩くと、目標がいないかを隈なく探った。
「チッ! いねぇか。やはり城に向かうべきだったな。今から行ってもいいが、今日は疲れた・・・」
ブン! と太い丸太が振られるような音が背後からした。ゴブリンは咄嗟にしゃがむと、頭の上を太い腕が通過していく。
「どろぼう」
野太い声がそう言う。
「ふぅ。助かった。ウスノロオーガか」
ゴブリンは振り返って自分を襲った相手が、誰かを確認し安堵した。
「よく、俺のことを感じ取れたな。隠遁スキルは発動させていたはずだぜ?」
「コロネが見破り方を教えてくでた」
「じゃあそのコロネとやらを恨むんだな。俺を見つけていなければ、お前は死ぬ事がなかった」
チャキ! とダガーを二刀流で構え、ゴブリンはオーガの股の下をくぐり抜けた。
「イダッ!」
ドォスンは目の前のゴブリンが消えたと思ったら、足に痛みを感じ後ろに倒れた。
「もう立てねぇぜ? アキレス腱を切ったからよ。ヒーラーの少ない闇側じゃ、一生歩けないかもな。おっと! お前はもうすぐ歩く必要も無くなるんだったわ。すまんすまん」
倒れながらもドォスンは腕を振り回して必死に抵抗する。オーガは死ぬまで諦めない性質で、どんなにピンチだろうが命尽きるまで生への執着を忘れない。
当たれば即死級のオーガの攻撃を掻い潜って、ゴブリンはピタッとドォスンの喉にダガーを突きつけた。
「終わりだ」
「お前がな」
ビュッ! とゴブリンの首を狙って何者かの剣が薙ぎ払われる。月明かりに照らされた段平は、まるで魔法の剣が如く軌跡を残す。
が、光の残光は空を切っていた。
「あぶねぇ。もう一人警備員がいたのか。しかも魔人族の戦士ときた。珍しいな。アイツと同じじゃねぇか」
力のない魔人族にしては軽々と剣を振るうな、と跳躍の最中そう考え、着地してからゴブリンはじっくりと女を見る。
「私がそのアイツと同じだったらどうする? ベイン」
「へぇ? どこでその情報を? それともこう言って欲しいのか? 『お、お前! ハナなのか! お前は死んだはずだ!』と」
ゲキャキャキャキャと小さく笑って、ベインと呼ばれたゴブリンは学校の外へと走り出した。
あまり敷地内で戦っていると、厄介な狂人道化師ナンベルが出てきかねない。もしかしたら既に自分の存在に気がついていて、戦いをどこかで見守っているのかもしれない、という考えが過り、冬の乾いた空気の中、額から汗が流れ落ちる。
「暗殺者の上位職、道化師。こちらの手の内を知られている以上、戦いたくないな。まぁいざとなれば・・・」
逃げながら懐のナイフを見る。
石化のナイフ―――、その名の通り傷つけた相手を徐々に石化させる、世界に三本あるかどうかの貴重なナイフ。その二本がここにある。
「もしナンベルが出てきたら、勿体無いが一本使うか。一度使うと一ヶ月は石化の効果が無くなるからな。魔王を倒したというオーガメイジにも、これが必須だろうし、必ず一撃で仕留めないと」
突然、目の前で段平が薙ぎ払われた。
「な、なに? お前は俺を追いかけていたはず。いつ追い抜いた?」
既のところで躱してベインは後ろに飛び退いた。
すると今度は後ろから段平が薙ぎ払われた。それも何とか躱してベインは驚く。後ろにも魔人族の女がいたからだ。
「同じ顔が二つ! 双子だったのか?」
しかし、その言葉を聞いて目の前の女が、突然狂ったように笑いだした。
「キュキュキュキュキュキュキュ!」
女の姿が滲んで道化師の姿になる。
「ゲェー! ナ、ナンベル・ウィン!」
この狂った道化師は白塗りの顔に、刺々しい蝶々のような赤いメイクをしており、それが一掃こちらの思考を恐怖に染めようとしてくる。
(あのメイクも、何かしらの魔法効果があるのだろう・・・)
ベインは恐怖で動きを鈍らせまいと、どうでもいい事を考えて紛らわせる。
ナンベルは無駄にクルリとターンして、動揺が微かに顔に浮かぶゴブリンに向かって指を鳴らした。
「よくもドォスンを怪我させてくれましたねぇ? それにしても、給食のおばちゃんさんが、ハナの事を知っているとは知りませんでしたよ? 傭兵仲間ですかぁ?」
ナンベルは給食のおばちゃんを見る。
「・・・」
いつもの如く、返事はない。不自然に動かない顔が、じっとこちらを見るだけだ。
「だんまりですか・・・。はぁ~。後でじっくり聞かせていただきましょう。キュッキュッキュ!」
二人がやり取りをしている間に、ベインは迷うことなく懐から石化のナイフを取り出し構える。
「俺は、駆け出しのアサッシンみたいなヘマをする程落ちぶれちゃあいないはず、なんだがなぁ。やっぱりアンタの家に忍び込むのは無謀だったか・・・」
「そういう事ですねぇ。学校の結界をくぐり抜けてきた貴方の実力は相当だと思いますが、残念。結界を通ると小生の耳に警報が鳴るようになっているンですよぉ」
「そんな結界、聞いた事がねぇ。チッ! 運が悪いぜ」
前には道化師ナンベル。
誰かに見つかると途端に力を発揮出来なくなるアサッシンやスカウトと違って、道化師は敵の正面からバックスタッブができる。なので一対一ならば、戦士相手でも余裕で戦えるのだ。とにかく虚を突くのが上手いので、一瞬たりともナンベルから目を離せない。
そして後ろには手練の戦士。重そうな段平を片手で振り回している事から、魔人族にしては力持ちだ。恐らく魔法の装飾品か何かで、腕力をブーストしているのだろう。
「へっ! どっちからやってやろうか?」
ナンベルと給食のおばちゃんの間に挟まれるのを嫌がって、ベインは後ろに飛び退き、三人で三角の形を作る。
「虚勢ですねぇ・・・。見苦しいですよぉ。キュキュ」
そう言われたベインは、体に力を篭めた。
(大丈夫だ。俺には石化のナイフがある! やれる! 怖気づくな!)
「最初からクライマックスだぜぇ? ヒへへへ!」
ゴブリンの体がボコボコと盛り上がる。着ていた革鎧が弾け飛び、筋肉に盛り上がって、深緑の肌が露わになった。その盛り上がった上半身の背中から、コウモリのような翼が生える。
「なんと! 悪魔化ですか・・・。魂を悪魔に売るとはッ! 愚かな事ですよぉ」
「うるせぇ! おっと!」
給食のおばちゃんが、変身途中だったベインを攻撃する。
ベインは上空に飛んで攻撃を躱し、満月を背に両手を広げて叫んだ。
「ヒャッハー! 最高の気分だ!」
名無しのナナシを見たホクベルの第一声はそれだった。
一同はその言葉を、ホクベルがナナシの親である事を否定する意味で言ったものなのかと思い、ヒヤリとした。
皆の不安をよそに、ホクベルは細い目に涙を溜めて鼻を啜っている。
「・・・確かにハナの子だ。ハナにそっくりだ! 僕のような細目じゃない! 僕に似なくて良かった!」
そう言ってホクベルはナナシを抱きしめた。
「パパでちゅよ、ナナシ! 僕がパパでちゅよ!」
「パパはあっちぃ」
と言ってナナシはナンベルを指差した。物心ついたときから、ナンベルが父親代わりをしていたのでそういう反応があって当然か、とホクベルは今は諦める。
(これから親子の時間を作っていけばいいのです。なぁにすぐに馬鹿弟の事なんて、忘れさせてみますよッ!)
