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第十四章 他学年試合編
1078話 鬼族の末裔
しおりを挟むクレアちゃんのルームメイトで、ナタリアちゃんのいる「オウガ」クラスに所属しているサリアちゃん。彼女はどうやら、鬼族というやつらしい。
その名前は私だって知っている。いくら世間に疎いと言われても知ってますともえぇ。
遠い昔に絶滅したはずの種族。サリアちゃんはその遠い遠い子孫だってことか。
ちなみに鬼族含めた他の種族も滅ぼしたのが、ダークエルフだと言われている……
そんな昔の話なら、もはやサリアちゃんに鬼族の血が流れているかも疑問だ。けれど、現にサリアちゃんはその力を使っている。
頭に生えた、赤い角。先祖返りしているらしく、サリアちゃんには鬼族の力がある。
「それが、あの腕力かぁ」
先ほど、ゴーレムをぶん投げた。それも、身体強化の魔法を使わず。
怪力が、鬼族の特徴なのだろうか。
しかし、あんな目立つ角があったらルリーちゃんみたいに隠す、なんてわけにはいかないよな。
そもそも、隠さなきゃいけない種族でもないんだろうけど。
「鬼族の子孫ってことは、サリアちゃん人気者だったりして?」
「どうかしらね。確かに、話しかけられることはよくあるって言ってたけど……本人があの性格だから」
のほほんとしているわけではないけど、わりとなにを考えているか分からない時もある。
そんな彼女だけど、本当に同一人物かと疑いたくなる時がある。師匠の話をした時だ。
サリアちゃんは師匠のことを神と崇めていて、グレイシア・フィールド神と呼ぶほど。師匠の執筆した本も持っている。
「あれが噂の鬼族……俺が相手だ!」
すると、サリアちゃんに向かっていく男子生徒が一人。もしかしなくても、相手クラスの生徒だろう。
身体強化……部分強化を腕と足にかけ、大柄とは思えないほど凄まじいスピードで迫っている。助走プラス魔力強化の拳をぶつけるつもりだ。
サリアちゃんとの距離はあっという間に縮まり、拳を振りかぶって……
バリッ
次の瞬間、ドォン……と激しい音が鳴った。
その巨体から振り下ろされた拳が、地面に激突してすごい音を立てたのだ。
……そう、拳は地面にぶつかった。
「なに?」
男子生徒の拳は、サリアちゃんに当たってはいなかった。それどころか、さっきまでサリアちゃんがいた場所に彼女の姿はない。
辺りをキョロキョロする男子生徒だけど、どこにもサリアちゃんは見当たらない……だけど、私には聞こえた。
拳が振り下ろされる直前。なにか、バリッという音が聞こえたのだ。
「ここだよ」
「!?」
いつの間にか男子生徒の死角に回っていたサリアちゃんが、男子生徒の顎を蹴り上げる。
無防備なところに鋭い一撃を食らってしまい、男子生徒はふらふらと揺れる。顎が揺れたことで、脳も揺れたのだ。
そんな男子生徒の正面に堂々立ち、サリアちゃんは拳を握りしめる。
その身に、バリバリと雷を纏って。
「うりゃあああ!!」
ドッッッ……!!
「……っ!?」
鋭い……どころではない。その細腕のどこにそんな力があるのだと言いたくなるほどに重々しい音が、響く。
サリアちゃんの右拳は、男子生徒の腹にめり込み、男子生徒は声も上げることはできずに悶絶した。
「ピンキー!」
誰かが、おそらく彼の名前を呼ぶ。
その勢いのまま吹っ飛び、戦闘不能になった男子生徒は結界の外に弾かれる。
一瞬、音がなくなったんじゃないかと思えるほど、静かになった。あんな大きな音が鳴ったんだ、それも不思議じゃない。
「す、っご……」
その光景に、誰かから声が漏れた。
あの速さ……身体強化や、さっきのノマちゃんとはまた別物だ。速いというより、まるでその場から消えたように見えた。
それに、あの身体に迸る雷は?
「あれが、鬼族の力らしいわ」
クレアちゃんが、隣で口を開く。
「あれ?」
「常人離れした怪力もそうだけど……本当の力は、あの雷よ。鬼族は雷を操る種族だって聞いたことがある。私も実際に見るまで、半信半疑だったけど」
その説明に、私は開いた口が塞がらない。
雷を、操る? だから身体に纏っているのか……
もしかして消えたみたいな速さも、雷みたいな速さで移動できるってことなのだろうか。
雷の速さなら、いくら人間が身体強化しても追いつけないほどのものだ。
「クレアちゃんは知ってたんだよね」
「そりゃあね。あの雷速度で何度からかわれたことか」
「でも、なんで雷なの?」
「鬼と言えば雷……らしいわよ。よくわかんないけど」
……魔法や魔術で、雷をイメージしたり生み出したりすることはできる。でも、雷を操るなんてことはできない。
しかも、それを身体に纏ったり、雷の速度で移動したり。完全に、雷の力をものにしている。
赤い角を中心に、雷がバリバリと轟いているのがわかる。
「か、かっこいい……!」
雷が迸っている姿は、めちゃくちゃかっこいい。みんなも注目しているのは、かっこいいからってだけの理由じゃないだろうけど。
サリアちゃん、ゆっくりと周りを見回す。そして軽く息を吐いて……
バリバリッ
再び、雷の音が響く。
まばたきの刹那に、サリアちゃんの姿はその場から消え……ルリーちゃんの目前に、現れた。
「ひっ……」
「レアの友達……だったよね。こんにちは」
何事かをつぶやいて……バリバリと雷の迸る拳を、振り抜いた。
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