107 / 1,198
第三章 王族決闘編
104話 一進一退の攻防
しおりを挟む「せぇええええ!」
「……」
大声を上げて迫る私と、無言のままに淡々とそれを捌くゴルドーラ。周囲には、まるで金属がぶつかりあったような激しい音が響いている。
けれど、衝突しているそれらは金属ではない……魔力だ。
ゴルドーラの正面へと突っ込んだ私は、魔力強化した杖と『魔力剣)』をそれぞれ片手ずつに、振るっていた。どちらも、剣のように鋭いが実態は魔力だ。
両手に持ったそれはいわば二刀の剣。それを振るい、ゴルドーラへと迫るが……
ゴルドーラは、同じく魔力強化した杖一本で、私の猛攻を全て捌き切っている。
「押し……切れない!」
「全身への魔力強化で全身の動きを大幅に強化。杖と魔導具で、俺に反撃の隙を与えまいというわけか……
なかなかに手強いな」
「余裕ぶっちゃって!」
私の攻撃を全て捌く反射神経、動体視力。焦り一つ見せないなんて……!
しかも、相手は杖一本……つまり、片手のみしか使っていない。
ということは、残された片手は今自由になっているわけで……
「っ……」
「どうした、気が散っているぞ」
「ちぃ」
いやらしいのが、自由な片手は私を攻撃するわけでもなく……攻撃する"かもしれない"、と思わせる程度にしか動かしていないということ。
これは、私の注意力を分散させるためのものだ。いっそのこと、片手でも攻撃なりしてくれたら、そっちを防御することに集中できるのに……
中途半端に自由なだけで、いちいち気にしないといけない!
「……ほぉ」
そんな中、なぜかゴルドーラが感心したように、言葉を漏らす。
それに一瞬気を取られた。その隙を狙ってきたのか、今度こそ放たれた拳が、私の顔面を狙う。
とっさに、『魔力剣』でガードする。刀身と拳とがぶつかり合い……衝撃までは殺せず、後ろにふっ飛ばされる。
けれど、そのまま飛ばされるわけにもいかない。すぐさま一時的な浮遊魔法を使い、動きを止め、その場に着地。
正面を見据えると、ゴルドーラは私を殴った方の手を、握ったり開いたりしている。
「いくら決闘で結界の中とはいえ、女の子の顔を躊躇なく狙う?」
「……なるほどな」
私の言葉を無視し、ゴルドーラは感心したようにうなずく。
「その魔導具は、身体強化の魔力も吸収するわけか。
道理で、違和感があったはずだ」
納得がいった、とゴルドーラ。今の衝突で、確信したらしい。
『魔力剣』は魔力強化の魔力も吸収する。それが魔法である以上可能だ。どうやら、さっき杖で打ち合っているときに、杖を強化した魔力が減っている違和感を感じていたらしい。
そして、身体強化した拳で、『魔力剣』の刀身を殴った。その際、身体強化の魔力もわずかながら吸収されたわけだ。
「やはり面白い魔導具だ。これまで様々な魔導具を見てきたが、そんなものは初めてだ。
今度、それを作った人物と話をしてみたいものだな」
「……きっと喜びますよ」
第一王子にそこまで評価されるなんて、ピアさんも嬉しいだろう。本人が萎縮するかはわからないけど……ピアさんだし、第一王子相手でも堂々としてそうだ。
考えてみれば、ピアさんは二年生。つまり、この学園に在籍してまだ一年だ。たった一年で、こんなすごい魔導具を作り出すなんて……すごい!
……それにしても、さっきから攻撃が全然当たらないなんて。
「まるで、魔導剣士みたい」
まあ、私が戦ったことのある魔導剣士はダルマスだけだし、もっと強い人がどんな感じかはわからないけど。
それでも、あれだけ攻撃したのに全て捌き切るなんて、並の芸当じゃない。
私の言葉が聞こえたのだろう。ゴルドーラはピクリと肩を反応させて……
「魔導剣士……? いいや、まったく違う」
と、言った。
「杖に魔力を込めれば、なるほどそれはあるいは剣のように映るかもしれない。だがな、これは剣ではない。一方で、魔導剣士は剣を得物とする者だ。
それを剣のように使うことと、魔導剣士とでは意味合いがまったく違う。軽はずみな言動は慎むといい」
さらに続けて、こんなことを言うのだ。
た、ただ私は、ちょっと思ったことを言っただけなのに……なんでこんなこと、言われなきゃいけないの!?
ムキッとした直後に、ゴルドーラの周囲には光の弾が浮かぶ。
それは、さっきの光景と同じもの。
「無駄ですよ。いくら魔法を撃ってきても、この『魔力剣』で吸収すれば意味はありません」
「だろうな。
……それが、無限に魔力を吸収し続けられるのなら!」
叫ぶと同時に、光の弾は放たれる。しかも、さっきより数が多い。
あの、ゴルドーラの口振り……やっぱり、試してる! 魔力を吸収できる許容量があると、それを確かめようとしている!
もしも、この剣はどんな魔法でもどれだけでも吸収できますよ……とアピールしたいなら、魔力を吸収させ続けるべきだ。
けれど、それを続けたら許容量を超えてしまう!
「せい!」
ここは……魔力吸収と、攻撃を防ぐのを、同時にやるしかない! まずは、魔力吸収。
続けて、光の弾に向けて杖を向ける。さっきは、魔力壁を壊されてしまったから、防御でかわすのはなしだ。
攻撃を、受け流して……
「ほぅ」
風を操り、風の道を作ることで光の弾の軌道を変える。これで、攻撃が当たるのは防げる。
だけど、やっぱり数が多い!
「どうした、やはり魔力吸収には限界があるか!?」
「っ」
魔力を際限なく吸収できるなら、別に他の方法で攻撃を防ぐ必要はない……そうしない時点で、答えを言っているようなもの。
少なくとも、ゴルドーラはそう感じたらしい。
「接近戦は不利のようだ、悪いがこのまま押し切らせてもらう」
「くっ!」
接近戦になれば、ゴルドーラの体に触れた瞬間、『魔力剣』は魔力を吸収する。それをさせないために、離れて戦うことを選んだ。
そのやり方は、多分正解だろう。現に、私が動きを制限されている。
頭がキレる人だなぁ!
「それに……それは、魔力を吸収する、のだろう?
ならば、物理攻撃には弱いだろう」
「!」
「不死たる身体を形成されし人造なる人形よ、我が下僕となりて眼前に姿を現せ!」
私が光の弾を捌いている間に、ゴルドーラは杖を構えて……詠唱を、開始する。
これは、魔術を使うための詠唱。
この『魔力剣』は、大気中の魔力を使う魔術は吸収できないが、ゴルドーラはそれを知らない。なので、闇雲に魔術を撃つわけではないはずだ。
それに、さっきゴルドーラは「物理攻撃に弱い」と言った。
本来魔術には、物理的な要素は必要としない。だけど例外はある。
そして、ゴルドーラは……あの兄妹の、兄だ。
「人造人形!!!」
詠唱が完了し、そして魔術が放たれる……瞬間、見ている景色に異変が起こる。
固い地面の一部が……ゴルドーラの周辺が、まるで波のように揺れ……次々と、形成されていく。
泥が、土が、石が……様々なものが、くっつき、それが人の形を成していく。それは、間違いなくゴーレム……コーロランのような巨大なものではなく、コロニアちゃんの人並みの大きさの複数ゴーレムに近い。
ただし……その数は、十にも登る。単純に、コロニアちゃんの倍だ。
「さあ、行け!
そして、見せてみろ。これをどう切り抜けるか」
その合図と共に、ゴーレムは……一斉に、私に向かってくる。もちろん、光の弾は撃たれ続けるままで。
13
あなたにおすすめの小説
ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい
空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。
孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。
竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。
火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜?
いやいや、ないでしょ……。
【お知らせ】2018/2/27 完結しました。
◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。
美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ
さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。
絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。
荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。
優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。
華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。
英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~
ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国の辺境で、ただ静かに生き延びたいと願う少年、ヴァン。
彼に正義感はない。あるのは、前世の記憶と、母が遺した『物理法則を応用した高圧魔力』という危険な理論だけだ。
敵の大軍が迫る中、ヴァンは剣も振るわず、補給線と心理を切り裂く。
結果、敵軍は撤退。代償も、喝采も、彼には無意味だった。
だが、その「効率的すぎる勝利」は帝国の目に留まり、彼は最高峰の『帝国軍事学院』へと引きずり出される。
「英雄になりたいわけじゃない。生き残りたいだけだ」
謎の仮面メイド『シンカク』、命を取引に差し出した狼耳の少女『アイリ』。
少年は選択する。正義ではなく、最も費用対効果の高い道を。
これは、合理が英雄譚を侵食していく、学園ミリタリーファンタジー。
【※作者は日本語を勉強中の外国人です。翻訳ソフトと辞書を駆使して執筆しています。至らない点もあるかと思いますが、物語を楽しんでいただければ幸いです。】
ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします
ランド犬
ファンタジー
異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは
――〈ホームセンター〉
壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。
気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。
拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?
婚約破棄された公爵令嬢は冤罪で地下牢へ、前世の記憶を思い出したので、スキル引きこもりを使って王子たちに復讐します!
