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第十五章 最高の魔導士編
1167話 前例がないんだから
しおりを挟むマーチさんを連れ、お城の外へ。スタスタと歩く。
……なんだか、周りから視線を感じるような気がするなぁ。
「やっぱりエランちゃんは人気者だねー。みんな見てるじゃん」
「んー、それもそうかもしれないんだけど……それだけじゃないよ」
黒髪黒目である私は物珍しから見られることはあるけど、今回のそれは少し違う。
それは、隣を歩くマーチさんのせいだろう。
どう見ても子供……ぶかぶかの白衣を着ている姿は頑張って大人びようとしている子供だ。
そんな小さな大人と、黒髪黒目の子供が並んで歩いているのだ。そりゃ余計に注目を集めるよね。
「そういえば、ちょうどよかった。エランちゃんに話したいことがあったんだよ」
と、マーチさんが口を開く。
「私に?」
なんだろう。
「ノマちゃんのことだよ」
「!」
その言葉に、私は意識を全集中した。
私とマーチさんで大きく接点があるのが、ノマちゃんだ。だから、話があるってのはノマちゃんのことかなとも少し思っていた。
でも、本当にノマちゃんのことだったなんて。
「ノマちゃんになにかあったの? 身体に悪いところ見つかった?」
ノマちゃんの身になにかあったのだろうか。そう思うと、気が気でない。
ノマちゃんの身体は、不安定な状態だ。魔石の魔力を流し込まれ、体内では自分の魔力と魔石の魔力とが混ざり合っている。
二つの魔力が混ざり合い、それがうまくかみ合った……みたいな感じになったので、無事生還した。
そうならなかった人たちは、みんな……
「お、落ち着いて」
私が詰め寄ったことに驚いたのか、マーチさんが私を落ち着かせようとしてくる。
それに少し冷静さを取り戻し、私は深呼吸をする。そうだ、落ち着け私。
もしもノマちゃんの身になにかあれば、マーチさんはすぐに私に連絡をくれるはずだ。そうなってないってことは、緊急性のあるものではないはずだよね。
「ふぅ。うん、ごめん。大丈夫。ノマちゃんのことで話って?」
「まったく……エランちゃんは、本当にノマちゃんのことが好きなんだね」
「当然!」
学園ではクラスこそ違うけど、寮に帰れば同じ部屋なんだ。それこそ、ほぼ毎日顔を合わせる相手なんだもん。
ノマちゃんといると楽しいし、私も元気が湧いてくる。大切な友達だ。
だからもし、ノマちゃんになにかあったらと思うと……気が気でないのだ。
「前に、ノマちゃんの髪の毛が白くなった経緯を聞いたよね」
「うん」
それは、ノマちゃんの髪の毛の色についてだ。
他学年試合で凄まじい魔力を見せたノマちゃんだけど、その影響か髪の毛の一部が白く変色してしまったのだ。
時間が経てば戻るかとも思ったんだけど、そんなことはなくて。
本人は、これもファッションの一部だみたいな感じで、たいして気にしてないみたいだけど。
「エランちゃんは、魔力の使いすぎでああなったんじゃないか……って言ってたよね」
「うん。ノマちゃんがあんなに魔力を振るうことは、なかったと思うから」
魔力が活性化し、身体に異変が起きた……そう考えても不思議ではない。
「それは、間違ってないと思う。学園じゃ、魔導を使う授業は茶飯事だ……でも、実際に膨大な魔力を使う機会もあまりないと思う」
「うん」
「だから、体内の魔力が活性化し……それが目に見える形で、変化が訪れた」
そしてノマちゃんには、もう一つ大きく変わったものがあった。魔力の質とは別に……
「魔術を魔法で撃ち抜いた……って話。普通に考えれば、魔法じゃ魔術には敵わない。
でもノマちゃんの場合は、魔法でも魔術を撃ち抜けるような"弱所"を見抜いたんだと思う」
「弱所……つまり、弱い部分ってことだよね」
「そ。そこを突かれれば、威力は本来の半分以下になる。それを見抜く目を、ノマちゃんは手に入れた」
……ノマちゃんの魔力や身体機能が上昇していることは、わかっていた。でも、他にも影響が出ていたんだ。
単純に目が良くなった……という意味ではないんだろうな。
ノマちゃん自身、どこまで自分の身体のことを知っているのだろうか。
「髪の毛が白くなったの、身体に悪かったりしないのかな」
「……今のところ本人は異常を感じてないし、検査の結果も至って平常。むしろ"魔死事件"前より視力が上がってるくらいだよ。
……とはいえ、油断はできないね」
身体に起こった変化が、必ずしもいいこととは限らない。今は良くても、未来は……ということもある。
だから私は、これからもノマちゃんから目を離さずにいる。
「なにか、気づいたことがあったら教えてね。どんな些細なことでも」
「もちろん。ノマちゃんが死んじゃったり……魔獣に、なんてことにならないように」
ノマちゃんは"魔人"と呼ばれる存在になってしまった……そして、それと魔獣の"最上位種"は同種だという結果も。
その"最上位種"は白い身体をした魔獣だ。これが単なる偶然なのか、それとも……
偶然じゃなければ、身体が白くなるのは魔獣に近づいているからじゃないか。そんな悪い予感さえ、出てくる。
「今は様子を見守るしかないよ。前例がないんだから、いろいろとね」
「……そうだね」
事態が事態だ、これは慎重にいかなければならない。
みんなで平和に過ごすために、きちんと注意しておかないと。
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