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第十五章 最高の魔導士編
1144話 陰ながら見ていた
しおりを挟む文化祭の時、誰かが落とした私と師匠が写っている写真。
それを持っているのは、師匠しかいない。だから、文化祭には師匠が来ていると思っていたのだ。
てか、この写真……落としてあったものを私が拾ったのに、まだあったんだ。
よく見れば、あの写真と少し構図が違うような気もする。
てことは、私と師匠の写真を何枚も持っている……ってことか。
「俺は、先生と暮らしていたお前についても陰ながら見ていた」
「えぇ……なにそれ、ちょっと怖いんだけど」
「そう警戒するな。先生に頼まれてやったことだ。人間の子供、自分一人で面倒を見れるかわからないから力を貸してくれとな」
ふむ……とりあえず、言い分は筋が通っている気がする。
確かに、ずっと旅をしてきた師匠がいきなり人間の子供の面倒を見るってのも結構厳しいのかもしれない。
ただ、そうだとして疑問がある。
「私、あなたと会った記憶がないんだけど」
師匠に頼まれて陰ながら見ていたのなら、この人も一緒に私の面倒を見てくれているはずだ。
でも、私はこの人のことは知らないもんなぁ。
すると、エルフはきょとんとした表情を浮かべたまま……
「人間の子供など、一番苦手だ。だから、俺は陰から協力することを妥協しなかった」
「そう、なんだ」
単純に、苦手だったから私の前に姿を現さなかったのか。
……正直、この人が本当に師匠の知り合いなのか。まだわからない。
でも、少なくともこの人から邪気は感じない。それに、さっき魔物を倒していたりこれまでにも被害が出てないことから……この人が周囲の治安を守っているのは本当みたいだ。
「ママ、この人だあれ?」
不安げなフィルちゃんが私の服を引っ張る。
人懐こいフィルちゃんだけど、さすがにこんな場所で会った初対面の相手に不安がるなってのは難しいか。
私はフィルちゃんの頭を撫でる。
「……なぜ魔物が、人間の子供と使い魔の契約を……」
あぁ、やっぱり疑問に思うよねそこ。
「理由はわからないけど、確かにこの魔物はこの子の使い魔。だから安全だよ」
「……それに、ダークエルフも。変わった組み合わせだな」
「!」
その視線に、ルリーちゃんは一歩下がる。
エルフに恨まれていることをわかっているからこそ、怖いのだ。どんな言葉をぶつけられるか……いや、もしかしたら攻撃されるかもしれない。
だけど……エルフは、つんとしたまま特に反応を見せない。
「ダークエルフ、確かに思うところがないわけではない。が……そこまで興味もない」
「……そう、なの?」
それは、意外な答えだった。これは嘘ではないのか……でも、この場面で嘘をつく理由が見つからない。
本当に、興味なさそうな顔をしている。
信じてみてもいいのだろうか。まあ、ルリーちゃんになにかしようとしたら、私が全力で守ればいいだけのこと。
相手はエルフだけど……いざとなったら……
「で、お前たちはなぜここに居る」
エルフのきれいな緑色の瞳が、私を射抜いた。
「あ……その、久しぶりに師匠と暮らしていた家に行ってみたいかなぁって」
「ふぅん」
聞いておいて興味なさそうな反応だった。
「えぇと、まだ家残ってるのかな」
「……一応、最低限の掃除はしているが先生が出ていったままにしてある。あの人がそこに居た証だからな」
下手したら、家がなくなっている……その可能性も、考えたりはしていた。
モンスターや魔物に、無人の家を襲撃される……なんて、思いついてしまうのだ。
だけど、それはこの人のおかげでなかったらしい。家を守ってくれていたのだ。
「そっか、ありがとう。もしかしたらなくなってるかもって思ってたから……嬉しい」
「……別に、感謝されることでもない」
するとエルフは、私たちに背を向けて歩き出す。
それは、別に案内をしてくれる……ってわけでもないのだろう。だって、方向が違うんだもん。
「どこに行くの?」
「別に、目的はない。俺はただ、この一帯を警護するだけで……」
「ならさ、一緒に来ない?」
「……なに?」
せっかくこんなところで会ったのだ。ここでお別れなんて、なんだか寂しいじゃないか。
それに、師匠のことを先生と慕うほどの人だ。久しぶりに、師匠の話がしてみたい。
学園では、私がみんなに師匠の話をすることはあっても……師匠の話をできる人は少ない。
師匠の第一の弟子だって主張するウーラスト先生は、あんま時間が合わないし。ウチのクラスの教育実習生で、生徒会の副顧問なのに。
「え、エランさん……」
「あ、もちろん二人が良ければ、だけど」
「私はいいよー!」
おっとっと、私一人で決めちゃうところだった。ちゃんと二人の意見も聞かないと。
するとフィルちゃんは、ばんざいをするようにしてうなずく。不安そうだったけど、結局は受け入れてくれたみたいだ。
それで、ルリーちゃんは……
「私も、構いません。エランさんがいますから」
少し、不安そう。だけど、力強くうなずいてくれた。
学園に……というか国にエルフはウーラスト先生しかいない。その先生と、ルリーちゃんは話したことがない、多分。
なので、これがエルフときちんと対面して話す、初めての機会になるのかも。
「そゆことで、行こ!」
「俺の意見は……はぁ、別にいいが」
振り向いたエルフは、呆れたようにため息を漏らしながらも同行にうなずいたのだった。
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