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第十四章 他学年試合編
1100話 賭けに出る
しおりを挟む「……っ!」
私の放った魔術……それは複製の私とその分身を飲み込むはずだった。
だけど、結果は……向こうも、魔術を放ってきた。それも、二人同時に。
相手は私だ。その考えくらい想像はできた。その上で、試してみたいと思ったんだけど……やっぱり、厳しいみたいだ。
「ぬぐっ……うぅううう!」
衝突した魔術は拮抗する……それが理想だった。でも、現実はそうはならない。
なぜなら、相手が放った魔術は二つだから。
分身魔法は、数が増えればその分術者の力を下げてしまうリスクのある魔法。二人なら二分の一。
そのため、複製の私の力は半分だ。普通に考えれば。
でも……それは魔力や体力、魔法の話。自分の魔力を使う魔法は威力が半減するけど、大気の魔力を使う魔術は威力は半減しない。
だから単純に、二人の魔術が私の魔術を圧倒している。数の差が、明確に勝敗を分ける。
「ぐぬ……ぅう!」
なんとか力を入れるけど、それでも押されていることに変わりはない。というか、少しでも止められているのがすごい。
けどこのままじゃ、二つの魔術に飲み込まれる。そんなことになったら……
「がはっ!」
「!?」
その時、私の耳に届いたのは……誰かの苦しそうな声。
ほんの少しだけ、意識を声の方向に向ける。そこには、複製の魔法を使った四本腕の先輩が、吐血している姿があった。
……この魔法には、それなりのリスクがあると思っていた。分身魔法を使った上での二重詠唱なんて、負担が軽いわけがない。
「レビエン、もうやめろ! そのままじゃお前潰れちまうぞ!」
「……こんなの、たいしたことじゃ……」
……四本腕の先輩……ううん、レビエンと呼ばれた先輩は、きっと自分の役目を果たそうとしているんだろう。
私を数で押しきれなかった以上、私と同じ力を持つ複製を作り、私にぶつける。それはとても合理的な方法だろう。
でも……そのために、あんなに無理を強いることになるなんて。
さっきまでは、先輩の限界が来て複製魔法が切れてしまうのはつまらない、と思っていた。
でも今は、ただ単純に……早く先輩を楽にしてあげたい、という気持ちが強くなっていた。
そのために……
「……ふぅ」
私は、魔術を切った。私が放った魔術が力を失われたことで、少なからず拮抗していた相手の魔術は……一直線に、私へと向かってくる。
さっき魔術を受けた身で、新たに二つも魔術を受けるなんて。そんなの、耐えられる保証はない。
今少しでも、拮抗していた魔術で……多少なり力が削れていればいい。その程度しか力は減っていないだろう。
それがわかった上で……私は、相手の魔術をまともにくらった。
「エランちゃん!」
……誰かの声が聞こえた。切羽詰まった、声。そりゃそうだ、あんな状況じゃまず間違いなく戦闘不能になる。
いくら全身を魔力強化で固めていても、だ。
でも、どうしてだろう。私には確信があった。私はまだ、倒れはしないと。私には確信があった……この魔術が、私の力を呼び覚ますのだと。
「……きひひっ」
気分が高揚する。身体が熱くなる。魔力の昂りを感じる。
これは魔導大会の時にも感じていた、あの気持ちだ。どうしようもなく気持ちが良くなって、魔力が溢れ出てくる。
自分の髪に触れる。いつもと同じ、サラサラで気持ちいい髪。
自分じゃ見られないけど……多分、今私の髪は、白くなっている。
「うぉりゃあああい!」
私は魔術の衝突によって起こった爆煙の中から飛び、上空から落下中の複製の私たちの前へ。
そして、自分の渾身の魔力を込めた拳を、それにおみまいする。
その結果、魔力の塊であるそれは分身共々、砕け散った。
「なっ……!?」
「これが私の力をコピーしたものだって言うならさ……今の私が、コピーされた私より強くなっちゃえば、なんの問題もないよね?」
そう……これはある種の賭けだった。
相手が私の力をまるっと複製したものなら、簡単には勝負はつかない。だから考えたのだ。
複製された私。それよりも、私が強くなればいいのだと。
髪白現象は、私の力が飛躍的に上昇している。複製の私も同じ力を持っているのかわからないけど、それなら力が上る前に倒すだけのこと。
ネックは、どうやってこの状態になれるかだった。そこで私は思い出した……魔導大会の時、私は周りの出場者から集中攻撃を受けた。
もし、魔法を……いや魔力をたくさん身に浴びたことで、私の中のなんらかの力が呼び覚まされたのなら。
「結果は、成功だったわけだ」
ま、読みが外れていたら……あの魔術の奔流に飲まれ、さすがに戦闘不能になっていただろうけど。
「ぅ……やっぱり、めちゃくちゃな……子……」
着地した私を見ていたレビエン先輩が、フラフラとよろつき……その場に、倒れた。そして戦闘不能扱いとなり、結界の外へ弾かれる。
……先輩こそ、めちゃくちゃな魔法使っちゃって。一瞬で勝負をつけるためには賭けに出るしかなかった。
でも、そうでなかったら……きっと先輩は、限界を超えてもあの魔法を続けただろう。
「やっぱり、一筋縄じゃいかないってことだよね」
相手も、この学園で私たちより多く学んできたんだ。負けられない気持ちは、きっと大きい。
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