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腐肉の宴2
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マサヨシは売春宿の待合室で鼻の下を伸ばして待っていたが、外が騒がしい事に気が付いて、窓のカーテンをめくった。
「おわぁ! なんですとー! ゾンビがウロウロしとるでつよぉ~!」
通りでオーガがゾンビ相手に誰かを守って戦っているのが見える。
見覚えのある顔にマサヨシは驚いた。
「ありゃ、ドォスンでつな。ん!? コロネちゃん!」
ドォスンは、押し寄せるゾンビ達を太い腕で薙ぎ払ってから、コロネを近くの民家の屋根の上に乗せた。
しかし、その隙をついてゾンビ達はドォスンに群がる。
「ドォスン! わぁぁ! ごめんなさい! 私が外に出たからドォスンが!」
いつも鼻くそを穿っているお転婆なコロネだが、今はバンシーのように泣き叫んでいる。
「大丈夫だ、きっとヒジリがなんとかしてくでる。コロネはそこでじっとしてろ・・・。くそ! おまえだ! あっちいけ!」
毛皮の鎧から出ている生身の腕や脚に、ゾンビ達は容赦なく噛みついた。その瞬間、呪いはドォスンを殺し、ゾンビにする。
「ぐごご・・・」
ドォスンの目が白く濁った。数歩歩くと、彼は家と家の間の狭い路地に座り込んでしまった。
ゾンビ達は同胞と化したドォスンに興味がなくなり、次の獲物を探して彷徨い始める。
「ドォスン! ドォスン!」
コロネの泣いている姿にマサヨシは堪らなくなり、店にいる者に「絶対外に出るな」と警告して外に出る。
「コロネちゃん!」
「マサヨシィ! ドォスンが!」
マサヨシは畳ムカデを召喚すると、追いかけてくるゾンビを振り払って逃げ、一気にコロネのいる家の屋根に登った。
「城にいくでつよ、コロネちゃん。ドォスンはもう駄目だ」
「嫌だ! ドォスンは私のせいで死んだんだもん! 私も死ぬ!」
半狂乱になって屋根から飛び降りようとするコロネの頬を、マサヨシが平手で叩く。
「いい加減にしろ! ドォスンはコロネちゃんに死んでほしくないから守ってくれたんだろ! それを無駄にする気か!」
いつもふざけたニヤニヤ顔のマサヨシだったが、今回ばかりは真剣な顔をしていた。
コロネが死ねばヒジリは悲しむだろう。彼が以前に言っていた言葉を思い出す。
―――地球人の再構成蘇生は名ばかりで、死んだ人をそっくりそのままのコピーして作り出しているだけだ。だから厳密にいうと、死んだ人は蘇ってはいないのだよ。
ここでコロネが死んでしまえば、コロネというオリジナルはこの世からいなくなるのだ。
「いやだ! 死ぬ! 死んでドォスンと一緒に、オーガの園に行く!」
サヴェリフェ姉妹の中で一番の頑固者。こうだと決めたら、誰の声も聞こうとはしない。
コロネは屋根を飛び下りると、建物と建物の間で座って呆けているドォスンに抱きついた。
抱きついたドォスンの体は異様に冷たい。
「ドォスン、ごめんね。私がドォスンの家に行かなければ、ドォスンもこんな事にならなかったのに・・・」
ドォスンは何故か他のゾンビのように動こうとはしなかった。じっと座って涎を垂らし、地面を見ている。
「コロネちゃん! ゾンビが来るから! 早く戻って!」
マサヨシは屋根から飛び降りると、ドォスンからコロネを引き剥がそうとしていた。
(こえぇ。俺も噛まれたらゾンビなるんでつかな? こえぇ!)
