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第十三章 黒髪少女の軌跡編
983話 師匠
しおりを挟む世界には、まほうっていうものがあるらしい。
それは誰でも知っているじょうしきみたいなものらしいけど、いろんなことを忘れちゃってる私にとっては初めてきく言葉だ。
今見せられたみたいに、水とか出せるんだ!
「私、まほう使ってみたい!」
気づけば私は、そんなことを言っていた。
それを聞いたきんぱつの人は、少し驚いたようなひょうじょうになって、なにか考えているようだった。
……だめ、だったのかな。
「エランがもし、本当にそれをやりたいなら……教えてあげるよ」
「! ほんとに!?」
だけどきんぱつの人は、私にまほうを教えてくれると言った。
その言葉が、うれしくて、私はぴょんぴょんと飛び跳ねた。
「あぁ。けど、魔導を学ぶのはそう簡単なことじゃないぞ?」
「うん、がんばる!」
「……そっか」
気のせいかな、なんだかきんぱつの人もうれしそうだな。
それから私たちは外に出る。
家の中じゃ、狭いしいろいろきけんだからってことみたいだ。
「それじゃあ、魔導……いや、まずは魔法だけだな。それについて説明する。
なにかわからないことがあったら、遠慮なく質問してくれ」
「はーい!」
「まず、魔法はイメージの力だ。想像力が強ければ、それだけはっきりしていれば具体的な力となる」
いめーじ……そうぞうする力、ってことか。
さっきも言っていた、たとえば水を出したいとかそんな考え方か。
いめーじが強ければ、まほうの力も強くなる……のか。
「だから、きっちりと『こうするべき』という決まりはない。魔法は自由だし、その人によってまったく新しいものを生み出すこともある」
「なるほどー」
「ま、いろいろ話しているよりも、やって慣れた方がいいな。
じゃあエラン、とりあえずやってみようか。まずは……さっき私がやったみたいに、水を出してみよう」
よ、よーし、やるぞー。き、きんちょうしてきた……ちょっとだけだよ?
まずは、いめーじ……想像力! 私が、水を出すっていう。そういう想像。
こう、手のひらからぴゅーって水が飛び出してくる感じ。わぁーってやりながら、手からほうすいするんだ!
……楽しそう。
「エラン、集中」
「ひゃう!」
い、いけないいけない。そうだよね、集中しないと。
へんなことは考えちゃだめだ。
「魔法はイメージ。最初のうちは、まず集中して頭に思い浮かべてみて。最初は、まずできるようになることが重要だから」
「ん、むむ……」
「そして、自分の中の魔力に働きかける。イメージを、魔力によって具現化するんだ」
手から水、手から水、手から水……うう、集中ってむずかしい。
目をぎゅっとつむって、よけいなことは考えないように何度か息をすっては吐く。
頭の中のいめーじ……それに、まりょくでぐげん化。
なんだか、変な感じ。身体の中がぼかぼかしてきて……でも、イヤな感じじゃない。
このまま、身を任せちゃいたいくらい。
「はは、まあはじめのうちからうまくいくなんて稀なことだから。何度も挑戦して、練習を重ねるうちにできるように……」
「えいっ」
身体の奥があつくなって、なにかが流れているようなかんかくがある。
自分の魔力を水みたいにして、手のひらから出しちゃういめーじ。
身体の奥から手のひらへ……そして、さいごは気合いを入れる。
声を出して、思い切りやっちゃうんだ!
ぴゅるるる……
「わ、で、出た!」
目を開く。手のひらからなにかが出ている感覚があって、それが水だとわかった。
で、出てる! 水、出てる! 私、まほうを使ってる!
いきおいは全然だけど、それでも水が出ていることに変わりはないもんね!
「や、やったー、やった!」
「……驚いた。エラン、キミは記憶がないんだよね……つまり、魔導に触れるのもこれが初めて……初めてで、しかもこんなに早く……」
わぁー……すっごいなぁ。まほうだ、まほう!
……あ、水止まっちゃった。でも、ちゃんと出たもんね!
「ふむ……実際、子供の方が大人よりも想像力は逞しいから、子供のうちの方がより魔導を鍛えられる。けれど、魔法を使うための魔力が多くなるのは、成長してから……エランの場合、想像力はもちろん、魔力も相当……」
「ねー見た!? 見てた!? 私できたよ、ししょー!」
「え、あぁ……驚いたけど、すごいじゃないかエラ……え、師匠?」
私がまほうを使えたのは、きんぱつの人がわかりやすく教えてくれたからだ!
おかげでこんなにすごいことができた! もう、きんぱつの人なんて呼べない。
だから……
「うん、ししょー! 私のまほうのししょー!」
この人は、私の……ししょーだ!
「あ……ま、まさかそんな呼ばれ方をすることになるとは……」
「もしかして、イヤだった?」
「嫌ではない、よ。ただ、少し恥ずかしいというか……」
はずかしい、のか……ふふ、なんだかちょっとかわいいかも。
まほうのこと教えてくれたときはあんなにりんとした顔だったのに、今では顔を赤くしている。
イヤじゃななら、遠慮なくそう呼ばせてもらおう!
「わ……」
「! おっと」
急に、力が抜けて後ろにたおれそうになってしまう。
だけど、背中をだれかに支えられる。でも、後ろに誰も立っていないのだ。
するとししょーは、くすっと笑った。
「魔法で風を生んで、倒れてしまわないよう後ろから支えたんだ。魔法は自分の魔力を消費する……つまり魔法を使えば疲れちゃうんだ。だから、休憩しようか」
「はーい」
まほうの疲れ、か……なんか、へんな感じー。
でも……イヤな疲れじゃ、ないな。
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