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ウェイロニーとマサヨシ
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桃色城の居間でタスネが飲んでいた紅茶のカップをテーブルに置いて驚く。
「あの樹族の神様は時間を止めているですって?」
「ああ、そうだ。ロケート団のクローネのような時間を遅くする能力者もいるのだから、別にそこまで驚くほどの事でもないがね」
「能力者自体驚くべき存在だけどね・・・」
タスネはチラリと一度見覚えの能力を持つイグナを見てから視線をヒジリに戻す。
「でも何で樹族神が時間停止能力を持っていると思ったの?」
「ウメボシを見ての推測なのだが、ここに白い斑点が五つあるだろう。樹族と手の大きさが近い君達なら斑点が指先と合う事が解るはずだ」
タスネはヒジリに差し出されたウメボシの体に付く白い斑点に指先を当ててみた。
「わぁ!本当だ!でも何でウメボシは焼け焦げたのかしら。時間を止めている間に【業火】の魔法を使ったの?」
「いいや、そんな事はしなくてもいい。時間の止まっているウメボシを押しただけだ」
「え?何でそれで焼け焦げるの?」
「我々の周りには空気があるからさ。時間の止まったウメボシが動かされるという事はとてつもないスピードで空気中を移動させられた事になる。すると空気との摩擦で焼けるのだよ。人ならば消し炭になっているが、ウメボシは耐熱性や耐寒性のあるコスモチタニウム合金で出来ているからそう簡単に灰にならないというわけだ」
「なるほど、よくわからないわ」
「悪戯で誰かに皮膚を手で擦られて熱いと思った事があるだろう?あれを風の精霊がしてくるようなものだよ」
ウフフフとフランが急に笑い出した。
「風の精霊が必死になってアタシの腕を擦っているところを想像しちゃったわぁ」
ガチャリと扉が開き誰かが入ってきた。
「でも何故時間停止中に魔法を使ったり、武器で攻撃したりしないのかしら?」
ヴャーンズ皇帝の命令で桃色城に長期滞在する事になったリツは、会話を部屋の外で聞いていたのか茶菓子を持って部屋に入って来るなり疑問を口にした。
そして紅茶に合う焼き菓子をテーブルに置くとヒジリの横に嬉しそうに座る。今日はヘカティニスがオーガの酒場の手伝いでいないからだ。
「恐らく時間停止中の者への攻撃は特定条件下以外では無効なのだろう。触れていないと時間停止中の者へ影響を与えられなというのであれば、触れながら攻撃も出来るはずなのだから何かしらの制約があるかもしれない。なので樹族神は触れて移動させる事しか出来ないのだと私は考える」
「それでも消し炭になるのだから厄介ですわね」
「ああ。だが時間停止中でも反撃する事は出来る。が、次の一手が無いのだ。もし私の推測が間違っていたり、樹族神がそのカウンターに耐えきったりすれば、確実に私は詰む」
ウメボシがタスネの手から離れ、ヒジリの横に浮く。
「マスターにはマスターが推測した内容の確実性とその後の保証が必要なのです。なので暫くはあの樹族神を観察するしかありません。ソファに仕込んだ監視用ナノマシンが役に立てばいいのですが・・・」
ウメボシは空中にホログラフモニターを出して樹族神の様子を映し出した。
「ふぁ?」
モニターには痩せこけた老人の尻が見える。
チャビンが全裸で部屋の中をウロウロしていたのでウメボシは直ぐにモニターを消した。
「なるほど、樹族神は家の中だと全裸で過ごすタイプか・・・。という事は私たちが遺跡に行った時、全裸の彼に遭遇していた可能性もあったわけだな・・・。彼がこちらの気配に気が付いてくれて良かったよ。では監視は私が個人的にしておこう」