しかしドォスンから離れようとしないコロネを諦め、マサヨシは狭い路地の入口に立った。
「いいか! コロネちゃん。コロネちゃんが城に行くと言わない限り、俺はここを退かない! コロネちゃんが逃げない限り、イケメンであるマサヨシさんもここで死ぬことになるんでつよ! いいんでつか!」
「いいもん・・・」
「ほげぇーー!」
マサヨシはコロネの無情な返事に驚きつつも、狭い路地でゾンビを一体ずつ戦う事にした。
「えぇ~い! ままよ!」
「マサヨシは、私のお母さんじゃないもん・・・」
「いやそうじゃなくて・・・」
牙を剥いて自分に襲い掛かるオークゾンビを、マサヨシは攻撃する。
「ロロム師匠から貰った、ありがたい魔法の杖あたーっく!」
と言いつつも、高価な杖が汚れるのを嫌って、咄嗟に左手のストレートをオークゾンビの顔面に打ち込んだ。
するとゾンビはただの死体となって地面に転がった。
「おふ?」
マサヨシは直ぐに理解する。ゾンビ達はマナに由来する何かで動いているのだと。
ヒジリと同じく魔法無効化能力を持つマサヨシはニマァと笑った。
「ぬはっぬはっ! ぬははは!(ストレッチマン風に)良い子の諸君! 君たちは決してゾンビとは戦ってはいけないよ! マサヨシは特別な存在だからゾンビと戦えるのだ! マサヨシパーンチ!」
誰に向かって言っているのか判らないが、調子に乗って次々と迫り来るゾンビを一人ずつ死体に戻していくマサヨシは、段々と疲れてきた。
「おふぅ・・・。おふぅ・・・。数多すぎィ。コロネちゃん、やっぱりお城へ逃げましょうぞ・・・」
「嫌だ! マサヨシも星のオーガだって聞いたよ! ドォスンを生き返らせてよ!」
「んな、無茶な・・・。いや待てよ?」
マサヨシは思い出す。自分は最近覚えた召喚魔法がある事を。
ナビが地球に帰る前、地下書庫を訪ねたマサヨシはサキュバスの召喚書を貰っている。その時、サキュバスとは真逆のエンジェルの召喚書も欲しいと駄々を捏ねたのだ。
博士を亜空間から連れ戻した直接の功労者であるマサヨシの頼みに、ナビは渋々折れた。
二つの召喚書を手に入れたマサヨシは「これで俺は天使と悪魔に囲まれてウハウハじゃー!」と当時は喜んでいたが、結局サキュバスの召喚魔法は身に着けていない。
サキュバスを召喚出来るようになれば、助平なマサヨシは絶対使い魔にしてしまうだろう。
使い魔にすると毎日サキュバスと良い事が出来るが、「歳をとった時は地獄だぞ」と、ヴャーンズ皇帝の大変さを知るロロムに教えられていた。だからサキュバスの召喚魔法は身に着けていないのだ。
その代り天使の召喚魔法は習得していている。習得して直ぐに可愛い天使と使い魔契約をしようとしたが、断られている。天使を使い魔にする事は出来ないだ。
がっかりして床に崩れ落ちたあの日を思いだし、マサヨシは目に涙を滲ませる。
「あの時の虚しい気持ちは、この日の為にあったのでつ。いでよ! エンジェル!」
天使召喚の魔法は、未熟者でも習得しやすい。
天使は蘇生ができ、光魔法も使えるのでアンデッドにはめっぽう強い上、支払う報酬が他者への善行で済むのだ。その代り超レアな召喚魔法なのである。他にこの召喚魔法を使える者はいないかもしれない。
マサヨシの召喚に応えるようにして、空から光の柱が降りて来た。
光の柱の中からは白いローブを着た金髪碧眼の天使が、羽をまき散らして現れる。
「今日のお仕事はなんですか? ご主人様! いやらしい事以外ならなんなりと!」
まるで秋葉原のメイドみたいな口調で、マサヨシに用件を聞く。
「おふ、いつもセクハラしてるから、とうとう予防線を先にはるようになったか・・・。ドォスンを生き返らせてくれ!」
天使は人差し指でバツを作って、困惑した顔で答える。
「それは無理ですぅ~。ゾンビの呪いで死んだ者は蘇生できませ~ん! 帰ってもいいですか? ご主人様!」
それを聞いた途端、コロネが大泣きしだした。
「こここ、この役立たず! だったらゾンビを何とかするのでつよ!」
「それはいいですけどぉ~! マサヨシ様の少ない魔力ですと、私が現世で活動できるのは五分が限界ですよぉ?」
「お前はアンビリカルケーブルで動く巨人か!」
「???」
「とにかく! 救援が来るまでゾンビと戦っていなさい! 役立たずのクソビッチが!」
「はい! クソビッチ頑張ります!」
自分でクソビッチと言って笑顔を見せる天使に、マサヨシは少しイラッとしたが、クソビッチ・テコキコフがこの天使の名前なので仕方がないのである。
マサヨシが泣きじゃくるコロネを心配して慰めに行く。その背後でクソビッチが死者の群れに浄化の光を放ち、ゾンビ達は次々と倒れていった。
「なぁ、コロネちゃん。ドォスンは死んだんだ。ここにいても仕方ないよ。お城に帰ろう。ヒジリならドォスンを生き返らせてくれるかもしれないし。ヒジリは俺と違って色々出来るからさ」
泣き喚くコロネの頭を撫でて、マサヨシは説得する。
そのマサヨシに影が差した。
「私はここにいるぞ、マサヨシ」
突然ヒジリが屋根の上に現れ、ウメボシと共に飛び降りてきた。
「ウメボシ、ドォスンを蘇生してくれ」
「はい!」
ウメボシは直ぐにドォスンを再構成する。一度分解して再構成されたドォスンからは、呪いが綺麗に消えていた。
「ドォスン!」
コロネは青い肌をしていたドォスンが元に戻った事を喜んで抱きついた。
「あで? おで眠ってたか?」
「ううん、死んでた!」
コロネは泣き笑いしてドォスンの腕に頬ずりしている。
「夢の中でコロネがずっとおでを呼んでただ。おで、人を襲いたくて仕方なかったけど、コロネを傷つけるかもしれないから、ずっと我慢してた」
「ほう。凄いな、死んでも尚意識をコントロール出来たなんて。流石は異世界のオーガ」
魔法の影響の受け方がマサヨシ程ではないが、ドォスンも少し違うのかもしれないとヒジリは感心する。
「さて、一旦桃色城に戻ろうか。あそこで待つパブリー女王に、いま一度探し物をしてもらう」
ヒジリはカプリコンに転送を頼み、全員を城まで運んだ。
「おわぁ! なんですとー! ゾンビがウロウロしとるでつよぉ~!」
通りでオーガがゾンビ相手に誰かを守って戦っているのが見える。
見覚えのある顔にマサヨシは驚いた。
「ありゃ、ドォスンでつな。ん!? コロネちゃん!」
ドォスンは、押し寄せるゾンビ達を太い腕で薙ぎ払ってから、コロネを近くの民家の屋根の上に乗せた。
しかし、その隙をついてゾンビ達はドォスンに群がる。
「ドォスン! わぁぁ! ごめんなさい! 私が外に出たからドォスンが!」
いつも鼻くそを穿っているお転婆なコロネだが、今はバンシーのように泣き叫んでいる。
「大丈夫だ、きっとヒジリがなんとかしてくでる。コロネはそこでじっとしてろ・・・。くそ! おまえだ! あっちいけ!」
毛皮の鎧から出ている生身の腕や脚に、ゾンビ達は容赦なく噛みついた。その瞬間、呪いはドォスンを殺し、ゾンビにする。
「ぐごご・・・」
ドォスンの目が白く濁った。数歩歩くと、彼は家と家の間の狭い路地に座り込んでしまった。
ゾンビ達は同胞と化したドォスンに興味がなくなり、次の獲物を探して彷徨い始める。
「ドォスン! ドォスン!」
コロネの泣いている姿にマサヨシは堪らなくなり、店にいる者に「絶対外に出るな」と警告して外に出る。
「コロネちゃん!」
「マサヨシィ! ドォスンが!」
マサヨシは畳ムカデを召喚すると、追いかけてくるゾンビを振り払って逃げ、一気にコロネのいる家の屋根に登った。
「城にいくでつよ、コロネちゃん。ドォスンはもう駄目だ」
「嫌だ! ドォスンは私のせいで死んだんだもん! 私も死ぬ!」
