即席!! 8ページラブコメ

竹林

文字の大きさ
2 / 4

異性の友達

しおりを挟む
 わたしは水川夏帆。高校一年生だ。

 わたしには仲のいい男友達がいる。

「あー、やっと昼休みだー」

「四時間も座ってるのつらいよな」

「だよね」

 今わたしの横で話している彼がその男友達、ユータだ。

 ユータとはもう半年ほどの付き合いになる。

 彼とは席が隣同士だったこと、お互い中学の時は関東に住んでいたことでよく話すようになった。

 その頃のわたしは引っ越してきたばかりで、新しい生活に不安を抱えていた。

 彼もわたしと同じように不安だったらしい。

 同じ境遇のわたしたちはすぐに意気投合した。

 初めは授業の合間や休憩中に話す程度だった。

 けれどやがて放課後や休日も遊ぶようになった。

 慣れない学校で唯一落ち着ける時間だったし、純粋に二人で居ることが楽しかった。

 いつしか、わたしは彼のことが好きになっていた。



 今は昼休み、わたしたちは屋上に続く階段に腰掛けていた。

 ここには普段誰も来ない。

 わたしたちはいつもここでお昼を食べている。

 教室だとあらぬ噂が立ってしまうからということで、彼がここにしようと言ったのだ。

 ……わたしは別にそういう噂が立ってもいいのだけれど。

 それにしても男女が隠れて一緒にいるのもどうなんだろう。

 ユータはそのことは気にしてないみたい。

 彼の感性がずれているのだろうか、それともわたしを意識していたり……。

 いやないない。

 前にわたしといると落ち着くって言ってたし。

 好きな人相手に落ち着けるほどユータは大人じゃないと思う。



「そういえばさ、ユータは最近いい感じの子とかいないの?」

 聞くのはちょっぴり怖いけど、勇気を出して聞いてみる。

「うーん、いないな。あー彼女ほしー」

 いないのがわかってうれしいけど、なんか複雑。

「夏帆こそどうなんだよ。……そういう男子いたりするの?」

 なぜかわたしの顔色を伺うように尋ねるユータ。

 そんなに気になるのかな。

 わたしがほかの男子と付き合ったら、わたしと遊べないとか考えているのだろう。

 それはそれで嬉しかったりする。

「うーん、いい人かぁ」

 ちら、ちらとユータの様子を見る。

 いい人。つまり好きな人。付き合えそうな人。

「……いるっちゃ、いるかなぁ?」

 少し声が上ずる。やだ、意識してるってばれてないよね?

「え、まじで? 誰?」

 焦ったように、食い気味に聞いてくるユータ。

 よかった、気づいてはいないっぽい。

「えーっとね」

 どうしよう、言ってしまおうか。

 ユータだよと、わたしの好きな人はきみだよと。

 最近はほぼ毎日遊んでいるし、今日もこうして二人だけで昼休みを過ごしているのだ。

 付き合うとまではいかないと思うけど、わたしの気持ちは受け入れてくれるかも……。

 いや、だめだ。ユータはわたしのことをただの友達としか見ていない。

 それにここで告白して今の関係が壊れるのが怖い。

 せっかくユータと、好きな人と友達でいられるんだ。

 友達だからお昼を一緒に食べたり、放課後に遊んだり、こうして二人で話すことができる。

 付き合えなくても、二人でいられればそれでいい。

 それでわたしは満足だ。

 少し息を整える。ふぅ。

「ユータだよ」

「えっ……」

「な、なーんてね! だまされた?」

「なんだよ嘘なのか! だ、だまされたー! ははは!」

「あははー、ひっかかった!」

「ははは!」

 笑いながら、悔しがるふりをするユータ。

 気のせいかいつもよりオーバーリアクションな気がする。

 ふたりでひとしきり笑いあった後、ぽつりとユータがつぶやいた。

「……でもちょっと、残念だなあとか思ったり?」

「え?」

 何それどういうこと? 

 今の話の流れだと、わたしがユータを好きじゃなくて残念ってことだよね?

 それってまさか……。

「な、なーんてな!」

「なんだー嘘なの? あはは!」

「ははは! さっきの仕返しな!」

「あ、あはは!」

 ぎこちない笑いになってしまう。

 ちょっとがっかり。でもこんなのなんともない。

 だってわたしは今、ユータの一番の友達なんだから。

 一緒に遊んで、笑って、話して。

 これからもそれは変わることはないだろう。

 笑い声をあげていたせいで、わたしはユータのつぶやきを聞き逃していた。

「……ていうのも嘘なんだよなぁ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

盗み聞き

凛子
恋愛
あ、そういうこと。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

👨一人用声劇台本「寝落ち通話」

樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
恋愛
彼女のツイートを心配になった彼氏は彼女に電話をする。 続編「遊園地デート」もあり。 ジャンル:恋愛 所要時間:5分以内 男性一人用の声劇台本になります。 ⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠ ・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します) ・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。 その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。

処理中です...