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第一章 魔導学園入学編
23話 理事長室での出会い
しおりを挟むよかった、よかった、よかった!
合否発表の表に私の名前がなかったから、落ちてしまったのかと一度は絶望した。
だけど……ちゃんと、私の名前は……エラン・フィールドの名前は、あった!
「そうよ、エランちゃんが落ちるわけないわよ!」
「ですよ、すごい魔法でしたもん!」
「そ、そんなぁ、えへへへへ」
さっきまでの絶望感が嘘のようだ。
この場には、当然不合格の人もいるだろうから、合格だとしても自重しようと思っていたけど……
一度不合格だと思ってしまった反動か、騒いでしまう。
「でも、よかったよ。
これで、三人一緒に……」
「エラン・フィールド!
エラン・フィールドはいるか!」
三人で喜びを分かち合う……
その空間へ、割り込んでくる声があった。
呼ばれたのは、私の名前。
私たちは騒ぐのをやめて……
それぞれ、顔を見合わせる。
「わ、私?
な、なんだろう……」
「わからない、けど……行った方が、いいわよ」
「ですね。あの【成績上位者】に関係することかもしれませんし」
どうして、私の名前が呼ばれたのか。
その理由は、わからないけれど……
十中八九、ルリーちゃんが言ったことで間違いないだろう。
わざわざ【成績上位者】に区分されている人の、名前を呼ぶのだから。
「も、もしかしたら、あれはなにかの間違いで、やっぱりお前は不合格だとか、言われるんじゃ……」
「考え過ぎよ、ほら行ってきなって」
ぽん、とクレアちゃんは、私の背中を押してくれる。
「ちゃんと、待ってますから」
笑顔を浮かべて、ルリーちゃんは送り出してくれる。
「二人とも……
うん、私、行ってくるよ!」
「エラン・フィールド、いないのか!?」
「はいはーい、ここにいまーす!」
なんで呼ばれたのかは、行けばわかる!
二人に軽く手を上げた後、私は、私を呼ぶ教師のところへ、駆けていった。
――――――
私を呼んだ男性の教師は、私を案内するように前を歩いて行く。
その後ろを着いて、私は校内に足を踏み入れたわけだけど……
「……亜人かぁ」
誰にも聞こえないように、私は呟く。
先生は、二足歩行の竜の体をしている……俗に竜人と言われる、亜人だ。
赤い鱗に尻尾、羽は生えていないのか、しまっているのか……
こんな間近で見るのは、初めてだ。
「かっこいい……」
「? どうかしたか?」
「あ、いえ」
いけないいけない、口に出ていたみたいだ。
別に悪口ではないけど、中には亜人だ獣人だって区分けされるのが嫌な人も、いるみたいだし。
そんなことを考えていると、一つの扉の前で、先生は足を止める。
「ここだ」
「ここ?」
「キミを呼んだ理由、理事長がお呼びだ。
内容は中で聞くといいが、【成績上位者】に関することだ」
やっぱり、ルリ―ちゃんの言った通りだったか。
ていうか、理事長って……確か、学園で一番偉い人、だっけ?
ということは、礼儀をちゃんとしないと、不合格にされる可能性が……?
「理事長、エラン・フィールドをお連れしました」
「ちょっ!?」
「入りなさい」
不合格の危機に震えていると、コンコンと扉をノックした先生が、中に呼びかけていた。
返ってきたのは、女性の声。年配の人かな……
先生は、躊躇なく扉を開けていく。
ちょっと、まだ心の準備ができてないんですけど!?
そんな私の心の声が、聞こえるわけもなく……
「失礼します。
こちらが、エラン・フィールドです」
「あああああああは初めてまたして!」
「こんにちは、よく来たわね」
わわわ、頭がパニックになって、なんか言葉を噛みまくった気がしたよ!
すぐに頭を下げると、くすくすと笑う声。
「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ、エラン・フィールドさん」
「は、はい」
「ご苦労様、先生は下がってください」
「失礼します」
竜人の先生は、そのまま教室を出ていった。
ここは、理事長室というやつだろう。
そこに残されたのは、私と、理事長の二人……
「……あれ?」
いや、違う……もう一人、いる。
理事長は、正面……自分のものであろう机に肘を乗せ、席についている。
薄い紫色の髪をオールバックにして、時を刻んできた分しわが刻まれている。知性を感じさせる、顔立ちだ。
ぞれとは、別に……
ソファーに、誰か座っている。
扉から入って見て、右側に設置してあるソファー。三人は座れそうだ。
その手前に座っている男の子と……目が、合った。
「……!」
「……え」
その男の子は、私の顔を見て、驚いたように若干目を見開く。
だけど、驚いたのは私もだ。
男の子は……黒髪黒目を、していた。短く切りそろえた黒い短髪に、目付きの悪い中にある黒い瞳。
黒髪黒目……私と、おんなじだ。
そしてそれは、私にとって初めて目にする人だった。だって、この国に来てから黒髪黒目の人なんて、見たことがなかったから。
……いや、この国に来てから、ではない。
師匠は言っていた、私の髪と目を指して。
エルフ族として長く生きてはいるが、私のような髪の色をした人間は見たことがない……と。
師匠は、記憶喪失である私を拾う前は旅人だったらしい。そして長寿のエルフ。
そんな師匠が……いろんなところを旅して、人よりも長生きの師匠が、私以外に見たことがない。
それが、黒髪黒目の人間。
それが、今私の目の前に……
「さ、そちらへどうぞ」
「え、あ、はい」
ふと、理事長の言葉で我に返る。
どれくらい、ぼーっとしていたのか。それとも、今のは一瞬の出来事だったのか。
男の子は無表情に戻っているが、さっきの反応を見るに、男の子も思うところは会ったらしい。
てか、仏頂面だなぁ。少しは愛想よくしてくれてもいいのに。
私は、少し距離を空けて男の子の隣へと、座る。
竜人の先生は、私がここに呼ばれたのは【成績上位者】に関係することだからって言っていた。
ということは、私をここに呼んだ理事長とは別に、この部屋にいるこの男の子は……
「それでは、ヨルさん、エラン・フィールドさん。
お二人をここに呼んだ理由を、お話しましょう」
ヨル……それが、この男の子の名前。
その名前は……私以外の、【成績上位者】の二人のうち、一人の名前だ。
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