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第十三章 黒髪少女の軌跡編
1016話 食事
しおりを挟む魔法が直撃したけど、効いてない。
完全に無効化されたわけじゃない。例えば盾で防がれたとか。そういうのの方がまだわかる。
でも、直撃して……身体には火傷ができている。その上で、聞いていない。
それだけじゃない……
「! 再生してる……?」
焼けた皮膚は焼けた部分が消えていき、焦げもなくなっていく。今負ったはずの傷が、消えていく。
師匠が以前見せてくれた、回復魔術。それに似ている。こいつも魔導を使えるのか?
ただでさえ効いていない攻撃が回復されるのって、手段が潰されている感じだ。
「あ、あー……そうか、こうすればよかったのか」
しかも、だ。男は何事かつぶやいたあと、燃えている足を別の足でぶった斬る。
足は燃えている部位と燃えていない部位を分けるように切断され、切断された部分からは血が流れ出す。それも、紫色の。
自分で自分の足を……? いったい、どういうつもり……
「ぁ……」
考える間もなく……切断された部分は肉片がつながりふさがっていく。いや、ただふさがるだけじゃない。
ぼこぼこと暴れる肉は形を成していき……元あった足の形が、復活する。
……自ら燃えている足を斬り落とし、その上で斬り落とした部分を再生させる……そういうことか。
「はぁー、ぁー……」
男は、恍惚とした表情を浮かべている。気持ち悪い。
って、そんなことを思ってる場合じゃない。半端な魔法は効かない、本体よりも足は燃えやすいけどそれもたいしたダメージにはならず……
なにより、燃やすような攻撃をしてもその部分を斬り落とし、再生。こっちの攻撃がなかったことになる。
これじゃあ、ただいたずらに魔力を消費するだけだ。
「じゃあ……これなら、どうだ!」
私はその場から移動しながら、魔力を集中する。立ち止まったままでは、一方的に狙われかねないからだ。
見た目蜘蛛だから、燃えるかと思ってたけど……それがだめなら、方向性を変えるだけだ!
先ほど私の身を守ったアイスロック。それを今度は三つ出現させ、男へと放つ。
威力は石をぶつけたような感じ。それに、衝突した際の影響はそれだけじゃい!
「む……?」
蜘蛛の足にぶつけ、それが凍っていく。地面と接着し、簡単には引き剥がせない状態。
攻撃が効かないなら、こうして凍らせて動きを封じてしまえばいいはず! 他の足も鈍らせて……
「あっははは! 無駄無駄!」
だけど男は、足を上げて強引に氷を砕く。地面とくっつけていたはずなのに、まったく効果がない。
それどころか、砕けた氷の破片を私にぶん投げてくるではないか。
「! くっ……」
私は魔力防壁を張り、氷の礫を防ぐ。魔法で作ったものとはいえ、今はただの氷だ。防ぐのに問題はない。
けど……
「そぉら隙だらけだ!」
「!? げぉっ……」
氷の礫に紛れて迫ってくる足が、魔力防壁をも破壊して私の腹部に突き刺さる……
……直前に私は腹部に魔力防壁を重ねて展開。トゲが突き刺さるのは回避する。
だけど、まるでお腹を殴られたような衝撃が襲ってくる。その場からふっ飛ばされる。
「あっ、ぐ……」
飛ばされ、地面に激突しニ、三度跳ねる。うぅ、痛い……お腹への防御に意識を向けてたから、背中をもろに打ちつけた……
痛い、痛い……でも、立て、私……
「ぐっ、はぁ……はぁ……」
「あっはははは! いーい気分だぁ!」
……なんとか、起き上がる。男は追撃してくるわけでもなく、腹を抱えて笑っている。
明らかに人間離れした姿。亜人や獣人ってのも違う……魔物や魔獣に近い姿。
でもしゃべれるし、一応会話は成立する……いや、してないな。別に会話してないな。
しゃべれるから知性はあるのかもしれない。でも、隙のある私に追撃してこなかったり、周りが見えていないのか?
「はぁ、はぁ……」
はは……こんなことなら、受け身の練習もっとしとくんだった。魔力で身体を強化すれば問題ない、なんて思ってた自分を殴りたいよ。
なんにしても……今、あの男は私を見てはいない。かといって、私が攻撃を仕掛ければまた狙ってくるだろう。
なら、このまま放置しておく? ……そんなこと、できない。あいつがなにをするのか、わからない。
行動が読めないからこそ、目を離せない。それにもし、こんなのが人のいるところに行ったりしたら……
「あぁ……あっち、生命反応がたっくさんあるなぁ……!」
「!」
ほら、言わんこっちゃない。男はどこかに首を向ける。
その先には……確か、ベルザ国。そこにいるたくさんの人に反応している。
「あ……」
すると、近くを鳥さんが飛んでいた。森の魔力に反応したのか、慌てて飛び出してきたのだろうか。
それを見て……男は、足を伸ばしていった。
そして……ぐさっ、と、鳥の身体を貫いたのだ。
「っ……」
「……あぁ、足りないぃい……もっと、もっと食わないと」
鳥さんは、毒の影響かそれとも別のなにかか……さっきまでの元気な姿が嘘のように、干からびていく。
思わず口を押さえてしまう。今のもそうだけど……こいつ今、なんて言った?
足りない……って、もしかして、人も同じように食うつもりか? てか、今の食事なのか?
やばいやばい、こんなの放置できっこない……
「……! あぁ……そこにもうまそうなにおい、あった。芳醇で、いい香り……うまそうだ。それに黒い髪で、見てるだけで腹が……ごくっ」
「……マジか」
……どっちみち、ここでどうにかしないといけない……ってわけだ。
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