自分を父だと呼んだナナシに、ホクベルは激しいタップを踊って喜びを表す。
「うほぉ! ナナシ様からご指名入りましたぁ~! これよりこの道化師ナンベルがッ! ナナシィー様の父親を務めさせていただきまんもす!」
そう言ってナンベルはナナシのぷくぷくのホッペに触れるか触れないかぐらいの距離で、口をパクパクさせてキスを繰り返した。ヤキモチを焼いたルビが同じことを父親にする。
「気持ちの悪いことをしないでください、君たち。我が子が真似をしたらどうするのです? あっちへいきなさい、ナンベル」
ナナシを取り合う兄弟を見て、イグナは珍しく感情を顔に出してヒジリに抱きついた。
「良かった! これでナナシはお父さんと一緒にいられるね!」
「そうだな。ナンベルはハナとの約束を破ってしまったが、結果的にこれで良かったのかもしれない」
なんとく見たイグナの顔に寂しさがよぎったような気がヒジリはした。
(そうか、サヴェリフェ家の両親は、今もエポ村の草原で石と化したままなのだった。父親との思い出は彼女にも沢山あるだろう。流石にこの星に来た時点で、石化していた者を直す事はカプリコンですら無理だ。生身の状態を先に記憶していたならば、石化など何でもない事なのだが・・・。今後は石化を治す術を見つける事も視野に入れておくか・・・)
ヒジリは、寂しそうな顔をして父子の再会を見るイグナの頭を撫でて思う。
(君の両親が石化から復活するまでは私が父親だ、イグナ。それまで存分に頼ってくれたまえ)
父親と言うには歳が近すぎるが、それでもヒジリは絆を結んだサヴェリフェ家の姉妹たちが望むなら、私は父親にでもなんにでもなってやるさと心に誓って、その後の食事会を過ごした。
「チッ! 妙なオーガ達に絡まれて逃げるのに手こずった・・・」
旅慣れた風貌のゴブリンは、長い鼻の頭に浮く汗をハンカチで拭った。
「もう夜中じゃねぇか。明日にするか? いや、ここに泊まっている可能性もある。さっさと確かめて、いなければピンク色の城の方だ」
ゴブリンが見た門の看板には、ナンベル孤児院と書いてあり、その横に学校とも書いてあった。
「それにしても、王がこんな孤児院兼学校に何の用だ?」
気配を殺し、暗視で地面を確かめて音を出しそうな物が無いかを確かめる。
「【目標】!」
上位アサッシンが使う魔法【目標】は狙った相手が近くにいるかどうかを確かめことが出来るが、半径十メートル程しか効果がない。
ゴブリンは庭を通って建物にピッタと張り付いて歩くと、目標がいないかを隈なく探った。
「チッ! いねぇか。やはり城に向かうべきだったな。今から行ってもいいが、今日は疲れた・・・」
ブン! と太い丸太が振られるような音が背後からした。ゴブリンは咄嗟にしゃがむと、頭の上を太い腕が通過していく。
「どろぼう」
野太い声がそう言う。
「ふぅ。助かった。ウスノロオーガか」
ゴブリンは振り返って自分を襲った相手が、誰かを確認し安堵した。
「よく、俺のことを感じ取れたな。隠遁スキルは発動させていたはずだぜ?」
「コロネが見破り方を教えてくでた」
「じゃあそのコロネとやらを恨むんだな。俺を見つけていなければ、お前は死ぬ事がなかった」
チャキ! とダガーを二刀流で構え、ゴブリンはオーガの股の下をくぐり抜けた。
「イダッ!」
ドォスンは目の前のゴブリンが消えたと思ったら、足に痛みを感じ後ろに倒れた。
「もう立てねぇぜ? アキレス腱を切ったからよ。ヒーラーの少ない闇側じゃ、一生歩けないかもな。おっと! お前はもうすぐ歩く必要も無くなるんだったわ。すまんすまん」
倒れながらもドォスンは腕を振り回して必死に抵抗する。オーガは死ぬまで諦めない性質で、どんなにピンチだろうが命尽きるまで生への執着を忘れない。
当たれば即死級のオーガの攻撃を掻い潜って、ゴブリンはピタッとドォスンの喉にダガーを突きつけた。
「終わりだ」
「お前がな」
ビュッ! とゴブリンの首を狙って何者かの剣が薙ぎ払われる。月明かりに照らされた段平は、まるで魔法の剣が如く軌跡を残す。
が、光の残光は空を切っていた。
「あぶねぇ。もう一人警備員がいたのか。しかも魔人族の戦士ときた。珍しいな。アイツと同じじゃねぇか」
力のない魔人族にしては軽々と剣を振るうな、と跳躍の最中そう考え、着地してからゴブリンはじっくりと女を見る。
「私がそのアイツと同じだったらどうする? ベイン」
「へぇ? どこでその情報を? それともこう言って欲しいのか? 『お、お前! ハナなのか! お前は死んだはずだ!』と」
ゲキャキャキャキャと小さく笑って、ベインと呼ばれたゴブリンは学校の外へと走り出した。
あまり敷地内で戦っていると、厄介な狂人道化師ナンベルが出てきかねない。もしかしたら既に自分の存在に気がついていて、戦いをどこかで見守っているのかもしれない、という考えが過り、冬の乾いた空気の中、額から汗が流れ落ちる。
「暗殺者の上位職、道化師。こちらの手の内を知られている以上、戦いたくないな。まぁいざとなれば・・・」
逃げながら懐のナイフを見る。
石化のナイフ―――、その名の通り傷つけた相手を徐々に石化させる、世界に三本あるかどうかの貴重なナイフ。その二本がここにある。
「もしナンベルが出てきたら、勿体無いが一本使うか。一度使うと一ヶ月は石化の効果が無くなるからな。魔王を倒したというオーガメイジにも、これが必須だろうし、必ず一撃で仕留めないと」
突然、目の前で段平が薙ぎ払われた。
「な、なに? お前は俺を追いかけていたはず。いつ追い抜いた?」
既のところで躱してベインは後ろに飛び退いた。
すると今度は後ろから段平が薙ぎ払われた。それも何とか躱してベインは驚く。後ろにも魔人族の女がいたからだ。
「同じ顔が二つ! 双子だったのか?」
しかし、その言葉を聞いて目の前の女が、突然狂ったように笑いだした。
「キュキュキュキュキュキュキュ!」
女の姿が滲んで道化師の姿になる。
「ゲェー! ナ、ナンベル・ウィン!」
この狂った道化師は白塗りの顔に、刺々しい蝶々のような赤いメイクをしており、それが一掃こちらの思考を恐怖に染めようとしてくる。
(あのメイクも、何かしらの魔法効果があるのだろう・・・)
ベインは恐怖で動きを鈍らせまいと、どうでもいい事を考えて紛らわせる。
ナンベルは無駄にクルリとターンして、動揺が微かに顔に浮かぶゴブリンに向かって指を鳴らした。
「よくもドォスンを怪我させてくれましたねぇ? それにしても、給食のおばちゃんさんが、ハナの事を知っているとは知りませんでしたよ? 傭兵仲間ですかぁ?」
ナンベルは給食のおばちゃんを見る。
「・・・」
いつもの如く、返事はない。不自然に動かない顔が、じっとこちらを見るだけだ。
「だんまりですか・・・。はぁ~。後でじっくり聞かせていただきましょう。キュッキュッキュ!」
二人がやり取りをしている間に、ベインは迷うことなく懐から石化のナイフを取り出し構える。
「俺は、駆け出しのアサッシンみたいなヘマをする程落ちぶれちゃあいないはず、なんだがなぁ。やっぱりアンタの家に忍び込むのは無謀だったか・・・」
「そういう事ですねぇ。学校の結界をくぐり抜けてきた貴方の実力は相当だと思いますが、残念。結界を通ると小生の耳に警報が鳴るようになっているンですよぉ」
「そんな結界、聞いた事がねぇ。チッ! 運が悪いぜ」
前には道化師ナンベル。
誰かに見つかると途端に力を発揮出来なくなるアサッシンやスカウトと違って、道化師は敵の正面からバックスタッブができる。なので一対一ならば、戦士相手でも余裕で戦えるのだ。とにかく虚を突くのが上手いので、一瞬たりともナンベルから目を離せない。
そして後ろには手練の戦士。重そうな段平を片手で振り回している事から、魔人族にしては力持ちだ。恐らく魔法の装飾品か何かで、腕力をブーストしているのだろう。
「へっ! どっちからやってやろうか?」
ナンベルと給食のおばちゃんの間に挟まれるのを嫌がって、ベインは後ろに飛び退き、三人で三角の形を作る。
「虚勢ですねぇ・・・。見苦しいですよぉ。キュキュ」
そう言われたベインは、体に力を篭めた。
(大丈夫だ。俺には石化のナイフがある! やれる! 怖気づくな!)
「最初からクライマックスだぜぇ? ヒへへへ!」
ゴブリンの体がボコボコと盛り上がる。着ていた革鎧が弾け飛び、筋肉に盛り上がって、深緑の肌が露わになった。その盛り上がった上半身の背中から、コウモリのような翼が生える。
「なんと! 悪魔化ですか・・・。魂を悪魔に売るとはッ! 愚かな事ですよぉ」
「うるせぇ! おっと!」
給食のおばちゃんが、変身途中だったベインを攻撃する。
ベインは上空に飛んで攻撃を躱し、満月を背に両手を広げて叫んだ。
「ヒャッハー! 最高の気分だ!」
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