史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第十四章 他学年試合編

1107話 消化不良

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 バリバリッ……と鋭い音が響く。だけど、音が聞こえたそこにはすでにサリアちゃんの姿はない。
 あるのは、彼女が通ったと思われる跡……それが、雷の道となって迸っているのを確認できるくらいだ。

 空中を飛び回り、雷を足場にすることで縦横無尽に動き回る。空中で踏み込む際、ひときわバリッ……と光る様子は、まるで火の花が咲いているよう。
 けれど、サリアちゃんの目的はただ私たちにきれいな光景を見せようってものじゃない。

 空中を移動し、狙いをつけさせないようにして……その間に、ゴルさんを狙っているのだ。

「ぐっ……っ!」

 さすがのゴルさんも、どこから来るともわからない攻撃を受け切ることはできない。それも、一方向ではなく右から左から、前から後ろから。
 あらゆる報告に注意を向けていないといけない。

 それでも、致命傷だけは避けるのはさすがと言うべきだろうな。

「この……!」

 攻撃を受ける……受けた場所が相手がいる場所なのだから、攻撃された直後そこに相手がいる。
 だけど、サリアちゃんが速すぎるため、ゴルさんの反撃も間に合わない。

 致命傷にはならないけど、ゆっくりと……だけど確実にダメージを刻んでいっている。

 だけど……

「……っ、う……!」

 バチッ……と一瞬、サリアちゃんがよろけたのがわかった。
 それは、ほんの一瞬のこと。でも、サリアちゃんの攻撃に全神経を張り巡らせていたゴルさんにとっては、充分な隙だった。

 その目が鋭く細められ……顔面めがけて振るわれた拳を、受け止めた。

「!」

「やはり……体力が持たないようだな」

 時間制限がある以上、サリアちゃんは速攻で決める必要があった。でも、ゴルさんを仕留めるという考えは……甘かった。
 見込みが甘く、結果としてサリアちゃんの体力が先に限界が来てしまったのか。

 受け止めた手……だけど、それは手を伝ってゴルさんの身体に雷が流れるということにもなる。

「ぐっ……ぅ!」

 うめき声を漏らす……だけどゴルさんは、手を離さない。
 ここで離してしまえば、また取り逃してしまうとわかっているからだ。

 そして……いつの間にかサリアちゃんの背後にいたもう一人のゴルさんが、彼女を羽交い締めにした。
 それは、分身魔法によるものだ。

「くっ……けど、こうして触れている間は、あなたにも電流が……」

「あぁ、構わんさ」

 バリバリ……と分身の身体に電流が走る。それは苦しいはずだ……だけどゴルさんは、不敵な笑みを浮かべてみせる。
 そして、魔導の杖を構える。

「太陽の如き灼熱を持ちて、天地をも焼き尽くす業火を纏え」

 それは、魔術詠唱だ。
 目の前での詠唱に、普段なにを考えているのかわからないサリアちゃんの表情がぎょっとしたものに変わる。

 なんとか離れようともがく。電流を走らせるだけでなく、雷の剣を背後のゴルさんの足に刺してみたり。
 それでも、拘束は外れない。

狂焔きょうえん乱舞に舞い焦がせ!
 狂炎太陽黒ベルセルクコア!!!」

「まっ……」

 杖を向け、その先端がカッと光る。魔力の奔流が、魔術となって昇華される。

 放たれた魔術は、目の前にいたサリアちゃんを爆炎の中に飲み込んでいく。
 ……そう、分身ごと。

「……っ!」

 分身の受けたダメージは、当然共有される。視界もダメージも共有されるのだ。
 それゆえに、今のゴルさんの行為は……自分で自分に魔術をぶつけた、ということだ。

 もちろん、サリアちゃんを背後から拘束している以上直撃は免れている。
 それでも、魔術の強大な力は容赦なく襲っていく。

 自分の身を犠牲にしてでも……!

「あっ……か、ぁ……!」

「サリア!」

 そして、その強力な魔術を間近で受けてしまったサリアちゃん。いくら鬼族の力で強固な身体になっているとはいえ、至近距離からの魔術……
 それも、すでに疲労を見せていたんだ。防御力も落ちていて不思議じゃない。

 クレアちゃんの心配する声が漏れる中、爆炎から飛び出してきたのはサリアちゃん一人。分身はすでに消えている。
 ドサッ……と倒れたサリアちゃんには、もうバリバリと雷は流れていなかった。

 そして程なく、戦闘不能扱いとなり結界の外へ弾き出された。

「っ、はぁ……!」

 対するゴルさんは、サリアちゃんの猛攻に加えて自分の魔術を自分でくらった影響が出ているのだろう。
 さすがに疲れを見せる。あんな顔、初めて見た。

「……次は、こうはいかん」

 その表情は、どこかやりきれない感じを含んでいた。

 なんとなく、気持ちがわかるような気がする。せっかく戦うことができた相手との決着は、相手の消耗……時間制限が迫ったことによるもの。
 つまり、自分の実力で相手を倒したわけじゃない。

 私はさっき、分身の私と戦ったけど、あの時は賭けに出て勝つことができた。そうでなければ、耐えて耐えて術者の限界が来るまで耐えることになっていた。
 そんな結末、消化不良だ。

「……ふぅ」

 とはいえ……文字通り身を削ったことで、今の戦いはゴルさんの勝ち。試合としては、結果の過程なんてどうでもいい。

 ただ……コロニアちゃんがゴルさんの魔力を削り、サリアちゃんがゴルさんの体力を削る。
 みんなで徐々に追い詰めていく戦法は、確かな効果を発揮しているように見える。
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