77 / 1,141
第二章 青春謳歌編
75話 代表者による定例会議
しおりを挟む「えっと、この教室か」
「みたいだね」
教室を出た私は偶然にもナタリアちゃんと遭遇し、共に教室を目指して歩いていた。
よかった、ナタリアちゃんと会えて。私一人だったら、また迷子になっていたかもしれない。
一応この数日、教室の場所とか案内はされたけど……
それでも、覚えきれていないのが正直な話。
そんなこんなで、ナタリアちゃんと共に、目指していた教室にたどり着き。
私は、扉を開ける。
教室の中にいたのは……
「ん、来たか」
「……先生?」
教室に入ってきた私たちを見て、軽く手を上げる私の組の担任の先生……ヒルヤ・サテランの姿だった。
来たか、って。まるで、私たちを待ってましたよと言わんばかり。
教室には先生の他に、二人の男子生徒だ。
一人は、残念なことに見覚えのありすぎる男、ヨル。残念なことに私と同じ黒髪は、よく目立つ。
そして、もう一人のブロンドヘアの男の子が……
「どうした二人とも、早く座れ」
「はい」
「えぇと……
なんで、ここに先生が?」
それは、単純な疑問。
私に、定例会議に出席しろと念押しして、私より先に教室を出ていった先生が、どうしてここにいるのか。
私の質問が意外だったのか、先生は目を丸くする。
「言ってなかったか?
定例会議には、各クラスの代表者とは別に、それぞれのクラスの担任が一人、週ごとに入れ替わりで付き添うと。
今日は私の番というわけだ」
聞いてないんだけどそんなこと。
てか、そういうことならわざわざ私一人を行かせないでも、一緒に行ってくれればよかったじゃん。
ナタリアちゃんいなかったら迷ってたよ私。
ぷんぷん。
「付き添い、ですか」
「ま、付き添う、とは言葉通りだ。さすがに生徒だけでってわけにもいかないからな。
今回は初回だし、会議の進め方なんかを軽く説明するが……それくらいだ。
聞かれたことには可能な限りは答える等はするが、基本的に会議に口は挟まない。
生徒の自主性を重んじるからな」
……そりゃそうだよな。いきなり、はい会議しろ、なんて言われても、なにをどうしたらいいのかわからないし。
それに、先生もいない中で、どんな会議が行われているのか把握できないってのは、先生にとっても意味のないことだろうし。
……ん? 待てよ。先生が付き添いでいるってことは……
ヨルが、変なことをしてくる可能性が減る!
さすがに、先生のいる前で変な行動や言動はしないだろう。
そんなこんなで、定例会議初回が始まった。
メンバーはそれぞれ…
「ドラゴ」クラス
エラン・フィールド
「デーモ」クラス
コーロラン・ラニ・ベルザ
「ラルフ」クラス
ヨル
「オウガ」クラス
ナタリア・カルメンタール
だ。
それぞれ、席につく。四人が、それぞれ向かい合うような配置だ。上から見たら十字みたいな形。
「はじめましての人もいるし、ここはまず軽く自己紹介といかないかな」
さてなにを話そう、と考えていたところへ、手を上げて口を開くのは、コーロラン・ラニ・ベルザ。
このベルザ王国の、第二王子様だ。
そして、ノマちゃんが恋する相手でもある。
自己紹介。それに異論はないので、小さくうなずいておく。
まあ私がはじめましてなのは、王子様だけなんだけど。
「構いませんよー。ね、ナタリアちゃん!」
「もちろん」
「なあ俺は?」
「では、言い出しっぺの私から。
「デーモ」クラス代表の、コーロラン・ラニ・ベルザ。立場としては、この国の第二王子ってことになってるけど……
みんな、敬語なんかもなしで、気にせず普通に接してくれると嬉しい」
「オッケー、王子様!」
「……私が言うのもなんだけど、適応早いね。
あとせっかくなら王子様以外の呼び方でお願いしたい」
なんだ、王子っていうからどんな堅物かと思ったけど、爽やかないい人じゃんか。
人当たりもいいし、うんうん。こういうのが理想的な、初対面の男子、だよね。
簡単な自己紹介ということで、その後はナタリアちゃん、ヨルと進んでいく。
「こほん。えー、「ドラゴ」クラス代表のエラン・フィールドだよ。
気軽に、エランって呼んでくれると嬉しいな!」
「エラン、そのカチューシャ似合ってるな」
「セクハラです」
「なんで!?」
さてさて、一通り全員の自己紹介が終わったところで……
自己紹介言い出しっぺだった王子様が、続けて場を仕切っていく。
「じゃあ、それぞれのクラスで報告を行っていこうか。
まずは私から……と言いたいところだけど、それよりも話題のありそうな人から……」
と、王子様の目がなぜか私に向く。
ヨルも、ナタリアちゃんまでも私を見ているのだ。
な、なんだよぅ……私に、しゃべれってことか?
けど、そんな、しゃべれるようなことなんて……みんなが期待しているような、話題なんて……
「と、特にありません」
「そんなわけないだろう!」
その場に響くのは、私たち四人の誰のものでもない……
ハッとして、口を押さえる先生のものだ。
思わず口が出てしまったんだろう。思わずツッコんじゃったみたいな。
私たちの視線を受けて、先生が諦めたように口から手を退ける。
「特にないわけないだろう。
フィールド、お前適当に終わらせて帰ろうとしてないか?」
「そ、そんなことないですよー?」
「こうならないために、一人は教師が立ち会って……
まあ、ベルザがいれば軌道修正してくれそうな気もするが」
頭を押さえる先生。頭痛いのかな?
うーん、特にないことはまあ、確かにないんだけど……
別に私のクラスだけに関した話でもないしなぁ。
「魔獣騒ぎのことなら、組ってより私個人が絡んだだけだから、別にいいかなって」
「よくない。組に関してじゃなくても、そういう重要なことは言わなきゃだめだ」
「じゃあヨルでもいいじゃないですか。あの授業に参加してたでしょ」
「魔獣を倒したのはエランだって聞いてるよ。
なら、エランが言うべきだろう?」
「ちぇ」
別に、わざと言わなかったわけではない。すでに全クラス、いやもしかしたら全生徒に伝わっている話だから、私から改めて言わなくてもいいだけかなと思っただけだ。
けど、はぁ……
だめかぁ。
「わかった、言うよ。
って言っても、みんなが知ってる情報以上のものは出てこないと思うよ」
「いいんだ。
これはあくまで定例会議……報告しあい、情報を共有することが目的なんだから」
先生曰く、細かいことは気にしなくていいらしい。
というか、三人とも私から話を聞きたそうな目をしている……
やれやれ、仕方ない……話すか。
14
あなたにおすすめの小説
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
濡れ衣を着せられ、パーティーを追放されたおっさん、実は最強スキルの持ち主でした。復讐なんてしません。田舎でのんびりスローライフ。
さら
ファンタジー
長年パーティーを支えてきた中年冒険者ガルドは、討伐失敗の責任と横領の濡れ衣を着せられ、仲間から一方的に追放される。弁明も復讐も選ばず、彼が向かったのは人里離れた辺境の小さな村だった。
荒れた空き家を借り、畑を耕し、村人を手伝いながら始めた静かな生活。しかしガルドは、自覚のないまま最強クラスの力を持っていた。魔物の動きを抑え、村の環境そのものを安定させるその存在は、次第に村にとって欠かせないものとなっていく。
一方、彼を追放した元パーティーは崩壊の道を辿り、真実も勝手に明るみに出ていく。だがガルドは振り返らない。求めるのは名誉でもざまぁでもなく、ただ穏やかな日々だけ。
これは、最強でありながら争わず、静かに居場所を見つけたおっさんの、のんびりスローライフ譚。
【完結】大魔術師は庶民の味方です2
枇杷水月
ファンタジー
元侯爵令嬢は薬師となり、疫病から民を守った。
『救国の乙女』と持て囃されるが、本人はただ薬師としての職務を全うしただけだと、称賛を受け入れようとはしなかった。
結婚祝いにと、国王陛下から贈られた旅行を利用して、薬師ミュリエルと恋人のフィンは、双方の家族をバカンスに招待し、婚約式を計画。
顔合わせも無事に遂行し、結婚を許された2人は幸せの絶頂にいた。
しかし、幸せな2人を妬むかのように暗雲が漂う。襲いかかる魔の手から家族を守るため、2人は戦いに挑む。
ぽっちゃり女子の異世界人生
猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。
最強主人公はイケメンでハーレム。
脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。
落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。
=主人公は男でも女でも顔が良い。
そして、ハンパなく強い。
そんな常識いりませんっ。
私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。
【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
追放したんでしょ?楽しく暮らしてるのでほっといて
だましだまし
ファンタジー
私たちの未来の王子妃を影なり日向なりと支える為に存在している。
敬愛する侯爵令嬢ディボラ様の為に切磋琢磨し、鼓舞し合い、己を磨いてきた。
決して追放に備えていた訳では無いのよ?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる