史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

文字の大きさ
107 / 1,141
第三章 王族決闘編

104話 一進一退の攻防

しおりを挟む


「せぇええええ!」

「……」

 大声を上げて迫る私と、無言のままに淡々とそれを捌くゴルドーラ。周囲には、まるで金属がぶつかりあったような激しい音が響いている。
 けれど、衝突しているそれらは金属ではない……魔力だ。

 ゴルドーラの正面へと突っ込んだ私は、魔力強化した杖と『魔力剣マナブレード)』をそれぞれ片手ずつに、振るっていた。どちらも、剣のように鋭いが実態は魔力だ。
 両手に持ったそれはいわば二刀の剣。それを振るい、ゴルドーラへと迫るが……

 ゴルドーラは、同じく魔力強化した杖一本で、私の猛攻を全て捌き切っている。

「押し……切れない!」

「全身への魔力強化で全身の動きを大幅に強化。杖と魔導具で、俺に反撃の隙を与えまいというわけか……
 なかなかに手強いな」

「余裕ぶっちゃって!」

 私の攻撃を全て捌く反射神経、動体視力。焦り一つ見せないなんて……!
 しかも、相手は杖一本……つまり、片手のみしか使っていない。

 ということは、残された片手は今自由になっているわけで……

「っ……」

「どうした、気が散っているぞ」

「ちぃ」

 いやらしいのが、自由な片手は私を攻撃するわけでもなく……攻撃する"かもしれない"、と思わせる程度にしか動かしていないということ。
 これは、私の注意力を分散させるためのものだ。いっそのこと、片手でも攻撃なりしてくれたら、そっちを防御することに集中できるのに……

 中途半端に自由なだけで、いちいち気にしないといけない!

「……ほぉ」

 そんな中、なぜかゴルドーラが感心したように、言葉を漏らす。
 それに一瞬気を取られた。その隙を狙ってきたのか、今度こそ放たれた拳が、私の顔面を狙う。

 とっさに、『魔力剣』でガードする。刀身と拳とがぶつかり合い……衝撃までは殺せず、後ろにふっ飛ばされる。
 けれど、そのまま飛ばされるわけにもいかない。すぐさま一時的な浮遊魔法を使い、動きを止め、その場に着地。

 正面を見据えると、ゴルドーラは私を殴った方の手を、握ったり開いたりしている。

「いくら決闘で結界の中とはいえ、女の子の顔を躊躇なく狙う?」

「……なるほどな」

 私の言葉を無視し、ゴルドーラは感心したようにうなずく。

「その魔導具は、身体強化の魔力も吸収するわけか。
 道理で、違和感があったはずだ」

 納得がいった、とゴルドーラ。今の衝突で、確信したらしい。
 『魔力剣』は魔力強化の魔力も吸収する。それが魔法である以上可能だ。どうやら、さっき杖で打ち合っているときに、杖を強化した魔力が減っている違和感を感じていたらしい。

 そして、身体強化した拳で、『魔力剣』の刀身を殴った。その際、身体強化の魔力もわずかながら吸収されたわけだ。

「やはり面白い魔導具だ。これまで様々な魔導具を見てきたが、そんなものは初めてだ。
 今度、それを作った人物と話をしてみたいものだな」

「……きっと喜びますよ」

 第一王子にそこまで評価されるなんて、ピアさんも嬉しいだろう。本人が萎縮するかはわからないけど……ピアさんだし、第一王子相手でも堂々としてそうだ。
 考えてみれば、ピアさんは二年生。つまり、この学園に在籍してまだ一年だ。たった一年で、こんなすごい魔導具を作り出すなんて……すごい!

 ……それにしても、さっきから攻撃が全然当たらないなんて。

「まるで、魔導剣士みたい」

 まあ、私が戦ったことのある魔導剣士はダルマスだけだし、もっと強い人がどんな感じかはわからないけど。
 それでも、あれだけ攻撃したのに全て捌き切るなんて、並の芸当じゃない。

 私の言葉が聞こえたのだろう。ゴルドーラはピクリと肩を反応させて……

「魔導剣士……? いいや、まったく違う」

 と、言った。

「杖に魔力を込めれば、なるほどそれはあるいは剣のように映るかもしれない。だがな、これは剣ではない。一方で、魔導剣士は剣を得物とする者だ。
 それを剣のように使うことと、魔導剣士とでは意味合いがまったく違う。軽はずみな言動は慎むといい」

 さらに続けて、こんなことを言うのだ。
 た、ただ私は、ちょっと思ったことを言っただけなのに……なんでこんなこと、言われなきゃいけないの!?