半狂乱になって屋根から飛び降りようとするコロネの頬を、マサヨシが平手で叩く。
「いい加減にしろ! ドォスンはコロネちゃんに死んでほしくないから守ってくれたんだろ! それを無駄にする気か!」
いつもふざけたニヤニヤ顔のマサヨシだったが、今回ばかりは真剣な顔をしていた。
コロネが死ねばヒジリは悲しむだろう。彼が以前に言っていた言葉を思い出す。
―――地球人の再構成蘇生は名ばかりで、死んだ人をそっくりそのままのコピーして作り出しているだけだ。だから厳密にいうと、死んだ人は蘇ってはいないのだよ。
ここでコロネが死んでしまえば、コロネというオリジナルはこの世からいなくなるのだ。
「いやだ! 死ぬ! 死んでドォスンと一緒に、オーガの園に行く!」
サヴェリフェ姉妹の中で一番の頑固者。こうだと決めたら、誰の声も聞こうとはしない。
コロネは屋根を飛び下りると、建物と建物の間で座って呆けているドォスンに抱きついた。
抱きついたドォスンの体は異様に冷たい。
「ドォスン、ごめんね。私がドォスンの家に行かなければ、ドォスンもこんな事にならなかったのに・・・」
ドォスンは何故か他のゾンビのように動こうとはしなかった。じっと座って涎を垂らし、地面を見ている。
「コロネちゃん! ゾンビが来るから! 早く戻って!」
マサヨシは屋根から飛び降りると、ドォスンからコロネを引き剥がそうとしていた。
(こえぇ。俺も噛まれたらゾンビなるんでつかな? こえぇ!)
しかしドォスンから離れようとしないコロネを諦め、マサヨシは狭い路地の入口に立った。
「いいか! コロネちゃん。コロネちゃんが城に行くと言わない限り、俺はここを退かない! コロネちゃんが逃げない限り、イケメンであるマサヨシさんもここで死ぬことになるんでつよ! いいんでつか!」
「いいもん・・・」
「ほげぇーー!」
マサヨシはコロネの無情な返事に驚きつつも、狭い路地でゾンビを一体ずつ戦う事にした。
「えぇ~い! ままよ!」
「マサヨシは、私のお母さんじゃないもん・・・」
「いやそうじゃなくて・・・」
牙を剥いて自分に襲い掛かるオークゾンビを、マサヨシは攻撃する。
「ロロム師匠から貰った、ありがたい魔法の杖あたーっく!」
と言いつつも、高価な杖が汚れるのを嫌って、咄嗟に左手のストレートをオークゾンビの顔面に打ち込んだ。
するとゾンビはただの死体となって地面に転がった。
「おふ?」
マサヨシは直ぐに理解する。ゾンビ達はマナに由来する何かで動いているのだと。
ヒジリと同じく魔法無効化能力を持つマサヨシはニマァと笑った。
「ぬはっぬはっ! ぬははは!(ストレッチマン風に)良い子の諸君! 君たちは決してゾンビとは戦ってはいけないよ! マサヨシは特別な存在だからゾンビと戦えるのだ! マサヨシパーンチ!」
誰に向かって言っているのか判らないが、調子に乗って次々と迫り来るゾンビを一人ずつ死体に戻していくマサヨシは、段々と疲れてきた。
「おふぅ・・・。おふぅ・・・。数多すぎィ。コロネちゃん、やっぱりお城へ逃げましょうぞ・・・」
「嫌だ! マサヨシも星のオーガだって聞いたよ! ドォスンを生き返らせてよ!」
「んな、無茶な・・・。いや待てよ?」
マサヨシは思い出す。自分は最近覚えた召喚魔法がある事を。
ナビが地球に帰る前、地下書庫を訪ねたマサヨシはサキュバスの召喚書を貰っている。その時、サキュバスとは真逆のエンジェルの召喚書も欲しいと駄々を捏ねたのだ。
博士を亜空間から連れ戻した直接の功労者であるマサヨシの頼みに、ナビは渋々折れた。
二つの召喚書を手に入れたマサヨシは「これで俺は天使と悪魔に囲まれてウハウハじゃー!」と当時は喜んでいたが、結局サキュバスの召喚魔法は身に着けていない。
