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第十五章 最高の魔導士編
1152話 かき回される気持ち
しおりを挟む『もしかしてアスィー、私のこと好きなの?』
『好き……なんだと思う』
……朝だ。昨夜の出来事が忘れられなくて、頭の中で何回もリピートされて、あんまり眠れなかった。
そんな私はベッドの上で仰向けに寝転がっているわけだけど、私の上にすやすや寝ているフィルちゃんが被さっている。
普段は寮のベッドで、私とノマちゃん交互にフィルちゃんと一緒に寝る。その時は、こんな寝相ではなかったけど。
普段とは違うベッドだからかな。
「……私モテんのかなぁ」
冗談めかして言った言葉に、あんな真剣な顔で。いや、無表情と言えばそうなんだけどさ。
アスィーの顔を思い出すと、顔が熱くなる気がする。
以前は、コーロランの許嫁であるサライアちゃんのお兄さんであるヨークリア・パルシュタンにデートに誘われて王都を回ったりしたし。
「二人目、なのかぁ」
私がかわいいのはもちろんなんだけど、なのに不思議とこれまで告白みたいなことされたことなかったからなぁ。
いや、あれ告白なのかわかんないけど……
『好き……なんだと思う』
「ぬぅー!」
ゴロゴロ転がって悶えたい……ところだけど、フィルちゃんが乗っかっているからそれはできない。
これはあれかもしれないじゃん、人として好き的なさ!
でも、ずっと私と師匠を見てくれてたみたいだしなぁ。私のあの質問に狼狽えずに答えたのが、余計にわからない。
……もし、ダルマスに同じことを聞いたら、顔を真っ赤にして否定しそうだ。
「ふふっ。……ん?」
……あれ、なんで私ダルマスのことを思い浮かべたんだろう。
「ま、考えてもわかんないことは考えない。フィルちゃん、起きてー」
アスィーにヨークリアさんにダルマスと、なんか次々と浮かんでくる顔を振り払い、フィルちゃんの肩を叩く。
ピクン、と跳ねている様子は、なんとかわいらしい。
……それにしても、さっきから左腕の感覚がない。なぜかって?
「……おーい、ルリーちゃーん」
いつの間にか、左腕をがっちりとルリーちゃんに抱きしめられてしまっているからだ。
そのせいで感覚がない……いや感覚がないって、いったいいつから抱きしめられてたんだよ。しかも私意識半分ほぼ起きてたはずなんだけどな。
私に気づかれず、こうも長時間抱きしめるなんて。本来なら柔らかいルリーちゃんのお山が押し付けられその感覚をじっくり堪能するところだけど、感覚がないんじゃ堪能もくそもない。
「ルリーちゃーん、フィルちゃーん、起きてよー」
その後私が二人を起こすまで、十分くらいかかった。
……起きて顔を洗う。こういうのは、魔法でちゃっちゃと済ませてしまう。
アスィーの姿は、ない。まさかあの後また外に出たってことはないから、私たちより早く起きたのだろう。
「うぅーん、まだ眠いよぉ」
「休みだからってダラダラしてたらだめだよ、ちゃんと起きないと」
「エランさぁん、抱っこしてくださぁい」
「ルリーちゃんは幼児退行してるのかな?」
目を擦っている二人を強引に起こし、私は外に出る。
顔を洗って朝の冷たい風に当たれば、頭も冴えるでしょう。二人とも肩を震わせているけど。
さて、アスィーはと……いないや。
「あ、精霊さんおはよー。……うん、よく……は眠れなかったけど、身体はすっきりしてるかな。アスィーは?」
近くを飛んでいた精霊さんに挨拶をして、アスィーの行方を聞く。
どうやらアスィーは朝食を確保するため、森に入ったらしい。
昨日のように魔物になりかけのモンスター……がいるかどうか。そういったものや、普通のモンスター。でも、それらを狩りすぎると生態系に影響する。
だから私も、師匠と暮らしていた時にはモンスターのお肉ばかりじゃなく木の実なんかを取っていた。
アスィーはいったい、なにを取ってきてくれるのか……
「エランさん、なんだか顔が赤いですよ?」
「え?」
ふとルリーちゃんに指摘され、私は自分の顔をペタペタと触る。
けれど、自分の顔を触ったところで顔が赤いのかどうかなんて、わかるはずもない。でも、ルリーちゃんが嘘を言っているとも思えないし。
……もしかして、アスィーに会うことを意識したから、とか?
「ママあかーい」
「な、なんでもないのっ」
これは、あれだよ。あんなことをストレートに言われたから、意識しちゃっただけで。
誰だってこうなると思うな!?
「あ、あすーだ」
「!」
アスィーのことを見つけたと、フィルちゃんが指をさす。私は思わず肩を跳ねさせてしまう。
ちなみに、フィルちゃんは『アスィー』と発音しにくいらしく、『あすー』と呼んでいる。
……って、変に意識するな私! アスィーにはいろいろと聞きたいことがあるんだから。
そう、エルフのことを。
エルフについて知るなら、同じエルフに聞くのが一番だ。ただ、ウーラスト先生はなにも知らなかったみたいだけど。
ただでさえ人数が少ないのだから、ここは有効的に聞き出さないと!
「ふぅ」
そう、エルフの記憶喪失について。ラッヘ、そしてリーフェルさん。
以前の記憶を全て失ってしまったラッへ。ルリーちゃんの友達……かもしれないけどエルフではないリーフェルさん。
記憶を失うことや、種族が変わってしまうことがあるのか。そういったことが、少しでもわかればいいんだけど
「アスィー」
私は、軽く深呼吸し、フィルちゃんが指した先にいるアスィーに声をかける……
「! 起きたのか」
「……なにしてるの?」
そこには、木の根元でなぜか穴を掘っているアスィーがいた。
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