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第三章 王族決闘編
103話 その魔導具の名は
しおりを挟む……ゴルドーラと決闘することが決まったあとのこと。私はその足で、あの日以来訪れていなかった研究室を、訪れた。
そこにいる、ピア・アランフェイクさんに会うために。
『いやぁー、まさかこんなにもまた早く会いに来てくれるとはねぇ。
聞いたよぉ、第一王子との決闘。アンタさんもかわいい顔して派手なことするねぇ』
『実はその、折り入ってピアさんにお願いがありまして……』
『ほほぅ?』
……私は、ピアさんにお願いしたのだ。ゴルドーラとの決闘に備えて、彼に対抗するための魔導具を貸してほしいと。
決闘には、万全を期しておきたい。だから、私は自分自身を鍛えること以外にも、やれることをやろうと決めた。
『ほぉほぉ。これは……嬉しいなぁ。これまでアタシの発明品を、頼りにしてくれる人なんかいなかったから』
『以前、見かけたときに……ひと目見て、わかったんです。ここにある魔導具は、どれもすごいものばかりだって』
『あははは、照れるなぁ! や、実はアタシの方から、アンタさんに話を持ちかけようか、悩んでいたんだけどね。まさか、アンタさんから来てくれるとは!
よし、それじゃなにかいいものがないか、探してみるよ!』
テンションの上がったピアさんの猫耳は、ピョコピョコと激しく動いていた。
……そして、ピアさんが選んでくれたのが、この短剣だった。
『これは……小さい、剣?
いやでも、刀身がない?』
『そ。この子は、魔力を吸収することで、それを自分の力へと変える機能が備わっている』
『吸収……それを、力に変える』
『うん。例えば、相手が魔法を撃ってくるとする。それに、この子を近づけた瞬間……魔法を吸収してしまうのさ!
魔法は消え、その魔力はこの子の刀身部分に表れる。青白い光となって。こんな風にね』
『おぉ、すごい!』
『気に入ってくれたかにゃ。そこで、注意すべき点は二つだ。
一つ、これは大気中の魔力は吸収しないということ。
一つ、吸収できる魔力量には限界があるということ。
加えて、魔力を放出し続けるということ』
『加えたら注意点三つですけど』
『……一つ一つ解説していくよ。
まず、大気中の魔力を吸収しない。もし大気中の魔力も吸収してしまったら、この子は絶え間なく魔力を吸収してしまう。吸収オンオフの切り替えもできないから、どうしても大気中の魔力には反応しないようにせざるを得なかったんだ。
ここで気をつけなきゃいけないのが、"大気中の魔力"ってこと。つまり……』
『あ、大気中の魔力を利用する魔術も、吸収できない』
『そゆこと。この子が吸収できるのは、魔法だけ。魔術に対しては吸収の効果は働かないから、気をつけて』
ピアさんは、二本目の指を立て、説明を続けてくれた。
『次に、吸収できる魔力量には限界がある。これはまあ、説明もなにも、言った通りだよ。
この子は魔力を、際限なく吸収できるわけじゃない。魔力を吸収し続ければ、やがて限界が来て、ボカン』
『えぇ!? 吸収のオンオフが切り替えられないんじゃあ、魔法を撃ち続けられたら吸収の限度超えちゃうってことですか?』
『そこで、三つ目の注意点だよ』
三本目の指が、立った。やはり注意点は、三つだった。
『魔力を放出し続ける。青白い光は魔力が目に見えるようになったもの……それは同時に、魔力を放出しているということでもある。
出ろ、って念じれば、持ち主の感情に作用して魔力を放出させることができるし、出力を上げることもできる。ま、出力が上がるってことは消費される魔力量も多くなるってことだけど』
『……という、ことは』
『吸収した魔力量にもよるけど、魔力の剣には制限時間があるってことだね。魔力を放出したまま時間が経てば、吸収した魔力を出し切ったとき……
この子は、刀身のない短剣に戻る』
『ふむふむ……じゃあ、さっきの、吸収できる魔力量、の特性と合わせれば……』
『そう、気づいちまったみたいだねぇ。
放出される魔力、それが尽きる前に新たな魔力を吸収させてしまえば、この子は半永久に武器としての機能を果たすことができる。
しかも、だ。放出と吸収、この二つの機能をうまく使えば、相手には「あの短剣は魔力を際限なく吸収できるのか?」と思わせることができる』
『確かに……魔力が放出し尽くされる前に、新たに魔力を吸収させる。これを繰り返せば!』
『ただ、さっきも言ったけど吸収できる魔力量には限界がある。その点諸々気をつけないと、勘のいい人には察しがついちゃうかも。
諸々の注意点なんかが、今後の課題かにゃあ』
『ですか……
……うん、私にこれ、貸してください! お願いします!』
『にゃはは、もちろんいいよー!』
ピアさんは、快く協力してくれて……
『……あの、今更ですけど……私に協力したってことで、なにか変なことされませんよね? もしそうなら……』
『にゃははは、本当に今更だね!
心配しなくてもいいよ。それに私は、そんな人間関係のいざこざよりも、この子たちが陽の光の下で活躍しているところを見たい。そのためなら、なにが来ようが構わないさ!』
『ピアさん……』
『それに言ったろ、私から話を持ちかけようか悩んでいた、って。アンタさんが気にすることじゃない。この子をよろしくね。
いや、この子、じゃないか。ちゃんと名前があるんだ』
『名前?』
『うん。魔力を使用した剣。その名も……』
「行くよ!
『魔力剣』!」
吸収したゴルドーラの魔力、それを放出して自分の力へと変える。それがこの魔導具、『魔力剣』の力!
私が魔導具を使うことは計算していなかったのか、ゴルドーラは少し驚いたようでもある。
これまでの私の活躍を調べたんだろうけど、魔導具なんて欠片も使ってなかったしね。
「決闘には、武器の使用は許可されている……でしたよね。
まあ、魔導具を武器って括りにするかは私には判断がつきませんけど」
「どちらでも構わない。それを貴様が己の得物として振るう以上、それも貴様の全力に当たる。
決闘には全力で当たるべし……不服などあろうはずもない」
さて、いつまでも睨み合っているわけにもいかない。放出され続けているこの魔力、消費されちゃう前に振るわないと!
吸収した魔力がどれほどのものかはわからないけど、少なくとも魔力壁を壊すくらいの威力があった。そう簡単に切れることはないだろう。
同時に、あの攻撃を吸収できたのだから、吸収できる魔力の許容量も結構あるっていうのがわかる。
「さあて……行くよ!」
「改めて言われるまでもない。来い……!」
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