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第十四章 他学年試合編
1079話 神&神
しおりを挟む雷の速度で、誰の目にも追えないサリアちゃん……彼女は、ルリーちゃんの目前に移動していた。
「ぁ……」
「悪いけど……退場してもらうよ! ランの友達っ」
バリバリ……と身体中に、そして右拳に雷が迸る。
気がついた時には、すでに目の前にいるのだ。対処のしようがない。
……だけどルリーちゃんは、驚いた声を出しながらも冷静に見えた。
「っ、ガーネット!」
その名前を呼ぶ。すると実にカラフルななにかがルリーちゃんとサリアちゃん、二人の間に入り込む。
その中でも特徴的に光る赤い輝きが、サリアちゃんの目を照らした。
それでも、サリアちゃんの動きは止まらない。
「んりゃあああ!」
叫びながら、拳を繰り出す。それは目の前のカラフルな毛並み……ルリーちゃんの使い魔、カーバンクルへと放たれる。
その美しい毛並みは様々な色をしていて、サリアちゃんの目を照らしたのは額の赤い宝石だ。
耳が長く、猫のようにも犬のようにも見える。
そんな小動物に、サリアちゃんの拳が触れ……
「……っ!?」
先ほどの男子生徒のように、あわや大惨事な光景が広がると思ったけど……そのようなことは、なかった。
それどころか、拳を打ったサリアちゃん本人も困惑した表情を浮かべている。
カーバンクルを狙ったはずの拳は、確かにカーバンクルに当たった。だけど、雷も流れなければパンチの衝撃で吹っ飛びもしない。
まるで、それに軽く触れただけのような。
「ガーネットには、どんな攻撃も通用しませんよ」
「ぬ……」
「相手の放つ攻撃の力を著しく減少させ、そしてガーネット自身にも攻撃の耐性があります」
あ、あんな小さな身体で攻撃が通用しないっていうのか。
驚くべきことだけど、さっき男子生徒を吹っ飛ばしたのと今のを見比べれば、それを信じるしかない。
一瞬の攻防の中にできた、一瞬の隙。それを確認し、近くにいたタラちゃんが仕掛ける。
「うりゃりゃりゃ!」
魔力弾複数撃ち。それをサリアちゃん目掛けて放つのだけど、当然ま近くにいるルリーちゃんも巻き込まれることになる。
「わっ、とっ、わっ! ちょ、ちょっと当たっちゃいますよ!」
「ごめん! 避けて、気合いで!」
「そんなぁ!」
むちゃくちゃなことを言われながらも、ルリーちゃんはちゃんと魔力弾を避けつつサリアちゃんから距離を取っていた。
そしてサリアちゃんは、迫るそれらを手で弾いていた。
身体強化の魔法は使っていなくても、あの状態じゃ身体強化使ってるのと同じ……あれ?
「バリバリしてない。それに、身体強化の魔法使ってる」
「"あの状態"は長続きしないみたいよ。消耗が激しいんだって」
なるほどね。あれだけ凄まじい力だ、制限があるのも当たり前ってわけだ。
おまけにサリアちゃんは、鬼族ではあるけどその先祖は遠い。先祖返りしたとはいえ、百パーセントの力を引き出せるわけではないだろう。
続け様にルリーちゃんも魔法攻撃を放ち、二人の攻撃がサリアちゃんを襲う。
「あぁ、サリア……」
クレアちゃんからしたら複雑だろうな。ルリーちゃんは友達……一時期いろいろあったけど……だけど、サリアちゃんもまた仲のいいルームメイトだ。
そんな子が一方的にやられているというのは。
そのまま、サリアちゃんはジワジワと追い詰められて……
「どっせぇえええい!」
「!?」
その時、大きな声とともに大きな影ができる。それはルリーちゃんとタラちゃん目掛けて落ちてくる。
二人は咄嗟に避けるけど、それは大きな岩だった。
「サリア、無事っすか!」
「……ん」
状況的にもサリアちゃんを助けたのは、大柄な女の子だ。頭の上にぴょんと跳ねたアホ毛が特徴的。
あの子は確か……エコ・コンコンちゃん。私にとってとても印象的な子だからよく覚えている。
「ほほぉ、あのフード被った子が、神のお友達っすか」
「……神?」
「そう! エラン・フィールド神!」
……クレアちゃんとルリーちゃんの視線が私を見た。
「どういうことですかエランさん!」
「いや、これは違うんだって」
「エランちゃん、同級生に神とか呼ばせてるの……」
「だから違うんだって!」
二人の視線が痛い! でも私が呼ばせてるわけじゃないんだって!
なんか勝手に呼ばれてるんだって! いやホントに!
というか……この組み合わせって……
サリアちゃんは師匠を神と呼んでるし、エコちゃんは私を神と呼んでるし……
「うわぁああ! なんか恥ずいぃいい!」
観戦してる私が一番恥ずかしいのはどうして!?
「さっきは助かった。ありがとう、コンコン……ううん、コ」
「どうってことないっす……って、コ!? それもしかして自分のことっすか!?」
あぁ、サリアちゃんの独特的な呼び方。頭文字一文字飛ばしてるから、エコちゃんはコちゃんになっちゃうのか。
せっかく名前呼びになったみたいなのに、全然感動的じゃねぇ。
ともかく、それぞれ二人ずつとなったわけだけど……
「えいやぁ!」
「ぶへぇあ!?」
「……水?」
会場はいつの間にか、水浸しになっていた。結界のおかげで、外には漏れてこないけど。
それは、あっちで陽気な声を上げている……リーメイの水魔法によるものだ。それに巻き込まれた生徒が、流されていく。
このまま会場を水で埋め尽くしてしまうんじゃないか。そんな勢いだけど……
……リーメイ、ニンギョだけど泳げないのに大丈夫なのだろうか。
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