1,142 / 1,198
第十四章 他学年試合編
1129話 私の悪口言ってないか?
しおりを挟むどうやら、幻影の魔法でダルマスのことをゴルさんだと誤認させられていたみたいだ。
魔導剣と杖が同じに見えていたりと、人物だけでなく持っているものまでそう見えてしまうなんて。
うぅ、私としたことが……なんてこった。
「ご、ごめんダルマス」
「……状況が状況だ、まあ仕方ないだろう」
素直に謝ると、ダルマスは許してくれたみたいだ。ダルマスったらやっさしー。
それにしても……あの土煙でゴルさんの姿が見えなくなったのは、こういう効果も狙っていたのか。
ゴルさんと対峙して、私が見逃さないというタイミングを見計らってこその魔法だった。
三年生の誰かだろうけど、いい状況判断だと思う。
「だが、気をつけろよ。またあんなことをされては敵わないからな」
「あはは……気をつけるよ」
「まったくだ、あのような手間を取らせないでくれたまエ」
……幻影が解けたのは筋肉男のおかげなんだけど、素直にあんたのおかげと言いたくない自分がいる。
とはいえ、こんな魔法があるなんて。ダルマスの姿を、ゴルさんのものへと……そのまぼろしと置き換える魔法。
それは恐ろしい力だ。実害はないけど、それ以上の被害を生む力。
私以外にも、魔法に当てられた子がいるかもしれない。注意しなければ。
「でも……姿を変えて見せるだけで、魔力の波長とかそこらへんは変わらないんだ」
そう、あくまで姿だけだ。落ち着いて集中すれば、魔力を頼りに正体を暴くことができる。
今だって……そう、落ち着いて、落ち着いて……
「! そこ!」
私はある一点に向けて、氷の槍を放つ。
するとそれは、一定の距離進んだところで壊されてしまう。その先に、ゴルさんがいたからだ。
やっぱり……これは間違いなく、ゴルさんの魔力!
「ふむ。どうせなら共倒れにでもなってくれれば、一番よかったのだがな。まさか大した損害も与えられないとは」
「残念だったね。それと……もうあんなことはさせないから!」
「ほう?」
そう、幻影魔法を使った三年生はすでに誰か目星はついている。魔力を探れば、どの魔法を誰が出したのかわかる。
だから、魔力の持ち主を見つけて……私は今、分身魔法でそいつを捕まえに行っているところだ。
つまり今ここにいる私は、力が半減している。なので……
「ちょっとだけ頼んでいいかな、ダルマス」
「まったく、仕方ない」
私の目の前に、ダルマスの背中があった。まるで私を守るみたいに、そこに立っている。
分身を全部ゴルさんにふつけるならともかく、分身を別の用途に使っておいて半分の力でゴルさんに勝てると思うほど、私は自惚れてない。
だから、事が終わるまでダルマスにはゴルさんの足止めをお願いしたい。
足止めとは言っても、相手はゴルドーラ・ラニ・ベルザ。簡単にいかないことはわかっている。
それでも……ダルマスなら、きっと……!
「先ほどは、よくも俺をあなたの姿に誤認させましたね。おかげでえらい目に遭いましたよ」
「俺が言えた言葉ではないが、アレの相手をするとは災難だったな」
「まったくです」
……おや? なんか私の悪口言ってないか? 気のせいかあーん?
剣を構えるダルマスは、出し惜しみなしと言わんばかりに自らの魔力を注ぎ込み……その剣を『魔剣』へと昇華させる。
対するゴルさんは、特になにをするわけでもない。その場に突っ立っている。
でも……わかる。ただ立っているだけに見えても、その気は充分に高められている。
決して、ダルマスを侮っているわけではない。むしろ……
……っと、私も自分の役目を果たすことに集中しないと。いくら気になる対戦カードだからって、じっと見とれているわけにはいかない。
「はっ!」
そう考えている間も、ダルマスはその場で一気にスタートを切る。足には魔力強化をして、ブーストをかけている。
……『魔剣』状態を維持しながら、身体にも魔力強化を纏わせる。もう完全にものにしているな。
私が知らないところで、努力に努力を重ねてきたんだろう。
「あ、いた」
どうやら、分身の方は幻影魔法をかけた人物を見つけたようだ。
二人の視界が共有されるのは慣れるまでは気持ち悪いけど、慣れてしまえばこんなに便利なものはない。
向こうは三年生だ。半分の力の私じゃ倒せるかわからない……だから向こうがまだ気づいていないうちに、魔術で一気に仕留める!