山田 バルス
ファンタジー
王宮大広間は春の祝宴で黄金色に輝き、各地の貴族たちの笑い声と音楽で満ちていた。しかしその中心で、空気を切り裂くように響いたのは、第1王子アルベルトの声だった。
「ローゼ・フォン・エルンスト! おまえとの婚約は、今日をもって破棄する!」
周囲の視線が一斉にローゼに注がれ、彼女は凍りついた。「……は?」唇からもれる言葉は震え、理解できないまま広間のざわめきが広がっていく。幼い頃から王子の隣で育ち、未来の王妃として教育を受けてきたローゼ――その誇り高き公爵令嬢が、今まさに公開の場で突き放されたのだ。
アルベルトは勝ち誇る笑みを浮かべ、隣に立つ淡いピンク髪の少女ミーアを差し置き、「おれはこの天使を選ぶ」と宣言した。ミーアは目を潤ませ、か細い声で応じる。取り巻きの貴族たちも次々にローゼの罪を指摘し、アーサーやマッスルといった証人が証言を加えることで、非難の声は広間を震わせた。
ローゼは必死に抗う。「わたしは何もしていない……」だが、王子の視線と群衆の圧力の前に言葉は届かない。アルベルトは公然と彼女を罪人扱いし、地下牢への収監を命じる。近衛兵に両腕を拘束され、引きずられるローゼ。広間には王子を讃える喝采と、哀れむ視線だけが残った。
その孤立無援の絶望の中で、ローゼの胸にかすかな光がともる。それは前世の記憶――ブラック企業で心身をすり減らし、引きこもりとなった過去の記憶だった。地下牢という絶望的な空間が、彼女の心に小さな希望を芽生えさせる。
そして――スキル《引きこもり》が発動する兆しを見せた。絶望の牢獄は、ローゼにとって新たな力を得る場となる。《マイルーム》が呼び出され、誰にも侵入されない自分だけの聖域が生まれる。泣き崩れる心に、未来への決意が灯る。ここから、ローゼの再起と逆転の物語が始まるのだった。
転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜
みおな
ファンタジー
私の名前は、瀬尾あかり。
37歳、日本人。性別、女。職業は一般事務員。容姿は10人並み。趣味は、物語を書くこと。
そう!私は、今流行りのラノベをスマホで書くことを趣味にしている、ごくごく普通のOLである。
今日も、いつも通りに仕事を終え、いつも通りに帰りにスーパーで惣菜を買って、いつも通りに1人で食事をする予定だった。
それなのに、どうして私は道路に倒れているんだろう?後ろからぶつかってきた男に刺されたと気付いたのは、もう意識がなくなる寸前だった。
そして、目覚めた時ー
無能と蔑まれ敵国に送られた私、故郷の料理を振る舞ったら『食の聖女』と呼ばれ皇帝陛下に溺愛されています~今さら返せと言われても、もう遅いです!
夏見ナイ
恋愛
リンドブルム王国の第二王女アリアは、魔力を持たない『無能』として家族に虐げられ、厄介払いとして敵国ガルディナ帝国へ人質に送られる。死を覚悟した彼女だが、あまりに不味い帝国の食事に耐えかね、前世の記憶を頼りに自ら厨房に立つことを決意する。
彼女が作った温かい家庭料理は、偶然離宮を訪れた『氷の皇帝』レオンハルトの孤独な心を癒していく。やがてその味は堅物騎士団長や宰相をも虜にし、食べた者を癒す奇跡から『食の聖女』と讃えられるように。
価値を知った故郷が「返せ」と言ってきたが、もう遅い!
これは、料理で運命を切り開き、最強皇帝から世界一甘く溺愛される、美味しい逆転シンデレラストーリー。
戦姫のトロイメライ~断罪される未来が視えたので先に死んだことにしました
志熊みゅう
恋愛
十三歳の誕生日、侯爵令嬢エディット・ユングリングは、自分が死ぬ瞬間を"夢"に視た。
卒業舞踏会で、婚約者であるフィーラ帝国・第一皇子マティアス殿下から、身に覚えのない罪で断罪され、捕らえられる。傍らでは見知らぬピンクブロンドの令嬢が不敵に微笑む。貴族牢のある北の古城に連行される途中、馬車ごと“死の谷”へと落ちていった――そんな妙に生々しい夢。
マティアス殿下は聡明で優しく、エディットを大切にしているように見えた。だから誰もその"夢"のことを気に留めなかった。しかし、兄の怪我、愛猫の死、そして大干ばつ――エディットの"夢"は次々と現実になっていく。ある日、エディットは気づく。この"夢"が、母の祖国・トヴォー王国の建国の軍師と同じ異能――"未来視"であることに。
その頃、一年早く貴族学院に入学したマティアス殿下は、皇宮から解放され、つかの間の自由を知った。そして、子爵令嬢ライラに懸想するようになる。彼女は、"夢"の中で冷酷に微笑むあの令嬢に瓜二つ。エディットは自分が視た"夢"が少しずつ現実になっていくことに恐怖した。そんな時に視た、黒髪の令息が「愛しているよ」と優しくはにかむ、もう一つの『未来』。エディットは決心する。
――断罪される未来を変えたい。もう一つの未来を自分で選び取る。
彼女は断罪される前に、家族と共に自らの死を偽装し、トヴォー王国へと身を隠す。選び取った未来の先で、エディットは『戦姫』として新たな運命の渦に飲まれていく――。
断罪の未来を捨て、愛する者のために戦う令嬢の恋愛ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる