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第十四章 他学年試合編
1068話 元気印
しおりを挟むピアさんの正面と背後から同時に魔術が放たれ、それがピアさんに直撃した。
声は聞こえなかった。声もなく魔術に呑み込まれたのか、それとも声は轟音にかき消されたのか。
いずれにしろ、強力な魔術がピアさんを呑み込んだ。誰もが固唾を呑んで見守る中、煙が晴れていく……
……そこには、ピアさんが倒れている姿があった。直後、戦闘不能判定をされ、結界の外に弾き出される。
「試合終了!」
それを見届け、笛が鳴った。試合が終わったという合図だ。
それを聞いた観客からは歓声が湧き上がる。
……ピアさんたち、負けちゃったな。
「やっぱりすごかったわね……」
「えぇ」
クラスのみんなも、口々に感想を言っている。
その中には、やはりゴルさんに関するものが多い。なんたって、分身魔法に二重詠唱までやってのけたのだ。
……別に、私だけのものってわけじゃないけどさ。私は何年も練習してできるようになったのに、ゴルさんはこの短い期間で。
ちょーーーっとだけ拗ねてしまう。
「でも、あの魔導具も……」
「あぁ、すごかったな」
だけど、ゴルさん以外の話も聞こえる。それは魔導具……ピアさんに関するものだ。
ピアさんの魔導具に関しては、私がゴルさんとの決闘で使ってみたり学園祭に出してみたり。見る機会はあっただろうけど。
まさかあんなに実用的なものが揃っているとは、思わなかったのだろう。
「ねえ、エランちゃんはあの人と知り合いだったわよね?」
「うん、初めて仲良くなった先輩だよ」
「あの人、あんなにすごい魔導具を作ってたのね。確か、グレイシア様に憧れてるって」
そう、ピアさんは師匠に憧れている。師匠に近づくために、卒業したら本格的な魔導具技師になりたいとも言っていた。
今回は負けてしまったけど、ピアさんならそれで折れることはないだろう。
むしろ、他に問題点があればそれを見つけて、改善作業に没頭するだろう。
「さて、少し待っていろ」
次の試合が始まる前に、会場の修復作業が行われる。
結界の中では一定以上のダメージは無効化されるとは言え、それはあくまで身体への負担的な話。
攻撃が当たれば会場にヒビは入るし、穴が空くこともある。それを修復するのだ。
全クラス合計十二クラス……ってことは、まずは六回戦あるってことだ。
すでに二回戦終わったわけだし、残りは四回。一年生は私たち以外はまだ残っている。
「次はどのクラスとどのクラスが当たるのかな」
「どうかしらね」
そんな話をしているうちにも、修復作業は終わる。
そして、先生が次の対戦クラスを発表した。
……次は、ノマちゃんのいる「デーモ」クラス。そしてタメリア先輩が所属している三年生クラスだ。
「うぉ、三年生か……」
「マジかよ」
当のノマちゃんクラスからは、悲痛な声が上がっている。まさかいきなり三年生とぶつかることになるとは、思っていなかったのだろう。
だけど……
「皆さん、落ち込んでいる暇なんてないですわ! どうせ勝ち抜いていけば強い相手と当たるんですもの! 気合いですわ気合い!」
と、元気な声が聞こえた。それが誰のものか、わざわざ考えるまでもない。
教室でのノマちゃんの様子は、カゲくんやラッへからも話は聞いていた。けど、こうして直接見るのとはまた違うな。
私といつも接している通りの、元気な女の子だ。
それを受けて、クラスメイトからは緊張の糸が和らいだように見えた。元気印のノマちゃんの言葉に、みんな励まされたのだ。
ノマちゃん、なんだかんだクラスの中心的な存在なんだな。
「ノマちゃんなら、大丈夫そうね」
「そうだね」
実力的にも、精神的にも。
ノマちゃんは"魔人"と呼ばれる身体になってから、飛躍的に魔力が上昇している。皮肉にも、あの事件がノマちゃんを強くした。それがいいことだとは、まったく思わないけど。
私が注意するべきは、その力が変に暴走してしまわないか……といったことだな。
「みんなも、良い顔してるじゃない」
それに、ノマちゃんだけではない。記憶を失ったままとは言えエルフのラッへ、気配を消すのが異様にうまいカゲくん、それに第二王子のコーロランまでいるのだ。
相手がタメリア先輩のいる三年生でも、充分に渡り合えるはず。
お互い会場に足を踏み入れる。そして、試合開始の合図が鳴り響く。
「さあ、行きますわよラーニャ!」
その直後、口火を切ったのはノマちゃんだ。魔法陣を展開し、その中から使い魔……妖精猫が現れる。
紫色の毛並みを持つ、小さなモンスターだ。ぎょろっと大きな青い瞳が特徴的で、気品さえ感じさせる。
ラーニャと名付けられたその子は、小さいのに堂々としたふるまいをしている。
「へぇ、妖精猫か」
それを見て、タメリア先輩は唇をなめた。そして、手前に魔法陣が展開する。
先輩も……いや先輩たちもまた、使い魔を召喚していく。
「あの人、確か魔導大会でエランちゃんにぶん殴られた人よね?」
「それはそうなんだけど言い方よ」
そうだ、タメリア先輩とは魔導大会で戦った。でもあの時は、私途中から髪白になってあんまり自分の力で倒したって気持ちにならなかったんだよな。
それに、大会では結局先輩の使い魔見れなかったし。
両クラス、その戦力が単純に倍になっていく。
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