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第十五章 最高の魔導士編
1142話 なんか静かですね
しおりを挟む「なーんか久しぶりだよ、国の外に出るの」
ひょんなことから私が師匠と暮らしていた家に行くことになった。
私、ルリーちゃん、フィルちゃんは国の外に出て、目的地に向けて歩く。場所を知っているのは私だけなので、私が先導する形だ。
ま、そこまで遠い場所ってわけでもない。広い森があって、そこを抜ければすぐだ。
なんせ、私は時々師匠と一緒にベルザ国に歩いてきてたくらいの距離なんだから。
「私も……ベルザ国に入った時以来です」
「私もー!」
ルリーちゃんはベルザ国に来るために、当然外を通ってきた。そして国の中に入って以降は、出ていない。
それはフィルちゃんも同じのようだ。
もっとも……フィルちゃんはいつどのようにしてこの国に来たのかわからないけど。
そういえば、この国の人間じゃなければ外から来る場合、絶対あの門を通るはずだから……門番さんに聞けば覚えてないかな。
……ま、そのくらいの捜査はもうやってるか。
「学園に通ってたら、国の外に出ることなんてないもんねえ」
以前ルリーちゃんとは、冒険者のお仕事の手伝いでダンジョンに潜ったことはあるけど……あれは、国内にできたダンジョンだったから正確には国の中だったしなぁ。
国の外へ出るのは、ほとんどが冒険者や行商人……他国へ遠征に行く貴族などなど。
私たちのような子供が子供だけで出ることなど、そんなにないだろう。
「ねえ、もふもふ出してもいーい?」
「いいけど……人に見つかりそうになったら、引っ込めるんだよ」
「はーい」
フィルちゃんはもふもふを召喚し、その背中に乗る。
学園ではすっかり慣れた光景だけど……もふもふは使い魔とはいえ魔物。事情を知らない人に見られたら、どんな反応をされることか。
まあ、学園の外にも『魔物を使い魔としてる幼女』って話は広まったりしてるみたいだけど。
それでも、全員が全員事情を知っているわけではない。っても、こんなところに人がいればすぐにわかる。
「静かですね、なんだか新鮮です」
「だね」
こうして歩いていると、聞こえるのは風の音だけだ。
国の中だと、人々の賑わいでこうはいかない。
道中モンスターや魔物、歩いている人にも遭遇することはなく、私たちは森の中へと入る。
「懐かしいなぁ、この森でよく師匠と訓練していたものだよ」
「そうなんですか?」
「うん。モンスターや魔物相手に魔法訓練したり、魔石を集めたこともあったっけ」
「あ、あのキラキラしたのが魔石ー?」
「そうだよ。でも、もふもふに食べさせたらだめだよ」
魔石は、自然の多い場所に多く発生する。そのためこういった森の中や、原理は不明だけど出現するダンジョン内部にあることが一般的だ。
……魔石はモンスターを魔物に、魔物を魔獣に変化させる。
使い魔であるとはいえ、魔物のもふもふが魔石を口にすればどうなってしまうかわからない。
もし魔獣に変化したとして、ちゃんと使い魔契約は働いているのか……などだ。
「魔石ですか……不思議な石ですよね。中にあんなに魔力が入っているなんて」
エルフ族であるルリーちゃんは、魔力の流れを見ることができる。当然、魔力の塊である魔石もだ。
同じく魔力の流れに敏感なキリアちゃんは、その特性を活かして魔力採取に大きく貢献した。
……そうだ、人の魔力の流れも見ることができるんだよな。ってことは、ノマちゃんがノマちゃん自身の魔力なのと、魔石の魔力が混ざってるの……気づいていたりするのかな?
「ねえルリーちゃん」
「あっ」
それを確認しようと声をかけたところで、ガサッ……と草むらが動く音。同時にフィルちゃんが声を上げた。
反射的にその方向を見る。
少し離れたところには、モンスター……いや、魔物がいた。二足歩行の、毛深い獣だ。
「魔物……ですね」
「うん」
私たちはとっさに身を隠す。
この森には魔石が多い……とは先ほど考えたばかりだけど、だからこそモンスターは魔物に変化しやすいのだ。なので、師匠は度々そのへんの対処をしていた……
……でも今師匠いないはずだよな。じゃあ、誰が対処してるんだろう。
もしかして、魔物そのまま? そうなら、そのうち魔獣になっちゃうしそれはまずい。
「早々になんとかしないと」
私は魔導の杖に手を伸ばす。魔物一体だけなら、私でも充分対処できる。
そう思っていたその時……なにか、別の気配を感じた。
「たぁ!」
そして聞こえる、勇ましい声。ガサガサッと音を立て、それはこちらに……いや、魔物に向かっていく。
その人影は、木を蹴り空を舞い、迷いなく魔物に到達。そして、背後から拳を打ち込む。
気づかぬうちに魔物は攻撃を受け、さらには拳のラッシュ……まもなく、魔物は倒れていく。
そして、魔物に向けて魔法で攻撃。氷の槍で串刺しになった魔物は、跡形もなく消滅した。
すごい、魔物を一瞬で……
「誰だ」
「!」
と、その人物は声を上げた。視線はこちらを向いている……草陰に隠れているけど、バレてるのか。
別にやましいことをしているわけじゃないんだし……と、私たちは出ていくことに。
一応手を上げ、敵意がないことをアピール。
「怪しい者じゃないんだ。私たちは……」
と、無罪をアピールしつつその人物を見る。
……金髪に、緑色の瞳。白い肌、尖った耳……間違いない。エルフが、そこにいた。
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