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第十四章 他学年試合編
1084話 人と使い魔の境界
しおりを挟む「ちょちょちょちょー! やばいっしょー!」
放たれた魔術、火属性の圧倒的力にタラちゃんが焦った様子を見せる。
いつもおおざっぱな性格を見ていたけど、あんな姿初めて見たな……
なんて言っている場合ではなく、残ったルリーちゃんたちに果たして対抗手段はあるのか。
「……! アンテンさん、その木刀借りてもいいですか!」
「えぇ!」
すると同じく焦った様子で、マヒルちゃんが叫ぶ。
いきなり話を振られてキルス・アンテンちゃんは唖然としているけど、返事も待たずにマヒルちゃんは木刀をひったくる。
時間がない。そう言うかのように。
そして、その場で構えて……
「すぅ……むん!」
軽く息を吐き、気合いを入れる。
すると、木刀には凄まじいほどの魔力が送られるではないか。
それも、驚くべき量が。魔力強化には違いないけど、なんだあの魔力量”!?
そしてマヒルちゃんは、木刀を振りかぶり……
「やぁああああ!」
思い切り、振り抜いた。
すると、木刀から放たれるのは強力な魔力の斬撃。魔力を飛ぶ斬撃として放ったのだ。
それは迫る魔術と正面から衝突……はしなかった。
少し角度を変え、まるで魔術の軌道をずらすような絶妙な位置に斬撃を叩きこんだのだ。
しばしの拮抗の後、魔術は上空へと軌道を変えていった。
「……これは、驚いたな」
狙いがずれた魔術が飛んでいく様子に、ナタリアちゃんは呆気にとられた表情を浮かべた。
魔術を破られたわけではない。でも、防がれた。それは、誰もが目を奪われる光景だった。
それから、その場でふらつく。
「! ナタールちゃん」
その身体を、近くにいたコロニアちゃんが支える。
コロニアちゃんもまた、独特的な呼び方をしてくる。私をエフィーだったり、ノマ・エーテンはノーテンだったり。
ナタリアちゃんは……ナタリア・カルメンタールだから、ナタールか。
「ん、大丈夫だよ。もう一発くらいならイケるよ」
……ナタリアちゃん、魔術を二発は撃てるのか。やっぱりすごいや。
確かに、支えてもらってはいるけど、自分で立てているもんな。気も失っていないし。
それにしても、今の魔術を防ぐなんて……
「マヒルくん……凄まじい魔力だったね」
「ま、私だけの魔力ってわけじゃないんですけどね」
木刀を握り締めたまま、マヒルちゃんは言う。
私だけの魔力じゃ……っていったいどういう意味……あっ、そっか。
マヒルちゃんはヨルの使い魔扱い。だから、ヨルの、魔力を自分と共有できるんだ。
術者と使い魔は魔力や視界を共有できるもんね。一般的な使い魔との関係とどこまで当てはめていいのかわからないけど。
なるほど、ヨルは退場しても彼の使い魔である以上、彼の魔力は使える。それを木刀に込めたのか。
……でも、普通は術者が退場したら使い魔も消えちゃうよな。なのに、マヒルちゃんはそのまま残ってる。
「やっぱり、人と使い魔の境界……ってことなのかな」
前例のない使い魔契約。フィルちゃんと魔物とはまた違った、人間が使い魔として召喚されたパターン。
まだまだ、わからないことは多い。
「なるほどね、彼の魔力か……確かに厄介だ。けれど、魔術の軌道をそらしたのはキミの力だ。
いくら力があっても、角度やタイミングを誤ればあのような芸当はできない」
「ど、どうもです」
確かになぁ。私ならとりあえず力押しでやったれーって感じだもん。
「ただ……それだけで形勢を覆せるかな?」
マヒルちゃんがヨルの魔力を使えても、それは一時しのぎだ。人数差は覆らない。
それだけではない。今のうちにコロニアちゃんはゴーレムを新たに召喚。その数十体。
さらに広がる数の差。
「あの、これ返します」
「あ、いやでも……いいの?」
「はい」
それに、マヒルちゃんは木刀をキルス・アンテンちゃんに返してしまった。
武器を手放して大丈夫か、とは思うけど。
「でも、私の魔力よりあなたのを使った方が……」
「……魔力の量は、確かにそうですけど。私剣の使い方とか全然なので、アンテンさんが使った方が全然いいです」
……さっきみたいに、魔術をそらすために強大な魔力が必要ならマヒルちゃんが使い続けた方がいい。
でも、マヒルちゃんが勝っているのは魔力のみ……剣の腕は、キルス・アンテンちゃんの方が上だ。
この状況なら、それぞれ得意な得物で勝負した方がいい。それに、マヒルちゃんが木刀使い続けたらそれこそキルス・アンテンちゃんに武器がなくなっちゃうし。
「とはいえ……どうしようかしら」
「……ゴーレムなら、なんとかなります」
すると、ルリーちゃんが杖を構えた。先端に魔力を込め、小さな魔力弾を放つ。
それはみんなの不意をついたからか、誰の目にも止まることなく……一体のゴーレムの胸を撃ち抜いた。
そして、ゴーレムは消滅する。核を撃ち抜いたのだ。
「お、おぉ、すごい。どうやったの?」
「えっ、た、たまたま? 私、勘がいいというか……」
「なるほど」
それは、ルリーちゃんが"魔眼"でゴーレムの核を見抜き、撃ち抜いたものだ。
事情を知らないマヒルちゃんはすごいすごいとはしゃぎ、事情を知るナタリアちゃんは意味深に笑う。
「とにかく、ゴーレムは私が……」
「彼女にゴーレムは通用しない。ボクが相手をする!」
そして……ルリーちゃんの相手をすると、ナタリアちゃんが前に出た。
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