姉妹はシワシワのお尻を見せられてンモーと不満げな声を出し嫌な顔をしている。
ヒジリは焼き菓子の横に添えてあった干し林檎を二つ並べて尻の形を作りタスネに差し出した。
「食べたまえ」
「いるか!」
久しぶりにツィガル城に来たマサヨシはサキュバスを使い魔にすべきかどうかを、ウェイロニーに相談しようと思い、彼女の部屋の扉をノックした。
「開いてます、どうぞ~」
「失礼しまふ」
「あら、マサヨシ。もしかしてタラの白子を持って来てくれたの?」
「いや、今日は違いまっする」
「な~んだ。残念。あれ、焼いて食べると美味しいんだけど」
サキュバスの部屋に入ったマサヨシは部屋中にヴャーンズの絵や思い出の石板がある事に驚いた。
「おわっ!どんだけ皇帝の事好きなんだよぉ~」
「私の初めての人なんだから当然でしょう」
「えっ?そうなの?やるな、爺さんのくせに」
「別に昔から年寄りだったわけじゃないわよ、ヴャーンズ様は。彼の昔の姿、見たい?」
「まぁ左程興味はないけど、一応見ておきますか」
となるとウェイロニーは大量の思い出の石板を持ってくるのか、とウンザリしていたマサヨシだったが、彼女は普通に写真アルバムを持ってきた。
「おや?普通のアルバムですな」
「これ高ったんだから。魔法のアルバムなの。変な機械とセットで金貨100枚」
「たっか」
驚くマサヨシになんとなく気を良くしたウェイロニーが開いたアルバムにはヴャーンズの写真が沢山入っていた。しかもそのどれもが何かを言って動いている。
「これが、出会った頃のヴャーンズ様」
写真のヴャーンズはまだ若く、毛がフサフサしていた。
ウェイロニーを使い魔にした事を興奮しているのか頬が赤い。ウェイロニーが指で写真を叩くと写真の中のヴャーンズは指を合わせてエクセレント!と言った。
「助平な顔してんなぁ・・・」
「そんな事言わないでよ。ヴャーンズ様が私を必要としているのは家族を失った苦痛を快楽で忘れる為だったんだから」
「おっと・・・悪い」
「で、これが私を召喚して二日目」
シワシワになったヴャーンズがベッドに横たわっていた。ウェイロニーの魔法のカメラに気が付いたのか、頭を起こすとサムアップしてエクセレント!と言った。
「もうすでに枯れ枯れじゃないの!オフフ」
「そりゃ陛下も若かったからやりまくりで・・・。はあ~、あの頃は毎日が素敵だったわ」
ウェイロニーは暫く物思いに耽ってから、次々とヴャーンズ皇帝の写真を見せる。そのどれもがエクセレント!と言っていた。
ページをめくっていると一つだけ違和感のある写真を見つける。
「ん?肌が妙に黄色い皇帝陛下がいるな・・・ってかこれ、バーン・・・。いや言うのはやめとこ」
「ああ、それは異世界覗きの三面鏡を見てたらそっくりさんがいたから写真に撮ったの」
マサヨシはまた別の写真が気になった。
「ん?この陛下は誰と話しているんでつか?陰みたいなモヤモヤしたのに向かってエクセレントと言ってまつけど」
暫くウェイロニーはこめかみを人差し指でグリグリしてから思い出す。
「う~んと・・・。そうそう彼らは確か影人とか言ったかしら。時の番人よ。基本的に住んでる場所から出てこないから誰も彼らの事を知らないみたいね」
「なにをしていた時の写真?」
「ヴャーンズ様が影人の攻撃を止めさせた時の写真よ。彼らは最初、村の宝を手に取って見ていたヴャーンズ様を盗人だと勘違いして魔法で攻撃してきたの。でもヴャーンズ様は余裕をもって彼らの魔法を跳ね返したわ。それから、珍しい魔法を求めて彷徨っていただけだというと影人は攻撃を止めてくれたの。多分【読心】が使えるのだと思う。その後、彼らはとても友好的になったわ。ヴャーンズ様も村を気に入り暫く滞在して珍しい魔法を幾つか覚えたわ。【転移】の魔法もここで覚えたから、それ以降の旅が楽になったわね」
