1,119 / 1,198
第十四章 他学年試合編
1106話 雷撃を操る鬼
しおりを挟むみんなで勝利を……それが、ナタリアちゃんたちが立てた作戦、みたいなものだ。
クラス対抗の試合で、それは当然のようにも思えるけど……特にこの試合では、意味が深いのだ。
強大な相手に、一丸となって立ち向かう。一人一人が全力を出すことで、少しでも相手を消耗させる。
その証拠に、コロニアちゃんの魔術のおかげでゴルさんは消耗している。
もちろん、ゴルさんにかかりきりになっては他の三年生が手つかずになる。ゴルさんに大人数を当てられない理由の一つだ。
ただ、三年生も手強いけど……ナタリアちゃんやリーメイだって負けてはいない。
「んんんんん!」
ゴルさんの前に立ちはだかるのは、鬼族の力を解放したサリアちゃん。
バリバリ……と音を残して移動する。その速度はまさに雷で、いくら身体強化しても追いつくことは不可能だ。
雷を操り、雷の速さを持って移動できる。それが鬼族の特徴。
「……!」
サリアちゃんの姿が見えた時には、すでにゴルさんに攻撃を仕掛けている。
死角となる背後からの蹴り。それをゴルさんは、見えていないはずなのにその場で屈んで避ける。
どうしてどこから攻撃が来ることがわかったのか……それ以上にその反応速度に驚かされる。
今のサリアちゃんの行動は、見てから反応するんじゃ間に合わない。それだけ速いのだ……反応したときにはすでに、攻撃を食らっている。
それを防ぐには、見る前に反応する必要がある。そうすることで、速すぎるサリアちゃんとのラグを縮めることができるのだ。
「んむぅ!」
蹴りを避けられたサリアちゃんは、そのまま空中を軽く蹴る。バリッ……と少し雷が迸ったのが見える。雷を足場に、空中ジャンプしたのだ。
そのまま縦方向に回転し、踵落としを突き落とす。屈んだゴルさんには避けられない攻撃だ。
それも、その動きは見えていない……
ドゴッ……!
「ぐっ……!」
予想通りにサリアちゃんの踵はゴルさんの背中に直撃し、メリメリ……とめり込んでいく。
よほどの威力なのか、ゴルさんから苦悶の声が漏れる。
ゴルさんに、一発加えた……その驚きは、だけど次のゴルさんの行動にかき消される。
「……!?」
踵落としを受けた状態で、ゴルさんは手を後ろへと回す。そして自分の背中にあるサリアちゃんの足首を、手探りで掴んだのだ。
「確かに速いが……こうすれば、捉えられる……!」
そのままゴルさんは力任せにサリアちゃんの身体を振り回し、背負い投げをするような形で地面へと叩きつける。
背中から地面に打ち付けられ、サリアちゃんは息を吐き出す。
ただ、サリアちゃんもやられてばかりではない。未だ掴まれたままの足首……そこに電流を流す。掴んでいる手を伝い、ゴルさんにも雷が流れた。
「ぐっ……?」
その痺れに、咄嗟にゴルさんは手を離してしまう。
その隙を見計らい、サリアちゃんはバリバリッ……と移動。一旦ゴルさんと距離を取る。
……と思いきや、ゴルさんの懐へと迫っていた。
「このまま、攻められてもらうよ!」
「そう来ると思った」
「っ……!?」
鋭い拳……いや手刀とも呼べるそれがゴルさんの顔へと迫る中、ゴルさんは冷静に言葉を漏らす。
そして身体を右へと傾けると、手刀をかわす。ただ、少し顔に掠ったみたいだ。
そうしてがら空きになった身体へと、ゴルさんは魔力弾をぶつける。
「ぐぁっ……!」
「鬼族の力は確かに脅威だが、時間制限付き……つまり、一刻も早く勝負を決めたいと言うことだ。急いている相手なら、次にどういう行動を取るのか予想はつきやすい」
魔力弾をくらったことで上空へと浮き上がったサリアちゃんへ、ゴルさんは淡々と告げた。
時間制限付き……だからこそ、急いで勝負を決めようとする。だから、行動を読みやすい。
言うのは簡単だけど、実際にできるのかと言われれば答えはいいえだ。ゴルさんだからこそなんだろうな。
それこそ、経験値の差ってやつ……
「……っ、さすがの頭の回転、ってわけかな」
バリバリ……とサリアちゃんの身体に雷が迸る。それがだんだん右手に集まっていき、なにかが形作られる。
鋭く光るそれは、雷の剣だ。
雷を操るって、あんなこともできるのか。
「確かに、時間が来てしまうより前に決められれば、とは思ってるよ。それがわかってるなら……こっちも、大惜しみはなしだ」
吹き飛ぶサリアちゃんはくるくると体勢を整え、空中に着地。空中に雷を走らせ、それを足場にしているのだ。
そのまま、ぐぐぐ……と膝を折り力を溜める。まるでバネのように伸びた膝は爆発的な力となり、その場から地上にいるゴルさんへと飛び出した。
バリバリと恐ろしいほどの速度は、たとえ一直線上の動きとわかっていても防ぎきれるものじゃない。
……普通の人なら。
「……!」
けれどゴルさんは、迎え撃つ体勢だ。
そのまま、雷の弾丸が迫るのを前にゴルさんはふっと軽く息を吐き、反撃を……
バリッ
「!」
けれど、弾丸は寸前に軌道を変えた。右へ、いや左へ。
雷が走った跡……とでも言うべきだろうか、残された雷道が、サリアちゃんの通った道を教えてくれる。
空中を蹴り、雷の速さで縦横無尽に駆け回る。バリバリと輝くその姿は、まるであちこちに咲く火の花だ。
これは、相手を撹乱し狙いをつけさせないために動き回っている……だけではない。
「っ、ぐぅ!」
迸る雷が、ゴルさんを狙う。雷の剣がその身体を切り裂き、すんでで避けたゴルさんはけれど腕に走る雷撃に眉を寄せる。
