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第十五章 最高の魔導士編
1174話 心当たりなし
しおりを挟むそれから私は、ルリーちゃんやラッヘと別れ自分の部屋へと戻る。
当然フィルちゃんも一緒だ。
一日ぶりの部屋。中に入ると、そこには誰もいない。
普段ならばノマちゃんが明るく迎えてくれるのだけど、今彼女は実家に帰っている。だからここにいないのは当然なんだけど……
「静かだなぁ」
ノマちゃんがいないと、こうも静かなのか。
一度、"魔死事件"のときもノマちゃんがいないことはあったけど、あの時は私が他の部屋に移っていたからな。
とりあえず、荷物なんかを置いて……と。
「わぁ、ふかふか」
ベッドに座る。あの家のと比べると、やっぱりふかふか具合と言うか弾力と言うか、全然違うや。
フィルちゃんもぽよぽよと満喫しているようだ。
そうして、少しばかり満喫して……
「さて、と」
私は立ち上がる。少し休憩したし、うんと伸びをしよう。
一応昨夜はぐっすり寝たとはいえ、帰ってくる最中にいろいろあったもんね。
その疲労すべてをこの短時間で回復できたとは言えないけど、まあこんなもんでしょ。
「フィルちゃんは、寝ててもいいよ?」
「ママと行く!」
するとフィルちゃんはベッドから起き上がり、私に抱きついてきた。
昨夜もぐっすりに加え、さっき私におぶさった状態で寝ていたからすっかり眠気はなくなったみたいだ。
なら、一緒に行こう。私はフィルちゃんの手を取り、部屋を出る。
今回は国の外に出るわけじゃなく、王都を回ってみるだけだ。なので、別に荷物とかは必要ない。
寮を出て、学園の敷地から出ようとしたところでルリーちゃんとラッへが近寄ってくる。
「二人とも?」
「私たちも、手伝います!」
「うん、人数いたほうがいいでしょ。それに、他人事に思えないから」
どうやら、私とフィルちゃんがいない間二人で話でもしていたのか……私がこれからしようとしていることを、共有していたらしい。
正直、ルリーちゃんならついてくるかなと思っていたけど……
自分が何者かもわからず、両親のこともわからない。ラッへにとっては、フィルちゃんの状況を自分と被せているのかもしれない。
「ありがとう、助かるよ」
単純に人数が必要なのはそうだ。私だけでは、さすがに限界もあるし。
人数が増えるなら、それに越したことはない。
そんなわけで、私たちは学園を出て王都を歩いていく。この人数で、ただ歩いていても見つからないと思うけど……
「ねぇ、もふもふ出しちゃだめなの?」
「だめだねー。第一、さすがにこの場ではやめておいたほうがいいかなー」
事情を知っている学園内や国の外からともかく、こんなところでもふもふを……魔物を召喚するのはさすがにだめだろうと私だってわかる。
いくら使い魔といっても、魔物というだけで騒ぎになってしまうのは間違いない。
同じ理由で、クロガネも召喚するのは躊躇われる。
普通のモンスターや魔物より怖いかもだし、なにより大きすぎるし。
「となると、歩いて探すしかないよねぇ」
もっとも、学園の外で使い魔を出すのは禁止されているだけどね。
「フィルちゃんのお父さんかお母さん……先生たちが探してくれてはいるんですよね?」
「らしいんだけどねー。私の時と同じ、似た特徴の人は全然いないんだって」
師匠が私を知ってる人がいないか捜してくれていたときも、私と似た特徴の人は全然いなかったっていうし。
それに、だ。こちらから捜すのはもちろんなんだけど、向こうからのアプローチもないんだよなぁ。
フィルちゃん……つまり自分の子供がいなくなったら、親なら心配するもの。憲兵さんあたりに、捜索を願うはずだ。
でも、そういう情報はまったくない。これはいったい、どういう意味なのか。
フィルちゃんの両親はフィルちゃんがいなくなっても心配していないか……フィルちゃんはこの国の人間ではないのか……
あるいは……ヨルやマヒルちゃんと同じ立場ってことも考えられるよね。
「それにしても、人がたくさんいますね」
と、周囲を見回すルリーちゃんが言う。
やっぱり王都は人の行き来が激しい。こういった場所で人を捜すってのは、なかなか難しそうだ。
……フィルちゃんは獣人でも亜人でもない、人間だ。だから、似た特徴の人がいればと思うんだけどなぁ。
「そう簡単にはいかないか」
しばらく歩き回ってみても、手がかり一つ掴めない。いったい、どうなっているんだか。
三手に別れて捜していたルリーちゃんもラッへも、収穫はゼロのようだ。
さすがにそんな簡単に見つかるとは思っていなかったけど……
「なにかしら手がかりはほしいよねぇ」
「この子の親御さんや、知ってる人がいないか思い切り叫ぶのはどう?」
「それで名乗り出てくれるなら、今日までその機会はいくらでもあったと思います」
まあ、フィルちゃんのこともわりと学園の外でも話題になってるからな。白髪の幼女が、魔物を使い魔にした……みたいな感じで。
私ほどじゃないけど、学園で目立つ人はその情報は外に漏れることもある。
白髪黒目の小さな女の子。心当たりがあるなら、すぐに名乗り出てもおかしくない。
それがないってことは……
「くんくん……ママー、お腹すいたぁ」
……こっちはキミのことで悩んでるのに、まったく……
「そうだね、お昼ご飯にしようか」
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