「へぇ・・。皇帝の忙しい身にはありがたい魔法でつね。それらの魔法はタダで貰ったのかな?何の支払いもなしに?」
「まぁ物理的な支払はなかったわね。代わりに恐ろしいものを支払わされたわ。寿命と時間よ」
「ひえっ!」
「あはは!というと恐ろしいけど、単に滞在してたから時間が過ぎ去ってその分寿命も失っただけよ、数日分の」
「ってそれなら、誰もがいつでも支払っていまつね」
ナンダヨモーと胸を撫で下ろしマサヨシは笑った。
「でも彼らにとってはそれはご馳走だったの。彼らは時間を食べて生きていると言ってたわ。普段から流れる時間を食べているけど、誰かが消費する時間は格別なんだって。だから悪意を持たない人の来村は歓迎だったみたい」
「時間を食べる?概念を食べるのでつか?う~ん・・・理解できない・・・。じゃあ村おこしでもしてバカスカ観光客を呼べば良かったニ~」
「それはダメなんだって。村の掟で自分の力で来た人のみ歓迎するって言っていたわ」
「じゃあ、俺がその場所を聞いてしまうと歓迎されずに追い返されるんでつね」
「そういう事になるわね。場所を教えてあげましょうか?うふふ」
「いや、聞かない」
「場所はね・・・」
「あーあー!きーこーえーなーいー!」
マサヨシが両耳を塞いだ隙にウェイロニーは彼の脇をくすぐった。
「冗談よ」
うひゃひゃと体をくねらせて笑うマサヨシは自分が何しにこの部屋に来たのかを思い出す。
「そうだった、俺相談に来たんだった」
「ん?私に乗れる相談だったら乗るけど」
「実はさ~・・・」
カクカクシカジカとマサヨシは説明した。
「ん~。それは止めといたほうがいいんじゃないかしら?貴方、自分が思ってるほど助平じゃないわよ?」
「ななな、なんですとー!?」
「だって根が真面目ですもの。女の子を追い回すのも心が寂しいからだと思う。ちゃんとしてればイケメンだし直ぐに女の子は寄って来るわよ?」
「まじでつか?こう見えても昔は禿げでデブでキモオタだったんですけど」
「それは知ってるって。助平なのも寂しさや自信の無さが貴方をそうさせているの。そうやって道化を演じていれば何だって冗談で済ませられるし自分の心も傷つかない。似てるのよね、貴方。ヒジリ王に」
「ええっ?ヒジリ氏は自信満々だしモテモテだがぁ?」
「そうね。ヒジリ王は実力も自信も人望もある。でも貴方と同じで心の奥底に強いコンプレックスがあるの。だから時折変な事してるでしょ?あの王様も」
「なんでそんな事が解るんでつか?【読心】は効かないはずだけど、ヒジリ氏は」
「魔法なんて使わなくても解るわよ。私は人を惑わせる悪魔よ?人の心の奥底からくる行動は知り尽くしているの」
「何だウェイロニーちゃんの勘みたいなもんか・・・。びっくりした。まぁでも・・・。俺に関しては当たってるような気がするから信じまつよ。サキュバスを使い魔にするのは止めておきますわ。オフッオフッ!」
「あら、信じてくれてありがとう」
そう言ってウェイロニーはマサヨシの顎を撫でた。
(本当は・・・、マサヨシのアレを独り占めしたいからなのよ。うふふ。貴方のアレは濃厚でとても美味しいわ)
ウェイロニーは内心でほくそ笑む。
マサヨシがどこからか持ってくるタラの白子は絶品なのだ。もしマサヨシがサキュバスを使い魔にすれば白子を横取りされるかもしれない。
マサヨシはウェイロニーの顎撫でから逃れると、伸びをして手を前後にブラブラさせてから、手をピシャンと叩くと扉へと向かった。
「さて、ゴデの街にでも行こうかな。第二次リザードマン掃討戦以降、帝国も安定しているから俺も暇なんでつよね」
「あの掃討戦の戦略はマサヨシだったんだよね?第一次リザードマン掃討戦の時はリツの末弟セイバーが大活躍したけど・・・」
「戦術家のセイバーと戦略家の俺を比べんでつかーさい。オフッオフッ!」
そう笑ってマサヨシは部屋を出ていった。
「あの樹族の神様は時間を止めているですって?」
「ああ、そうだ。ロケート団のクローネのような時間を遅くする能力者もいるのだから、別にそこまで驚くほどの事でもないがね」
「能力者自体驚くべき存在だけどね・・・」
タスネはチラリと一度見覚えの能力を持つイグナを見てから視線をヒジリに戻す。
「でも何で樹族神が時間停止能力を持っていると思ったの?」
「ウメボシを見ての推測なのだが、ここに白い斑点が五つあるだろう。樹族と手の大きさが近い君達なら斑点が指先と合う事が解るはずだ」
タスネはヒジリに差し出されたウメボシの体に付く白い斑点に指先を当ててみた。
「わぁ!本当だ!でも何でウメボシは焼け焦げたのかしら。時間を止めている間に【業火】の魔法を使ったの?」
「いいや、そんな事はしなくてもいい。時間の止まっているウメボシを押しただけだ」
「え?何でそれで焼け焦げるの?」
「我々の周りには空気があるからさ。時間の止まったウメボシが動かされるという事はとてつもないスピードで空気中を移動させられた事になる。すると空気との摩擦で焼けるのだよ。人ならば消し炭になっているが、ウメボシは耐熱性や耐寒性のあるコスモチタニウム合金で出来ているからそう簡単に灰にならないというわけだ」
「なるほど、よくわからないわ」
「悪戯で誰かに皮膚を手で擦られて熱いと思った事があるだろう?あれを風の精霊がしてくるようなものだよ」
ウフフフとフランが急に笑い出した。
「風の精霊が必死になってアタシの腕を擦っているところを想像しちゃったわぁ」
ガチャリと扉が開き誰かが入ってきた。
「でも何故時間停止中に魔法を使ったり、武器で攻撃したりしないのかしら?」
ヴャーンズ皇帝の命令で桃色城に長期滞在する事になったリツは、会話を部屋の外で聞いていたのか茶菓子を持って部屋に入って来るなり疑問を口にした。
そして紅茶に合う焼き菓子をテーブルに置くとヒジリの横に嬉しそうに座る。今日はヘカティニスがオーガの酒場の手伝いでいないからだ。
「恐らく時間停止中の者への攻撃は特定条件下以外では無効なのだろう。触れていないと時間停止中の者へ影響を与えられなというのであれば、触れながら攻撃も出来るはずなのだから何かしらの制約があるかもしれない。なので樹族神は触れて移動させる事しか出来ないのだと私は考える」
「それでも消し炭になるのだから厄介ですわね」
「ああ。だが時間停止中でも反撃する事は出来る。が、次の一手が無いのだ。もし私の推測が間違っていたり、樹族神がそのカウンターに耐えきったりすれば、確実に私は詰む」
ウメボシがタスネの手から離れ、ヒジリの横に浮く。
「マスターにはマスターが推測した内容の確実性とその後の保証が必要なのです。なので暫くはあの樹族神を観察するしかありません。ソファに仕込んだ監視用ナノマシンが役に立てばいいのですが・・・」
ウメボシは空中にホログラフモニターを出して樹族神の様子を映し出した。
「ふぁ?」
モニターには痩せこけた老人の尻が見える。
チャビンが全裸で部屋の中をウロウロしていたのでウメボシは直ぐにモニターを消した。
「なるほど、樹族神は家の中だと全裸で過ごすタイプか・・・。という事は私たちが遺跡に行った時、全裸の彼に遭遇していた可能性もあったわけだな・・・。彼がこちらの気配に気が付いてくれて良かったよ。では監視は私が個人的にしておこう」
姉妹はシワシワのお尻を見せられてンモーと不満げな声を出し嫌な顔をしている。
ヒジリは焼き菓子の横に添えてあった干し林檎を二つ並べて尻の形を作りタスネに差し出した。
「食べたまえ」
「いるか!」
久しぶりにツィガル城に来たマサヨシはサキュバスを使い魔にすべきかどうかを、ウェイロニーに相談しようと思い、彼女の部屋の扉をノックした。
「開いてます、どうぞ~」
「失礼しまふ」
「あら、マサヨシ。もしかしてタラの白子を持って来てくれたの?」
「いや、今日は違いまっする」
「な~んだ。残念。あれ、焼いて食べると美味しいんだけど」
サキュバスの部屋に入ったマサヨシは部屋中にヴャーンズの絵や思い出の石板がある事に驚いた。
「おわっ!どんだけ皇帝の事好きなんだよぉ~」
「私の初めての人なんだから当然でしょう」
「えっ?そうなの?やるな、爺さんのくせに」
「別に昔から年寄りだったわけじゃないわよ、ヴャーンズ様は。彼の昔の姿、見たい?」
「まぁ左程興味はないけど、一応見ておきますか」
となるとウェイロニーは大量の思い出の石板を持ってくるのか、とウンザリしていたマサヨシだったが、彼女は普通に写真アルバムを持ってきた。
「おや?普通のアルバムですな」
「これ高ったんだから。魔法のアルバムなの。変な機械とセットで金貨100枚」
「たっか」
驚くマサヨシになんとなく気を良くしたウェイロニーが開いたアルバムにはヴャーンズの写真が沢山入っていた。しかもそのどれもが何かを言って動いている。
「これが、出会った頃のヴャーンズ様」
写真のヴャーンズはまだ若く、毛がフサフサしていた。
ウェイロニーを使い魔にした事を興奮しているのか頬が赤い。ウェイロニーが指で写真を叩くと写真の中のヴャーンズは指を合わせてエクセレント!と言った。
「助平な顔してんなぁ・・・」
「そんな事言わないでよ。ヴャーンズ様が私を必要としているのは家族を失った苦痛を快楽で忘れる為だったんだから」
「おっと・・・悪い」
「で、これが私を召喚して二日目」
シワシワになったヴャーンズがベッドに横たわっていた。ウェイロニーの魔法のカメラに気が付いたのか、頭を起こすとサムアップしてエクセレント!と言った。
「もうすでに枯れ枯れじゃないの!オフフ」
「そりゃ陛下も若かったからやりまくりで・・・。はあ~、あの頃は毎日が素敵だったわ」
ウェイロニーは暫く物思いに耽ってから、次々とヴャーンズ皇帝の写真を見せる。そのどれもがエクセレント!と言っていた。
ページをめくっていると一つだけ違和感のある写真を見つける。
「ん?肌が妙に黄色い皇帝陛下がいるな・・・ってかこれ、バーン・・・。いや言うのはやめとこ」
「ああ、それは異世界覗きの三面鏡を見てたらそっくりさんがいたから写真に撮ったの」
マサヨシはまた別の写真が気になった。
「ん?この陛下は誰と話しているんでつか?陰みたいなモヤモヤしたのに向かってエクセレントと言ってまつけど」
暫くウェイロニーはこめかみを人差し指でグリグリしてから思い出す。
「う~んと・・・。そうそう彼らは確か影人とか言ったかしら。時の番人よ。基本的に住んでる場所から出てこないから誰も彼らの事を知らないみたいね」
「なにをしていた時の写真?」
「ヴャーンズ様が影人の攻撃を止めさせた時の写真よ。彼らは最初、村の宝を手に取って見ていたヴャーンズ様を盗人だと勘違いして魔法で攻撃してきたの。でもヴャーンズ様は余裕をもって彼らの魔法を跳ね返したわ。それから、珍しい魔法を求めて彷徨っていただけだというと影人は攻撃を止めてくれたの。多分【読心】が使えるのだと思う。その後、彼らはとても友好的になったわ。ヴャーンズ様も村を気に入り暫く滞在して珍しい魔法を幾つか覚えたわ。【転移】の魔法もここで覚えたから、それ以降の旅が楽になったわね」
「へぇ・・。皇帝の忙しい身にはありがたい魔法でつね。それらの魔法はタダで貰ったのかな?何の支払いもなしに?」
「まぁ物理的な支払はなかったわね。代わりに恐ろしいものを支払わされたわ。寿命と時間よ」
「ひえっ!」
「あはは!というと恐ろしいけど、単に滞在してたから時間が過ぎ去ってその分寿命も失っただけよ、数日分の」
「ってそれなら、誰もがいつでも支払っていまつね」
ナンダヨモーと胸を撫で下ろしマサヨシは笑った。
「でも彼らにとってはそれはご馳走だったの。彼らは時間を食べて生きていると言ってたわ。普段から流れる時間を食べているけど、誰かが消費する時間は格別なんだって。だから悪意を持たない人の来村は歓迎だったみたい」
「時間を食べる?概念を食べるのでつか?う~ん・・・理解できない・・・。じゃあ村おこしでもしてバカスカ観光客を呼べば良かったニ~」
「それはダメなんだって。村の掟で自分の力で来た人のみ歓迎するって言っていたわ」
「じゃあ、俺がその場所を聞いてしまうと歓迎されずに追い返されるんでつね」
「そういう事になるわね。場所を教えてあげましょうか?うふふ」
「いや、聞かない」
「場所はね・・・」
「あーあー!きーこーえーなーいー!」
マサヨシが両耳を塞いだ隙にウェイロニーは彼の脇をくすぐった。
「冗談よ」
うひゃひゃと体をくねらせて笑うマサヨシは自分が何しにこの部屋に来たのかを思い出す。
「そうだった、俺相談に来たんだった」
「ん?私に乗れる相談だったら乗るけど」
「実はさ~・・・」
カクカクシカジカとマサヨシは説明した。
「ん~。それは止めといたほうがいいんじゃないかしら?貴方、自分が思ってるほど助平じゃないわよ?」
「ななな、なんですとー!?」
「だって根が真面目ですもの。女の子を追い回すのも心が寂しいからだと思う。ちゃんとしてればイケメンだし直ぐに女の子は寄って来るわよ?」
「まじでつか?こう見えても昔は禿げでデブでキモオタだったんですけど」
「それは知ってるって。助平なのも寂しさや自信の無さが貴方をそうさせているの。そうやって道化を演じていれば何だって冗談で済ませられるし自分の心も傷つかない。似てるのよね、貴方。ヒジリ王に」
「ええっ?ヒジリ氏は自信満々だしモテモテだがぁ?」
「そうね。ヒジリ王は実力も自信も人望もある。でも貴方と同じで心の奥底に強いコンプレックスがあるの。だから時折変な事してるでしょ?あの王様も」
「なんでそんな事が解るんでつか?【読心】は効かないはずだけど、ヒジリ氏は」
「魔法なんて使わなくても解るわよ。私は人を惑わせる悪魔よ?人の心の奥底からくる行動は知り尽くしているの」
「何だウェイロニーちゃんの勘みたいなもんか・・・。びっくりした。まぁでも・・・。俺に関しては当たってるような気がするから信じまつよ。サキュバスを使い魔にするのは止めておきますわ。オフッオフッ!」
「あら、信じてくれてありがとう」
そう言ってウェイロニーはマサヨシの顎を撫でた。
(本当は・・・、マサヨシのアレを独り占めしたいからなのよ。うふふ。貴方のアレは濃厚でとても美味しいわ)
ウェイロニーは内心でほくそ笑む。
マサヨシがどこからか持ってくるタラの白子は絶品なのだ。もしマサヨシがサキュバスを使い魔にすれば白子を横取りされるかもしれない。
マサヨシはウェイロニーの顎撫でから逃れると、伸びをして手を前後にブラブラさせてから、手をピシャンと叩くと扉へと向かった。
「さて、ゴデの街にでも行こうかな。第二次リザードマン掃討戦以降、帝国も安定しているから俺も暇なんでつよね」
「あの掃討戦の戦略はマサヨシだったんだよね?第一次リザードマン掃討戦の時はリツの末弟セイバーが大活躍したけど・・・」
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十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
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