動き回るサリアちゃんは、あちこちからゴルさんへと攻撃を仕掛けていく。直撃こそしないが、掠ってもかなりの威力。
狙いをつけさせず、徐々にゴルさんの体力を削っていく。それがサリアちゃんの狙いか。
11
あなたにおすすめの小説
ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい
空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。
孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。
竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。
火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜?
いやいや、ないでしょ……。
【お知らせ】2018/2/27 完結しました。
◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
テーラーボーイ 神様からもらった裁縫ギフト
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はアレク
両親は村を守る為に死んでしまった
一人になった僕は幼馴染のシーナの家に引き取られて今に至る
シーナの両親はとてもいい人で強かったんだ。僕の両親と一緒に村を守ってくれたらしい
すくすくと育った僕とシーナは成人、15歳になり、神様からギフトをもらうこととなった。
神様、フェイブルファイア様は僕の両親のした事に感謝していて、僕にだけ特別なギフトを用意してくれたんだってさ。
そのギフトが裁縫ギフト、色々な職業の良い所を服や装飾品につけられるんだってさ。何だか楽しそう。
追放された公爵令嬢はモフモフ精霊と契約し、山でスローライフを満喫しようとするが、追放の真相を知り復讐を開始する
もぐすけ
恋愛
リッチモンド公爵家で発生した火災により、当主夫妻が焼死した。家督の第一継承者である長女のグレースは、失意のなか、リチャードという調査官にはめられ、火事の原因を作り出したことにされてしまった。その結果、家督を叔母に奪われ、王子との婚約も破棄され、山に追放になってしまう。
だが、山に行く前に教会で16歳の精霊儀式を行ったところ、最強の妖精がグレースに降下し、グレースの運命は上向いて行く
転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜
みおな
ファンタジー
私の名前は、瀬尾あかり。
37歳、日本人。性別、女。職業は一般事務員。容姿は10人並み。趣味は、物語を書くこと。
そう!私は、今流行りのラノベをスマホで書くことを趣味にしている、ごくごく普通のOLである。
今日も、いつも通りに仕事を終え、いつも通りに帰りにスーパーで惣菜を買って、いつも通りに1人で食事をする予定だった。
それなのに、どうして私は道路に倒れているんだろう?後ろからぶつかってきた男に刺されたと気付いたのは、もう意識がなくなる寸前だった。
そして、目覚めた時ー
無能と蔑まれ敵国に送られた私、故郷の料理を振る舞ったら『食の聖女』と呼ばれ皇帝陛下に溺愛されています~今さら返せと言われても、もう遅いです!
夏見ナイ
恋愛
リンドブルム王国の第二王女アリアは、魔力を持たない『無能』として家族に虐げられ、厄介払いとして敵国ガルディナ帝国へ人質に送られる。死を覚悟した彼女だが、あまりに不味い帝国の食事に耐えかね、前世の記憶を頼りに自ら厨房に立つことを決意する。
彼女が作った温かい家庭料理は、偶然離宮を訪れた『氷の皇帝』レオンハルトの孤独な心を癒していく。やがてその味は堅物騎士団長や宰相をも虜にし、食べた者を癒す奇跡から『食の聖女』と讃えられるように。
価値を知った故郷が「返せ」と言ってきたが、もう遅い!
これは、料理で運命を切り開き、最強皇帝から世界一甘く溺愛される、美味しい逆転シンデレラストーリー。
美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ
さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。
絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。
荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。
優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。
華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。
勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました
久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。
魔法が使えるようになった人類。
侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。
カクヨム公開中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる