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第十四章 他学年試合編
1109話 彼女は挑む
しおりを挟む水の魔法により作り出された、分身リーメイ。その大きさは小さく、リーメイをそのまま幼子の大きさまで縮めたみたいなものだ。
それらは放たれる水弾が変形したものだ。つまり、数が変わらないどころか増えていく。
対処しようとする三年生だけど、その力は多分リーメイ本体と変わらない。
おまけに……
「おらぁ! ……って、なんじゃこりゃ!」
ミニリーメイへと拳を食らわせることができても、それは水のように弾け……すぐに再生してしまう。
のように、というかそれは水なんだから、当然と言えば当然なんだけど。打撃が通用するわけもない。
そしてそれらは、当然リリアーナ先輩やゴルさんへも迫っていく。
「! ハク!」
「しゃあああ!」
リリアーナ先輩は、使い魔の白蛇を駆使して一人一人水分身を対処していく。
白蛇を使い水分身を牽制して、自分は着実に一人一人を倒していく。
打撃は通用しなくても、魔法なら別だ。水に通用するようなものをイメージして、食らわせればいい。
たとえば……電撃とか。
だけど、リーメイの水分身にだけ意識を向けるわけにもいかない。
「うりゃあ!」
「たぁ!」
二人の女子生徒が、水分身を縦にするように迫り……身体強化した身体で迫る。
それをリリアーナ先輩は、冷静に捌く。魔導の杖を魔力強化して、まるで剣道のように二人を倒す。
たった一太刀で、二人は戦闘不能になってしまった。
「けど、キリがない……」
「構わん、俺が対処する」
「! ゴルドーラ様!」
頼りになる声、とはそういうことを言うのだろう。その声が聞こえた瞬間リリアーナ先輩はほっとした表情を浮かべた。
その横を過ぎ去るようにして、ゴルさんはリーメイへと接近して……リーメイの本体へと、鋭い蹴りを放った。
バシャアッ
顔を狙ったそれは直撃するけど、寸前に水分身と入れ替わっていたリーメイには無傷だ。
やっぱりあの水分身、大きさが違っても位置を入れ替わることが出来るのか。リーメイはすでに遠くだ。
ただ、そのおかげかリーメイを囲っていた水柱は消えていた。これで水分身が増えることはないだろう。
入れ替わった先にいた三年生の男子生徒。彼は驚きながらもリーメイに仕掛ける。
けれどリーメイは、まるで水の中にいるような優雅な動きで男子生徒の背後に回る。まあリーメイは泳げないから、水の中もなにもないんだけど。
「うりゃア!」
そして、手刀をうなじにぶつけた。
「あがっ、いってぇ!」
「あれ、リーが読んだ本には、これで気絶するって書いてあったのニ」
困惑するリーメイだったが、その後身を捻り尾ひれを男子生徒の顔に叩きつけることで、吹っ飛ばした。
なんの本を読んでいるんだあの子は……
それにしても、リーメイ……今まで思っていたより、ずっと身体能力が高い。
下半身はお魚だけど、ちゃんと動き回れているし。今みたいに、尾ひれの一撃は強烈みたいだし。
「さあ、どんどん行くヨ……」
「いや、そこまでにしてもらおうか」
しかし、そのリーメイの背後に誰かがいた。とっさにリーメイは振り向きざまに後ろに飛ぶ……
けれど、着地したらお腹を押さえていた。もしかして、今の一瞬で一発貰ったのだろうか。
その人物は、ぱっと見地味な見た目をしていた。けれど、スタイルのいい女の人……
「あれ……学園祭の時に会った人だ」
確か……風紀委員長の、ルアシア・トルコヤードって人だ。
ゴルさんたちと同じクラスだったのか。
「ルアシア」
「リリアーナ、こっちは任せて。それに、ゴルドーラさんも」
「……わかった」
それは、リーメイは自分が引き受けるというもの。それを聞いて、ゴルさんもリリアーナ先輩もあっさりと任せた。
それは、クラスメイトに対する信頼……か。
それに、今度は逆の話だ。三年生が、みんなリーメイに集中していたら……他の子の追撃を許すことになる。
「……今年の【成績上位者】ナタリア・カルメンタールか」
「ボクのことを知ってくれているんですか、光栄だなぁ」
「学園の生徒のことは一通り頭に入っている。そうでなくても、今年の一年は優秀だ……なにより、お前はエラン・フィールドの友人だ」
「……やっぱりエランくん効果すごいな」
チラッとナタリアちゃんが、こっちを見た気がした。気がしたというか、実際に見て笑って手を振っている。
め、目の前にゴルさんがいるのに……余裕だなぁ。
ただ、油断している様子はない。そりゃそうだ、相手が相手だもんね。
一方のゴルさんにも、油断なんてものは見えない。
……考えてみれば、ナタリアちゃんともかなり仲良くしてるけど、クレアちゃんやルリーちゃん、ノマちゃんと違ってその実力を間近で見るのは初めてかも?
「俺を前に、たいした肝の据わり方だ」
「いえ、内心ひやひやですよ。でも……これは決闘じゃなくて試合、ボクがやらかしても他の誰かが庇ってくれる。そう思えるから、わりと余裕は持ててますよ」
ひゅう……と風が吹く。薄い水のような色をしたナタリアちゃんの髪が、揺れた。ふぅ、と軽く息を吐いて、目を細めた。
周りでは、生徒同士の戦いが激化している。隙があれば、誰が乱入してきてもわからない。
ルリーちゃんのルームメイトで、その右目にあるのはエルフの"魔眼"。
私やヨルと同じ【成績上位者】であるナタリアちゃんが、ゴルさんに挑む。
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