サキュバスを召喚出来るようになれば、助平なマサヨシは絶対使い魔にしてしまうだろう。
使い魔にすると毎日サキュバスと良い事が出来るが、「歳をとった時は地獄だぞ」と、ヴャーンズ皇帝の大変さを知るロロムに教えられていた。だからサキュバスの召喚魔法は身に着けていないのだ。
その代り天使の召喚魔法は習得していている。習得して直ぐに可愛い天使と使い魔契約をしようとしたが、断られている。天使を使い魔にする事は出来ないだ。
がっかりして床に崩れ落ちたあの日を思いだし、マサヨシは目に涙を滲ませる。
「あの時の虚しい気持ちは、この日の為にあったのでつ。いでよ! エンジェル!」
天使召喚の魔法は、未熟者でも習得しやすい。
天使は蘇生ができ、光魔法も使えるのでアンデッドにはめっぽう強い上、支払う報酬が他者への善行で済むのだ。その代り超レアな召喚魔法なのである。他にこの召喚魔法を使える者はいないかもしれない。
マサヨシの召喚に応えるようにして、空から光の柱が降りて来た。
光の柱の中からは白いローブを着た金髪碧眼の天使が、羽をまき散らして現れる。
「今日のお仕事はなんですか? ご主人様! いやらしい事以外ならなんなりと!」
まるで秋葉原のメイドみたいな口調で、マサヨシに用件を聞く。
「おふ、いつもセクハラしてるから、とうとう予防線を先にはるようになったか・・・。ドォスンを生き返らせてくれ!」
天使は人差し指でバツを作って、困惑した顔で答える。
「それは無理ですぅ~。ゾンビの呪いで死んだ者は蘇生できませ~ん! 帰ってもいいですか? ご主人様!」
それを聞いた途端、コロネが大泣きしだした。
「こここ、この役立たず! だったらゾンビを何とかするのでつよ!」
「それはいいですけどぉ~! マサヨシ様の少ない魔力ですと、私が現世で活動できるのは五分が限界ですよぉ?」
「お前はアンビリカルケーブルで動く巨人か!」
「???」
「とにかく! 救援が来るまでゾンビと戦っていなさい! 役立たずのクソビッチが!」
「はい! クソビッチ頑張ります!」
自分でクソビッチと言って笑顔を見せる天使に、マサヨシは少しイラッとしたが、クソビッチ・テコキコフがこの天使の名前なので仕方がないのである。
マサヨシが泣きじゃくるコロネを心配して慰めに行く。その背後でクソビッチが死者の群れに浄化の光を放ち、ゾンビ達は次々と倒れていった。
「なぁ、コロネちゃん。ドォスンは死んだんだ。ここにいても仕方ないよ。お城に帰ろう。ヒジリならドォスンを生き返らせてくれるかもしれないし。ヒジリは俺と違って色々出来るからさ」
泣き喚くコロネの頭を撫でて、マサヨシは説得する。
そのマサヨシに影が差した。
「私はここにいるぞ、マサヨシ」
突然ヒジリが屋根の上に現れ、ウメボシと共に飛び降りてきた。
「ウメボシ、ドォスンを蘇生してくれ」
「はい!」
ウメボシは直ぐにドォスンを再構成する。一度分解して再構成されたドォスンからは、呪いが綺麗に消えていた。
「ドォスン!」
コロネは青い肌をしていたドォスンが元に戻った事を喜んで抱きついた。
「あで? おで眠ってたか?」
「ううん、死んでた!」
コロネは泣き笑いしてドォスンの腕に頬ずりしている。
「夢の中でコロネがずっとおでを呼んでただ。おで、人を襲いたくて仕方なかったけど、コロネを傷つけるかもしれないから、ずっと我慢してた」
「ほう。凄いな、死んでも尚意識をコントロール出来たなんて。流石は異世界のオーガ」
魔法の影響の受け方がマサヨシ程ではないが、ドォスンも少し違うのかもしれないとヒジリは感心する。
「さて、一旦桃色城に戻ろうか。あそこで待つパブリー女王に、いま一度探し物をしてもらう」
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