史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第二章 青春謳歌編

83話 魂の叫び

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「あーもう!
 なんなのあいつ!」

 結局棄権してしまった筋肉男。
 意味の分からない言葉を並べた挙げ句、意味の分からない理由で棄権するなんて……

 本当になんなんだあいつ!

「……お気持ちはお察ししますが、わたくしとしてはあの筋肉の方とお話をしている片手間にこちらの攻撃を全て捌いていたフィールドさんこそ、なんなのあなたって感じですけど」

「えぇ?」

 なぜか、ノマちゃんに不服そうな表情を向けられてしまった。
 ……まあ、もういいや。あいつのことは忘れよう。

 そう、あんなやつは初めからいなかった。それでいいじゃないか。
 私たちは、改めて、試合に望むことに……

「フィールド様」

「おわっふぉおおお!?」

 決意を新たにしようとしたところに、突然後ろから声が。
 その、いきなりのことに私はひどく驚き、間抜けな声を出してしまった。

 同時に、飛び退き距離を取りつつ、背後にいた人物を見る。
 そこにいたのは……

「か、カゲ、くん?」

「お久しぶりでございます」

 ぴんと立ち、丁寧な姿勢でお辞儀をしてくるのは、カゲ・シノビノくんだった。
 ノマちゃんの、お世話係という男の子だ。

 カゲくんの家、シノビノ家は、代々ノマちゃんの家エーテン家に仕えているらしく、その影響でお世話係の役についているらしい。
 というのも、私がカゲくんと初めて会ったときに、その事情を聞かされて……

 って、今はそんなことはどうでもいい!

「ノマちゃんと、一緒のクラスだったんだ」

「はい。
 この上ない幸福にございます」

 いちいち言葉遣いが大袈裟なんだよな、この子……
 この場にいて、且つ私のクラスにいないって時点で、彼がノマちゃんのクラスと一緒だということがわかる。

 つまり、この試合においては敵同士のはずだ。
 にも関わらず、私の背後を取っておきながら、攻撃することはなかった。

 ……背後を取られたのに、気配を感じなかった。

「舐められてる、ってことかな」

 相手の背後を取ったのに、攻撃するどころか声をかけ、自分の存在を明かす……
 舐められているといっても、不思議じゃない。

 私たちの部屋に音もなく侵入したり、ただ者じゃないとは思っていたけど……まさか、ここまでとは。
 ワクワクと、同時に舐められたという悔しさとが、同時に湧き上がってきて……

「フィールド様、お尋ねしたいことがあります」

「……なに?」

 冷静な様子で、私に尋ねたいことがあるなんて、言ってきて。もしかして……

『思ったより、たいしたことないんですねぇ』

 なんて、とんでもないことを言われるんじゃないかと覚悟をして……

「先ほどの、筋肉のお方……
 あの方の、お名前を教えてもらいたい」

「……ん?」

 考えていたこととは、全然違うことを言われた。
 ……えぇと?

「筋肉男の、名前?」

「はい」

「……なんで?」

 なんで、ここで筋肉男の話が出てくる。
 カゲくんは、なにがしたいんだ? 私の背後を取ってまで、なにがしたかったんだ?

 私の問いに、カゲくんは……

「なぜ、と……それは、その……
 素敵な、筋肉をお持ちの、素敵な方だなと、思い……少し、気になるだけで……」

 なぜか、頬を赤く染めながら、照れくさそーに口を開いた。
 なぜか、少しもじもじしている。

 え、なに……私、なにを見ているの? これはなんなの?
 ふと、頭の中で思い出す。


『カゲの恋愛対象は、異性ではないのですから』

『ノマお嬢様はもちろん、フィールド様にも手を出すなんてことはありえませんので、ご安心を』


「あぁああああぁあ!?」

「!?」

 これかぁああああ!?
 確かに初めて会ったとき、こんなこと言ってたよ! カゲくんは、女の子じゃなくて男の子に興味があるんだよ!

 するってぇと、あれか!? この、話の流れは……
 なぜか筋肉男の話題、頬を赤らめるカゲくん、少し照れてるっぽい、恋愛対象……

 バラバラたったピースが、嫌なことに一つになっていく。

「か、カゲ、くん……」

「まったく、カゲ。そんな私情で、わたくしとフィールドさんの戦いに割り込んできたんですの?」

「申し訳ありません、ノマお嬢様。
 しかし、湧き上がる己の気持ちを、抑えることなどできず……」

「……」

 周囲がドンパチやっている中で、私はなにをしているんだろう。

 私は、背後を取られた。気配に気づけなかった。いくら周囲でが騒がしいからと言って、だからこそ気を配っていたはずなのに。背後を取られて、けれど、攻撃はされなくて。
 その理由が……よりによって、筋肉男の名前を、知りたいから……なんて……

「うっ、私……どうしたらいいんだよぉ!?」

「名前を、教えていただければ」

 もー!
 友達のお世話係が筋肉男に興味を持つし、その本人は早々に棄権するし!

 なんなんだよこれー!
 私の魂の叫びがこだました。


 ――――――


「はぁ!」

 一人の少年が、剣を振るっていた。彼の名は、イザリ・ダルマス……以前エランと決闘をして、完膚なきまでに負けてしまった。
 それ以来、彼は徹底的に、自分を見つめ直した。あれからの短い時間で、どれだけ成長できたのか……この試合は、それを試せる絶好の機会だ。

 先ほどは、クラスメイトのブラドワール・アレクシャンが棄権するという想定外の事態が起こったが……
 あんなのは、初めからいなかったものと考えよう。

 自分は、将来ダルマス家の名を背負って立つ男。この剣は、その証……家宝だ。
 この試合で戦果を上げてこそ、自分の大きな自信になる。

「お前、ダルマス家の長男だな?」

「!」

 固まっていたクラスメイトは相手クラスの策略でバラバラになり、さらに飛び交う魔法の影響で戦況は混乱を極めていた。
 そんな中で、イザリもまた、戦いに身を投じていて。

 目の前にいる、相手クラスの男は、不敵な笑みを浮かべている。
 獲物を前に、舌なめずりをするハンターのようで。

「へへ、聞いたぜ。お前、決闘をして負けたらしいな」

「……」

「ダルマス家の長男といえば、魔導剣士としての資質があるって話に聞いてたが……
 どうやら、噂にゃ尾ひれがつくものらしい。いやいや、別にしょうがないとは思うぜ? 相手はあのグレイシア・フィールドの弟子だってんだからな。
 けどまぁ……しょせんは聞いたこともない女に負けるあたり、底が知れらぁな。そんな弱っちぃてめえを、ここで俺様が、完膚なきまでに……っ!?」

「話が長い」

 ……次の瞬間には、男は倒れていた。
 イザリは剣を振るい、刀身についた血を払う。結界の中で一定以上のダメージは無効化されるとはいえ、血は出るのだ。

 男の話を最後まで聞くことはなく、イザリは勝負を決めていた。その剣の速さたるや、身体強化の魔法を使っていないのに、以前エランと決闘した際に身体強化して見せた動きと、同等の速度を有していた。

「確かに、俺はエラン・フィールドに負けた……
 だからといって、俺がお前よりも弱い理由には、ならないだろう」

 結界外に弾き出される男を背に、イザリ・ダルマスは再び混乱の中へと飛び込んだ。
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