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第十四章 他学年試合編
1082話 それ、毒です
しおりを挟む作り出されたのは、水で形を模した分身五人。
普通の分身魔法とは違うっぽい。見た目はリーメイでもその身体は水でできているから、そもそも色なんかで判別できる。
これで相手を翻弄するのは無理だろう。
なにより、それが魔力である以上……
「俺には、通用しないよ」
ヨルが得意げに笑い、手をワキワキさせる。なんかその動き方嫌だな。
そう、ヨルの能力なら水の分身は吸収できてしまうだろう。触れなくてもできるのだ、手を向けるだけでいい。
ただ、それはリーメイだってわかってるはず……あ、ヨルが能力見せた魔導大会の時にはリーメイは居なかったから、詳細はわからないのか。
「もらうぞその魔力!」
手始めにと言うように、ヨルは近くの水分身に手を向ける。
魔力の吸収が始まり、案の定水の分身はその大きさが小さくなっていく。魔力が吸われている証拠だ。
時間もかかることなく、あっという間に水の分身が一人消えてしまった。
「へへん、これじゃあただ俺に魔力を与えるだけ……!?」
続いて魔力を吸収しようとしたヨル……けれど、急にその場に膝をついた。
目を見開き、胸を押さえる。顔が青ざめているようにも見える。
ど、どうしたっていうんだ?
「おにぃ!?」
「な、なんだこりゃ……なんか急に、身体が重くなって……」
「ふふン。さっきの見てたら、あなたの能力はだいたいわかったヨ。魔力を吸収するなラ……その魔力に毒を仕込んでたら、どうなるかナ?」
にこにこと笑いながら、リーメイはおっそろしいことを言う。
毒? 仕込む? え、え?
……つまり、リーメイはヨルの能力を見抜いた上で、自分の魔法に仕掛けを施した。
ヨルが魔力を吸収するというのなら、吸収しようとする魔力に毒を仕込む……そうすることで、魔力と一緒に毒まで吸収してしまう。
ひえぇ……
「毒って……」
「安心しテ。毒って言っても、身体が痺れちゃうくらいのものだかラ。ま、致死毒だとしてもこの結界の中じゃ死にはしないけド」
え、なにこのニンギョ怖い。しかも笑顔なのが余計に怖い。
リーメイって、こんな戦い方をするんだ……普段優しい人が怒ったら怖い理論。リーメイと喧嘩せんとこ。
「毒なんて、どうやって……」
「水を操れるなら毒を生成するなんて簡単なのだヨ」
そうなの!?
「っ……」
「オ」
身体が痺れる毒。それを吸収したヨルだけど、その場でよろよろと立ち上がる。
胸を押さえたままではあるし、息も荒いけど……二本の足で、ちゃんと立っている。
「なら……完全に、動けなくなる前に……せめて……!」
そう言って、ヨルはリーメイに向かって走り出す。もちろん本体へだ。
毒によって動けなくなってしまうなら、完全にそうなってしまう前にせめてリーメイを道連れに……ということなのだろう。毒が全身へ回ってしまう前に、ケリをつける必要がある。
他の分身にも毒が仕込まれているかもしれない以上、魔力吸収は使えない。
水分身を避けながら、ヨルはリーメイへと迫り……
助走を加えた跳び蹴りを、リーメイの顔面めがけて放った。
「あいつ女の子の顔を……」
バシャァン!
「えぇ!?」
「えっ!」
ヨルの蹴りは見事にリーメイの顔にぶち当たり……そして、リーメイの顔が破裂した。
思いもよらない事態に、目を見開く。り、リーメイの顔が……!?
驚いたのは当然ヨルもで、首から上がなくなったリーメイを見つめてあわあわしていた。
「わわ、悪い!? ごめん!? 俺そんなつもりじゃ……」
「ここだよこコー」
青ざめ、自分がリーメイの顔を吹き飛ばしてしまった事実に謝罪するヨルだけど、リーメイの声が聞こえた。
それは首から上がなくなったリーメイから……ではない。ヨルの背後に立つ分身からだ。
振り向くと、水分身はにこにこと笑って手を振っていた。
そして……水が、色づいていく。顔から胸、そして下半身へと。
「なっ……」
「こっちでしター」
水の分身が……リーメイになった!?
それに、顔がなくなった水分身の方も、再生している。
「いや、じゃあこれ分身!? でも、色が……」
「んーん、それはさっきまでリー本人だったヨ。さっきまでネ」
再生している水分身は、さっきまでリーメイ本人だったと言う。それはいったい、どういうことか。
そして、さっきまで水分身だったものが、今はリーメイになっている?
それってつまり……水分身とリーメイ本体が、入れ替わった?
「ふふン。水分身とリーの位置を入れ替えル……これが、水分身の力だヨ!」
得意げに話すリーメイ。分身との位置を入れ替えるなんて、普通の分身魔法じゃできないことだ。
そもそも分身魔法は、どっちが本体でどっちが分身で……という認識はあまりないけど。
視界を共有する、といった力もないように見える。
「く、くそっ……」
位置が変わる。だから攻撃が通らなかったことに、ヨルは再びリーメイへと攻撃を繰り出す。
腹部に拳を繰り出すが、その場所は水となって弾け飛ぶ。
そして、別の分身はとリーメイは移動する。
「こっちこっチー」
「っ、はぁ、はぁ……」
リーメイと分身による翻弄……私が知ってる分身魔法のやり方とはまったく違った方法で、リーメイはヨルを弄んでいる。
マヒルちゃんが手助けに入ろうにも、水のバリアで誰も近寄らせないようにしている。
ヨルの攻撃は、ことごとくリーメイには通用せず……
「く……」
ついにヨルは膝を折り、その場に倒れた。
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