「らぁ!」
その間に、ダルマスは剣を振るい……それをゴルさんは避ける。
ただ、その動きを予想していたかのように、ダルマスは回し蹴りを放った。ゴルさんは手のひらで受け止める。
僅かに動きが止まる……それが好機だと、ダルマスは自分から後ろに飛ぶ。ゴルさんの手のひらを足台にした形だ。
そして後ろに飛びつつ、剣を振るう。炎を纏った斬撃だ。
「ほぉ、その若さでなかなかの練度だ」
そう言って笑うゴルさんは、まるでハエを払うように腕を振るった。
すると、襲いかかっていた炎が消えてしまったではないか。
その動きに、ダルマスは着地しつつ驚き……けれど、驚きに呑まれることなく構える。剣を鞘に収め……しかし、それが次の行動を示しているとわかる。
「……居火!」
昨日の試合で見せた、居合い……それをダルマスは、足元に炎のブーストを追加することで超速度を生み出す。
先ほどの魔力強化とは比べ物にならない、すり足どころか……氷の上を滑っているような動き。
その構えのまま、一気にゴルさんへと迫っていく。
11
あなたにおすすめの小説
ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい
空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。
孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。
竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。
火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜?
いやいや、ないでしょ……。
【お知らせ】2018/2/27 完結しました。
◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
テーラーボーイ 神様からもらった裁縫ギフト
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はアレク
両親は村を守る為に死んでしまった
一人になった僕は幼馴染のシーナの家に引き取られて今に至る
シーナの両親はとてもいい人で強かったんだ。僕の両親と一緒に村を守ってくれたらしい
すくすくと育った僕とシーナは成人、15歳になり、神様からギフトをもらうこととなった。
神様、フェイブルファイア様は僕の両親のした事に感謝していて、僕にだけ特別なギフトを用意してくれたんだってさ。
そのギフトが裁縫ギフト、色々な職業の良い所を服や装飾品につけられるんだってさ。何だか楽しそう。
追放された公爵令嬢はモフモフ精霊と契約し、山でスローライフを満喫しようとするが、追放の真相を知り復讐を開始する
もぐすけ
恋愛
リッチモンド公爵家で発生した火災により、当主夫妻が焼死した。家督の第一継承者である長女のグレースは、失意のなか、リチャードという調査官にはめられ、火事の原因を作り出したことにされてしまった。その結果、家督を叔母に奪われ、王子との婚約も破棄され、山に追放になってしまう。
だが、山に行く前に教会で16歳の精霊儀式を行ったところ、最強の妖精がグレースに降下し、グレースの運命は上向いて行く
転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜
みおな
ファンタジー
私の名前は、瀬尾あかり。
37歳、日本人。性別、女。職業は一般事務員。容姿は10人並み。趣味は、物語を書くこと。
そう!私は、今流行りのラノベをスマホで書くことを趣味にしている、ごくごく普通のOLである。
今日も、いつも通りに仕事を終え、いつも通りに帰りにスーパーで惣菜を買って、いつも通りに1人で食事をする予定だった。
それなのに、どうして私は道路に倒れているんだろう?後ろからぶつかってきた男に刺されたと気付いたのは、もう意識がなくなる寸前だった。
そして、目覚めた時ー
無能と蔑まれ敵国に送られた私、故郷の料理を振る舞ったら『食の聖女』と呼ばれ皇帝陛下に溺愛されています~今さら返せと言われても、もう遅いです!
夏見ナイ
恋愛
リンドブルム王国の第二王女アリアは、魔力を持たない『無能』として家族に虐げられ、厄介払いとして敵国ガルディナ帝国へ人質に送られる。死を覚悟した彼女だが、あまりに不味い帝国の食事に耐えかね、前世の記憶を頼りに自ら厨房に立つことを決意する。
彼女が作った温かい家庭料理は、偶然離宮を訪れた『氷の皇帝』レオンハルトの孤独な心を癒していく。やがてその味は堅物騎士団長や宰相をも虜にし、食べた者を癒す奇跡から『食の聖女』と讃えられるように。
価値を知った故郷が「返せ」と言ってきたが、もう遅い!
これは、料理で運命を切り開き、最強皇帝から世界一甘く溺愛される、美味しい逆転シンデレラストーリー。
美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ
さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。
絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。
荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。
優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。
華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。
勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました
久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。
魔法が使えるようになった人類。
侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。
カクヨム公開中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる