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混沌のレストラン
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「うひょー! 美味そうですぞー!」
イシーのレストランの一席で、マサヨシの切れ長の目が見開かれた。
「右が普通のステーキ、左がオティムポ牛のステーキだ。食べ比べて、ぜひ感想を聞かせてくれたまえ」
「オティムポ牛の肉って貴重なんでそ? いいの? 頂いちゃって」
「いいーんです」
「そこで川平慈英ぶっこんできますか。オフフフ」
マサヨシは、既に肉を頬張っているサヴェリフェ姉妹達の顔を見る。
んー! と美味しい顔をするタスネ。
エクスタシーを感じているかのような表情のフラン。
身に纏う闇を吹き飛ばすような笑顔を見せるイグナ。
周りの事なんかお構いなしで、ガツガツと肉を頬張るコロネ。
(こりゃ相当美味しい肉ですな・・・。姉妹の顔がそれを物語ってるしお寿司。お肉だけど)
「でもどうして家で焼かずに、レストランに食材を持ち込んだんですかな? ヒジリ氏」
「餅は餅屋だ」
「なるほど(お肉だけど)」
美味しい物はちびちび食べる性分のマサヨシは、まず普通のステーキを小さく切って食べる。
「うん、普通とはいえ美味しい。でもちょっと何回も噛まなければならないのが、ちょっと。顎が疲れますな」
それから待ってましたとばかりに、オティムポ牛のステーキを、同じく小さく切って食べた。
「おほ! 柔らかい! 思ったより、あっさりしているんだな。もっとジューシーかと思ったけど」
しかしリツは頬を押さえて、肉汁が口の中で溢れて溺れそうだと言っている。
(肉汁? あれおかしいな。美味いっちゃ美味いんだけどそこまでか?)
マサヨシは周りの温度と自分に差がある事を、何となく感じ取っていた。
「食べてみてどうだったかね? マサヨシ」
「何で、ヒジリ氏は食べないのですかな?」
「私はうっかり朝食を食べ過ぎてね。お腹がいっぱいなのだ」
「味は美味しいですぞ。ただ皆が言うほどかな~っ? て感じですな。ご馳走してもらっておいて、そんな事を言うのもなんですけど。オフッオフッ」
「やはりか。実は私もオティムポ牛の複製品を何度か食べたのだがね。普通の野性味溢れる牛の味といった感じだったのだよ。ウメボシ曰く、オティムポの肉は、他の牛肉よりも貴重だから、その思い込みでマナが作用し、美味しくなると言っていた。で、我々よりもマナの影響を受けるマサヨシに、食べさせてみたらどういった反応があるのだろうかということで、試させてもらったのだよ」
メンテナンスでこの場にいないウメボシの仮説を検証しているのだ、とマサヨシに話す。
「ふむふむ。それほどオティムポ牛の事を知らない俺ですと、効果はこの程度だったというわけですか。ありがたがって食べている姉妹は、幸せそうな顔をして食べいますな。ヘカちゃんに至っては味わう事もなく、平らげていますけど」
ヘカティニスを見ると、マサヨシの言った通り、飲み物のようにステーキを平らげてきょとんとしていた。
「あで? おでの肉がないど?」
「耄碌しましたの? ヘカ。今自分で食べてしまったでしょう?」
隣に座るリツが「何言ってんだコイツ」という顔をしている。
「きっと、お前が盗んだんだ。狐女。その肉よこせ」
「もう! ノーマルオーガの意地汚さには、嫌になりますわね!」
そう言ってリツは手を叩いて給仕を呼ぶ。
「この飢えたオーガに、普通のステーキ十人前を!」
「あいよー!」
へ? という顔をしてヘカティニスは驚いた。
「い、いいのか?」
「私からのプレゼントですわ」
普段は自分に対して拒否や拒絶をするリツが、今日は優しい。
「お、お前良い奴だったんだな」
そういってヘカティニスは銀髪の頭を、リツの肩に擦りつけた。
「私は明日、帝国に報告に戻らなければなりません。皇帝陛下の気分によっては、二度とグランデモニウム王国に戻ってこれないかもしれませんから。いつも喧嘩ばかりしていましたが、最後ぐらい貴方に好い印象を残しておこうと思いまして」
言わなくて良い事まで正直に言う自分に「フフッ」と笑ってヘカティニスを見ると、彼女はこちらの話など聞いておらず、給仕が持ってきた肉に間髪入れずかぶりついているところだった。
「ちょっと! ヘカティニス! もっと味わって食べたらどうです? 私の奢りなのですよ? というか肉が出てくるの早くないですこと?」
リツがそう言うと、給仕がブーメランの如く慌てて戻って来た。
「はわわわ! 間違って予約のオティムポ牛を、ヘカ様にお出ししてしまった!」
給仕ゴブリンが、青い顔をしてトレイを落として膝をつく。
隣のテーブルに座る、エリートオーガの一家が、怪訝な顔をして見合わせる。
「ま、まさか・・・。その肉、我々が食べる予定だった肉じゃないだろうね?」
父オーガは嫌な予感がした。
「その・・・。その通りでございます、旦那様」
給仕の男は上目遣いでオーガを見て、申し訳なさそうな顔をする。
「まだストックはあるのだろう? 早く持ってきてくれたまえ。我々はたった一枚のステーキの為に、東の大陸から高い金を払ってやって来たのだからね。ステーキ一枚を家族三人で分けるなんて、本当は恥ずかしい事だが、我々はそれでもオティムポ牛ステーキを堪能したかったのだよ。ようやく美味しいステーキに有りつける我々の気持ち、わかるだろう? ゴブリン君。早くしてくれたまえよ」
「そ、それが・・・。今のが最後の一枚でして・・・」
「な、な、な、なんだと! 遠路はるばるやって来たのに! オティムポ牛の肉が無いだとー!? 私はね、どれだけこの日を楽しみにしていたか! この店で肉を予約していた者から、高い金を払って予約席を買い取ったのだぞ! どうしてくれる!」
「ひえぇ! お許しください! 旦那様!」
縦巻きドリルヘアーのオーガの娘が、急に泣き喚いた。
「わぁぁ! 私、楽しみにしていましたのに! 馬鹿ゴブリンが間違えた所為で、幻のお肉を食べれないなんて嫌よぉ!」
マサヨシは大騒ぎしだした家族を見てどうでもいいことを言う。
「お、あの縦巻きドリルの女の子、めっちゃ可愛い! お父さんの声は、茶風林そっくりで笑える。オフッオフッ!」
家族はさらに騒ぎ出したので、イシーが慌ててやって来て、給仕共々頭を下げる。
「お客様! 本当に申し訳ありません! 代わりにお好きなだけご注文ください。お代は結構ですので!」
「嫌よぉ! 私はオティムポが食べたいのぉ!」
オティムポ牛は、ちょっとでも発音を間違えると男性器と同じ発音になってしまうので、誰もが気を付けてるが、外国から来た彼女は、その発音があやふやで危ない。
マサヨシはオーガの娘が、男性器を欲しがっているようにしか聞こえないので、興奮して立ち上がる。
そんなマサヨシを見て、何かを察したヒジリが手で止めた。
「まて! マサヨシ! 彼女は君の陰茎を欲しているわけではない!」
「(い、陰茎て・・・)わかっておりますぞ・・・。で、でもっ!」
「オティムポ、欲しいのぉぉぉ!」
十代後半の彼女は、子供の様に駄々をこねて地団駄を踏んでいる。
「オチンポォォォォ!!」
(あぁ! それ、言っちゃってるよね? 今、完全に言ったよね? おーい! 彼女、オチンポって言っちゃってますよぉー、ヒジリ氏ー!)
マサヨシはオーガの娘を指さして、口をパクパクしてヒジリを見るが、現人神には特に変化はない。
「オチンポ、頂戴ぃぃぃ!」
「オチンポ、あげますぅぅぅ!!」
たまらなくなってマサヨシは、チャックに手をかけようとしたが、ヒジリにその手をしっぺで叩かれる。
「だから! 彼女は君の陰茎を欲しているわけではない!」
「でも、こんなの・・・。ヘビの生殺しだし! 俺はもう辛抱堪りませんよぉぉ!」
とうとうヒジリに羽交い絞めにされジタバタするマサヨシが、何気なくサヴェリフェ姉妹を見ると、コロネ以外の姉妹が顔を真っ赤にして俯いていた。
もうなんとかしてこの場から離れたいという顔をしている。それが余計にマサヨシを興奮させた。
「ほら! あの姉妹だって、オーガの娘が! オチンポって言っちゃっている事に! 気が付いているのですってば!」
「いいや、君の恥ずかしい振る舞いに、顔を赤らめていいるのだよ。さぁ落ち着きたまえ、マサヨシ」
隣の席ではまだオーガの娘が駄々をこねている。
「オチンポォォォ!!」
―――ピシャ!!
それまで静かだったオーガの母親が、椅子から立ち上がって娘の頬を叩いた。瞬時にお店の空気が凍り付く。
「いい加減にしなさい!」
やっと止めに入った母親に、タスネは頷いている。
(流石はお母さん。何だかんだいって家族の暴走を止めるのは、いつでもお母さんだよね。うちも、お父さんが調子に直ぐ乗るタイプだったから、解るわー)
「私だってね・・・! 私だっておチ〇チン欲しいのよぉぉぉ!!! お父さんはいつも帰ってきたら、疲れた疲れたっていうばかりで、貴方の妹を作る時間さえも作らないのよ! お母さんだってね、貴方にいつも寂しい思いばかりさせて申し訳ないって思ってるのに!」
(えぇーーーー! もう完全に別のお話だよね、それーーー!)
「ごめんなさい・・・。お母さん・・・」
(それで納得する娘、どういう事ーーー!)
タスネは耳まで真っ赤にして混乱する。
マサヨシを羽交い絞めにしていたヒジリが彼を解放し、晴れやかな顔でゆっくりと拍手しだした。
「素晴らしい! なんと素晴らしい家族愛か!」
(何この展開ーーー! そこで拍手はおかしいでしょううが!)
タスネのツッコミとは裏腹に、お店には拍手が鳴り響く。
隣を見ると姉妹だけでなく、堅物のリツですら涙を流して拍手していた。
(なんなのこれーーー!)
そこへメンテナンスを終えたウメボシがやって来た。
店の異様な盛り上がりを不思議に思い、スキャンをしだす。
「あらら。皆様、キノコの毒にやられていますね」
「キノコ? そういえばキノコの温野菜サラダがパンとセットになっていたから、皆食べたわね・・・。私は最後に食べようと思っていたから、食べてなかったけど・・・」
ウメボシはサラダの中のキノコを分析する。
「これはウマズラタケではありませんね。よく似た毒キノコ、ロバズラタケです。同じ場所には滅多に生えないから、混同する事はないのですが・・・」
「他には誰が食べてないのかしら・・・。コロネは平気みたいね」
コロネはヒジリに借りっぱなしのスマホで、混沌としつつあるレストランの皆を動画に撮って笑っていた。
ダブルピースをしてゲラゲラ笑うリツや、他のオーガと一緒になってオーガダンスを踊るイグナ、何故か賢者モードのマサヨシを腰を振って誘惑しだすフラン。
「なんだこれ・・・。カオス過ぎる・・・。ヒジリまでヒジリダ―の格好をして、ドタドタとオーガダンスを踊っているし・・・」
「ああ、あれですか。マスターは素の状態です、タスネ様」
イシーのレストランの一席で、マサヨシの切れ長の目が見開かれた。
「右が普通のステーキ、左がオティムポ牛のステーキだ。食べ比べて、ぜひ感想を聞かせてくれたまえ」
「オティムポ牛の肉って貴重なんでそ? いいの? 頂いちゃって」
「いいーんです」
「そこで川平慈英ぶっこんできますか。オフフフ」
マサヨシは、既に肉を頬張っているサヴェリフェ姉妹達の顔を見る。
んー! と美味しい顔をするタスネ。
エクスタシーを感じているかのような表情のフラン。
身に纏う闇を吹き飛ばすような笑顔を見せるイグナ。
周りの事なんかお構いなしで、ガツガツと肉を頬張るコロネ。
(こりゃ相当美味しい肉ですな・・・。姉妹の顔がそれを物語ってるしお寿司。お肉だけど)
「でもどうして家で焼かずに、レストランに食材を持ち込んだんですかな? ヒジリ氏」
「餅は餅屋だ」
「なるほど(お肉だけど)」
美味しい物はちびちび食べる性分のマサヨシは、まず普通のステーキを小さく切って食べる。
「うん、普通とはいえ美味しい。でもちょっと何回も噛まなければならないのが、ちょっと。顎が疲れますな」
それから待ってましたとばかりに、オティムポ牛のステーキを、同じく小さく切って食べた。
「おほ! 柔らかい! 思ったより、あっさりしているんだな。もっとジューシーかと思ったけど」
しかしリツは頬を押さえて、肉汁が口の中で溢れて溺れそうだと言っている。
(肉汁? あれおかしいな。美味いっちゃ美味いんだけどそこまでか?)
マサヨシは周りの温度と自分に差がある事を、何となく感じ取っていた。
「食べてみてどうだったかね? マサヨシ」
「何で、ヒジリ氏は食べないのですかな?」
「私はうっかり朝食を食べ過ぎてね。お腹がいっぱいなのだ」
「味は美味しいですぞ。ただ皆が言うほどかな~っ? て感じですな。ご馳走してもらっておいて、そんな事を言うのもなんですけど。オフッオフッ」
「やはりか。実は私もオティムポ牛の複製品を何度か食べたのだがね。普通の野性味溢れる牛の味といった感じだったのだよ。ウメボシ曰く、オティムポの肉は、他の牛肉よりも貴重だから、その思い込みでマナが作用し、美味しくなると言っていた。で、我々よりもマナの影響を受けるマサヨシに、食べさせてみたらどういった反応があるのだろうかということで、試させてもらったのだよ」
メンテナンスでこの場にいないウメボシの仮説を検証しているのだ、とマサヨシに話す。
「ふむふむ。それほどオティムポ牛の事を知らない俺ですと、効果はこの程度だったというわけですか。ありがたがって食べている姉妹は、幸せそうな顔をして食べいますな。ヘカちゃんに至っては味わう事もなく、平らげていますけど」
ヘカティニスを見ると、マサヨシの言った通り、飲み物のようにステーキを平らげてきょとんとしていた。
「あで? おでの肉がないど?」
「耄碌しましたの? ヘカ。今自分で食べてしまったでしょう?」
隣に座るリツが「何言ってんだコイツ」という顔をしている。
「きっと、お前が盗んだんだ。狐女。その肉よこせ」
「もう! ノーマルオーガの意地汚さには、嫌になりますわね!」
そう言ってリツは手を叩いて給仕を呼ぶ。
「この飢えたオーガに、普通のステーキ十人前を!」
「あいよー!」
へ? という顔をしてヘカティニスは驚いた。
「い、いいのか?」
「私からのプレゼントですわ」
普段は自分に対して拒否や拒絶をするリツが、今日は優しい。
「お、お前良い奴だったんだな」
そういってヘカティニスは銀髪の頭を、リツの肩に擦りつけた。
「私は明日、帝国に報告に戻らなければなりません。皇帝陛下の気分によっては、二度とグランデモニウム王国に戻ってこれないかもしれませんから。いつも喧嘩ばかりしていましたが、最後ぐらい貴方に好い印象を残しておこうと思いまして」
言わなくて良い事まで正直に言う自分に「フフッ」と笑ってヘカティニスを見ると、彼女はこちらの話など聞いておらず、給仕が持ってきた肉に間髪入れずかぶりついているところだった。
「ちょっと! ヘカティニス! もっと味わって食べたらどうです? 私の奢りなのですよ? というか肉が出てくるの早くないですこと?」
リツがそう言うと、給仕がブーメランの如く慌てて戻って来た。
「はわわわ! 間違って予約のオティムポ牛を、ヘカ様にお出ししてしまった!」
給仕ゴブリンが、青い顔をしてトレイを落として膝をつく。
隣のテーブルに座る、エリートオーガの一家が、怪訝な顔をして見合わせる。
「ま、まさか・・・。その肉、我々が食べる予定だった肉じゃないだろうね?」
父オーガは嫌な予感がした。
「その・・・。その通りでございます、旦那様」
給仕の男は上目遣いでオーガを見て、申し訳なさそうな顔をする。
「まだストックはあるのだろう? 早く持ってきてくれたまえ。我々はたった一枚のステーキの為に、東の大陸から高い金を払ってやって来たのだからね。ステーキ一枚を家族三人で分けるなんて、本当は恥ずかしい事だが、我々はそれでもオティムポ牛ステーキを堪能したかったのだよ。ようやく美味しいステーキに有りつける我々の気持ち、わかるだろう? ゴブリン君。早くしてくれたまえよ」
「そ、それが・・・。今のが最後の一枚でして・・・」
「な、な、な、なんだと! 遠路はるばるやって来たのに! オティムポ牛の肉が無いだとー!? 私はね、どれだけこの日を楽しみにしていたか! この店で肉を予約していた者から、高い金を払って予約席を買い取ったのだぞ! どうしてくれる!」
「ひえぇ! お許しください! 旦那様!」
縦巻きドリルヘアーのオーガの娘が、急に泣き喚いた。
「わぁぁ! 私、楽しみにしていましたのに! 馬鹿ゴブリンが間違えた所為で、幻のお肉を食べれないなんて嫌よぉ!」
マサヨシは大騒ぎしだした家族を見てどうでもいいことを言う。
「お、あの縦巻きドリルの女の子、めっちゃ可愛い! お父さんの声は、茶風林そっくりで笑える。オフッオフッ!」
家族はさらに騒ぎ出したので、イシーが慌ててやって来て、給仕共々頭を下げる。
「お客様! 本当に申し訳ありません! 代わりにお好きなだけご注文ください。お代は結構ですので!」
「嫌よぉ! 私はオティムポが食べたいのぉ!」
オティムポ牛は、ちょっとでも発音を間違えると男性器と同じ発音になってしまうので、誰もが気を付けてるが、外国から来た彼女は、その発音があやふやで危ない。
マサヨシはオーガの娘が、男性器を欲しがっているようにしか聞こえないので、興奮して立ち上がる。
そんなマサヨシを見て、何かを察したヒジリが手で止めた。
「まて! マサヨシ! 彼女は君の陰茎を欲しているわけではない!」
「(い、陰茎て・・・)わかっておりますぞ・・・。で、でもっ!」
「オティムポ、欲しいのぉぉぉ!」
十代後半の彼女は、子供の様に駄々をこねて地団駄を踏んでいる。
「オチンポォォォォ!!」
(あぁ! それ、言っちゃってるよね? 今、完全に言ったよね? おーい! 彼女、オチンポって言っちゃってますよぉー、ヒジリ氏ー!)
マサヨシはオーガの娘を指さして、口をパクパクしてヒジリを見るが、現人神には特に変化はない。
「オチンポ、頂戴ぃぃぃ!」
「オチンポ、あげますぅぅぅ!!」
たまらなくなってマサヨシは、チャックに手をかけようとしたが、ヒジリにその手をしっぺで叩かれる。
「だから! 彼女は君の陰茎を欲しているわけではない!」
「でも、こんなの・・・。ヘビの生殺しだし! 俺はもう辛抱堪りませんよぉぉ!」
とうとうヒジリに羽交い絞めにされジタバタするマサヨシが、何気なくサヴェリフェ姉妹を見ると、コロネ以外の姉妹が顔を真っ赤にして俯いていた。
もうなんとかしてこの場から離れたいという顔をしている。それが余計にマサヨシを興奮させた。
「ほら! あの姉妹だって、オーガの娘が! オチンポって言っちゃっている事に! 気が付いているのですってば!」
「いいや、君の恥ずかしい振る舞いに、顔を赤らめていいるのだよ。さぁ落ち着きたまえ、マサヨシ」
隣の席ではまだオーガの娘が駄々をこねている。
「オチンポォォォ!!」
―――ピシャ!!
それまで静かだったオーガの母親が、椅子から立ち上がって娘の頬を叩いた。瞬時にお店の空気が凍り付く。
「いい加減にしなさい!」
やっと止めに入った母親に、タスネは頷いている。
(流石はお母さん。何だかんだいって家族の暴走を止めるのは、いつでもお母さんだよね。うちも、お父さんが調子に直ぐ乗るタイプだったから、解るわー)
「私だってね・・・! 私だっておチ〇チン欲しいのよぉぉぉ!!! お父さんはいつも帰ってきたら、疲れた疲れたっていうばかりで、貴方の妹を作る時間さえも作らないのよ! お母さんだってね、貴方にいつも寂しい思いばかりさせて申し訳ないって思ってるのに!」
(えぇーーーー! もう完全に別のお話だよね、それーーー!)
「ごめんなさい・・・。お母さん・・・」
(それで納得する娘、どういう事ーーー!)
タスネは耳まで真っ赤にして混乱する。
マサヨシを羽交い絞めにしていたヒジリが彼を解放し、晴れやかな顔でゆっくりと拍手しだした。
「素晴らしい! なんと素晴らしい家族愛か!」
(何この展開ーーー! そこで拍手はおかしいでしょううが!)
タスネのツッコミとは裏腹に、お店には拍手が鳴り響く。
隣を見ると姉妹だけでなく、堅物のリツですら涙を流して拍手していた。
(なんなのこれーーー!)
そこへメンテナンスを終えたウメボシがやって来た。
店の異様な盛り上がりを不思議に思い、スキャンをしだす。
「あらら。皆様、キノコの毒にやられていますね」
「キノコ? そういえばキノコの温野菜サラダがパンとセットになっていたから、皆食べたわね・・・。私は最後に食べようと思っていたから、食べてなかったけど・・・」
ウメボシはサラダの中のキノコを分析する。
「これはウマズラタケではありませんね。よく似た毒キノコ、ロバズラタケです。同じ場所には滅多に生えないから、混同する事はないのですが・・・」
「他には誰が食べてないのかしら・・・。コロネは平気みたいね」
コロネはヒジリに借りっぱなしのスマホで、混沌としつつあるレストランの皆を動画に撮って笑っていた。
ダブルピースをしてゲラゲラ笑うリツや、他のオーガと一緒になってオーガダンスを踊るイグナ、何故か賢者モードのマサヨシを腰を振って誘惑しだすフラン。
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