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第十四章 他学年試合編
1083話 人数差
しおりを挟む「わ……」
思わず、声が出てしまった。その結末は、あまりにも予想外なものだったから。
ヨルは魔力と一緒に毒を吸収してしまい、その毒にやられてしまう前にせめてリーメイだけでも倒そうとした。
でもリーメイの水魔法に翻弄され……動き回ったことで、身体の中の毒の回りが早くなったんだ。
いくら頑丈な身体を持っていても、体内の毒はどうしようもない。その力に、ついに毒が回りきったヨルは破れた。
これが、リーメイの力……
「う、うぅ……」
だけど、ヨルはまだ気を失ってはいない。
そうだ……あの毒は麻痺毒だ、ってリーメイは言っていたな。
ってことは、動けなくなるだけでまだヨルが倒されたわけではない。
とはいっても……この状態で動けなくなることは、負けるに等しいことで。
「ぅぐ……」
そのままヨルは、リーメイに持ち上げられてしまう。
片手で男の子の首元を掴み、そのまま持ち上げている……とんでもない力だ。
そして、ニコニコの笑顔を浮かべたまま……逆の拳に、水が纏っていく。それはまるで、水のグローブ……
「ま、まさかこんな……」
「ごめーんネ」
不覚……と言うように表情を歪めるヨル。その腹部に、リーメイの拳が思い切り突き刺さった。
拳がぶつけられた衝撃で、ヨルはそのまま後方へ吹っ飛んでいく。水のバリアも突っ切り、なんの障害物もなく……やがて結界へとぶち当たる。
そして、ヨルは戦闘不能扱いとなり、結界から弾き出された。
リーメイ怖え……
「お、おにぃ……」
「ぁ……う、嘘だろ、ヨルが……」
その光景に、クラスメイトたちは動揺しているようだ。
それはそうだろう。ただでさえ、さっきの水面電流で多数の戦闘不能者が出た。人数が減っている中で、【成績上位者】であるヨルの力はなににも代えがたいものだ。
そのヨルが、敗れた……それは、クラス全体の士気に影響する。あんなんでも、実力者には違いない。
それも、ヨルを倒したのは同じ【成績上位者】のナタリアちゃんではないのだ。
魔導大会では、ゴルさんとも渡り合ったってのに。魔力吸収の弱点を突かれたんだ。
「これは、決まりだな」
そう言って笑うシルフィ先輩に、私も似た気持ちを抱いていた。
人数の差が必ずしも戦力の差に繋がるわけでもないけど、やっぱり人数差は大きい。
クラスメイトの差もだけど、コロニアちゃんもいるのが大きい。彼女のゴーレムによっては、差がさらに広がることになる。
魔術は普通なら一発、二発が限度。だけどゴーレムは特殊で、大きさによって召喚できる要素も変わる。人の大きさほどなら、また複数召喚なんてこともできるかも。
せめてコロニアちゃんがルリーちゃん側だったら、話は違ったかもしれないけど。
「……ルリーちゃん」
残っているのは、ルリーちゃん、タラちゃん、キルス・アンテンちゃん、レーレちゃん……そして、マヒルちゃん。
もちろん、勝負は諦めなければ、最後までわからないけど。
ルリーちゃんは魔術を封じられている形になり、他に目立ったものがあるといえば反射を持つレーレちゃん。
そして……使い魔の、マヒルちゃん。
マヒルちゃんは、相手の攻撃を予測するような動きを見せていた。なにかまだ、隠された力があるのかもしれないけど……
「さて……そろそろ幕を閉じようじゃないか」
杖を構えるナタリアちゃんは、不敵に笑った。
ルリーちゃんたちは、リーメイの水バリアで一箇所に誘導され……集められてしまっていた。
残る人たちが一箇所に固まり、やることと言えば……一つしかない。
「今は眠りし創生の炎よ……」
そう、魔術の詠唱だ。残ったメンバーで魔術を撃てる人はいないだろう。
ノマちゃんみたいに、魔法で魔術に対抗するなんて芸当ができれば別だけど……みんなの表情は、それができると言ってはいない。
「万物を無に還す穢れなき炎となりて……」
せめてナタリアちゃんの魔術発動を妨害しようにも、攻撃は水バリアに弾かれる。
そうじゃなくても、ナタリアちゃんに攻撃が届く前に妨害に遭い、撃ち落とされてしまうだろう。
……けれど、ルリーちゃんは諦めてはいなかった。
「はっ!」
魔力弾を、水バリアの一点に集中して放つ。
ルリーちゃんは魔法の早撃ちが得意だ。入学試験でも見せた技は、健在。
一点集中の攻撃は、水バリアを一部だけ破壊する。ほんのわずかにできた隙間、そこに飛び込む人影があった。
「やぁああ!」
キルス・アンテンちゃん。木刀に魔力強化をして、さらには自分にも身体強化の魔法をかけている。
勇ましい声を上げて、ナタリアちゃんへと一直線に向かう。
当然、それを妨害する者が現れる。けれど……
「えいっ、やぁ!」
その程度は簡単に蹴散らせるのか、彼女は次々となぎ倒していく。
その木刀がついにナタリアちゃんに届く……そう思ったその時だ。
「たぁ!」
「!」
横から現れたコロニアちゃんが、木刀を弾き飛ばす。
木刀は、くるくると回り上空を飛んでいく……上空に昇った太陽の光がそれを照らす。その瞬間、上空に飛び出した影が木刀を掴んだ。
その人物は、木刀を握りしめ……落下しながらも、木刀を振り上げていた。
それは、マヒルちゃんだった。
「全てを焼き尽くし、喰らい尽くせ!
焔龍豪炎!!!」
時すでに遅く、か……ついにナタリアちゃんの魔術が、放たれた。
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