 ムキッとした直後に、ゴルドーラの周囲には光の弾が浮かぶ。
 それは、さっきの光景と同じもの。

「無駄ですよ。いくら魔法を撃ってきても、この『魔力剣』で吸収すれば意味はありません」

「だろうな。
 ……それが、無限に魔力を吸収し続けられるのなら!」

 叫ぶと同時に、光の弾は放たれる。しかも、さっきより数が多い。
 あの、ゴルドーラの口振り……やっぱり、試してる! 魔力を吸収できる許容量があると、それを確かめようとしている!

 もしも、この剣はどんな魔法でもどれだけでも吸収できますよ……とアピールしたいなら、魔力を吸収させ続けるべきだ。
 けれど、それを続けたら許容量を超えてしまう!

「せい!」

 ここは……魔力吸収と、攻撃を防ぐのを、同時にやるしかない! まずは、魔力吸収。
 続けて、光の弾に向けて杖を向ける。さっきは、魔力壁を壊されてしまったから、防御でかわすのはなしだ。

 攻撃を、受け流して……

「ほぅ」

 風を操り、風の道を作ることで光の弾の軌道を変える。これで、攻撃が当たるのは防げる。
 だけど、やっぱり数が多い!

「どうした、やはり魔力吸収には限界があるか!?」

「っ」

 魔力を際限なく吸収できるなら、別に他の方法で攻撃を防ぐ必要はない……そうしない時点で、答えを言っているようなもの。
 少なくとも、ゴルドーラはそう感じたらしい。

「接近戦は不利のようだ、悪いがこのまま押し切らせてもらう」

「くっ!」

 接近戦になれば、ゴルドーラの体に触れた瞬間、『魔力剣』は魔力を吸収する。それをさせないために、離れて戦うことを選んだ。
 そのやり方は、多分正解だろう。現に、私が動きを制限されている。

 頭がキレる人だなぁ!

「それに……それは、魔力を吸収する、のだろう?
 ならば、物理攻撃には弱いだろう」

「!」

「不死たる身体を形成されし人造なる人形よ、我が下僕しもべとなりて眼前に姿を現せ!」

 私が光の弾を捌いている間に、ゴルドーラは杖を構えて……詠唱を、開始する。
 これは、魔術を使うための詠唱。

 この『魔力剣』は、大気中の魔力を使う魔術は吸収できないが、ゴルドーラはそれを知らない。なので、闇雲に魔術を撃つわけではないはずだ。
 それに、さっきゴルドーラは「物理攻撃に弱い」と言った。

 本来魔術には、物理的な要素は必要としない。だけど例外はある。
 そして、ゴルドーラは……あの兄妹の、兄だ。

人造人形ゴーレム!!!」

 詠唱が完了し、そして魔術が放たれる……瞬間、見ている景色に異変が起こる。
 固い地面の一部が……ゴルドーラの周辺が、まるで波のように揺れ……次々と、形成されていく。

 泥が、土が、石が……様々なものが、くっつき、それが人の形を成していく。それは、間違いなくゴーレム……コーロランのような巨大なものではなく、コロニアちゃんの人並みの大きさの複数ゴーレムに近い。
 ただし……その数は、十にも登る。単純に、コロニアちゃんの倍だ。

「さあ、行け!
 そして、見せてみろ。これをどう切り抜けるか」

 その合図と共に、ゴーレムは……一斉に、私に向かってくる。もちろん、光の弾は撃たれ続けるままで。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

追放したんでしょ?楽しく暮らしてるのでほっといて

だましだまし
ファンタジー
私たちの未来の王子妃を影なり日向なりと支える為に存在している。 敬愛する侯爵令嬢ディボラ様の為に切磋琢磨し、鼓舞し合い、己を磨いてきた。 決して追放に備えていた訳では無いのよ?

わけありな教え子達が巣立ったので、一人で冒険者やってみた

名無しの夜
ファンタジー
教え子達から突然別れを切り出されたグロウは一人で冒険者として活動してみることに。移動の最中、賊に襲われている令嬢を助けてみれば、令嬢は別れたばかりの教え子にそっくりだった。一方、グロウと別れた教え子三人はとある事情から母国に帰ることに。しかし故郷では恐るべき悪魔が三人を待ち構えていた。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

濡れ衣を着せられ、パーティーを追放されたおっさん、実は最強スキルの持ち主でした。復讐なんてしません。田舎でのんびりスローライフ。

さら
ファンタジー
長年パーティーを支えてきた中年冒険者ガルドは、討伐失敗の責任と横領の濡れ衣を着せられ、仲間から一方的に追放される。弁明も復讐も選ばず、彼が向かったのは人里離れた辺境の小さな村だった。 荒れた空き家を借り、畑を耕し、村人を手伝いながら始めた静かな生活。しかしガルドは、自覚のないまま最強クラスの力を持っていた。魔物の動きを抑え、村の環境そのものを安定させるその存在は、次第に村にとって欠かせないものとなっていく。 一方、彼を追放した元パーティーは崩壊の道を辿り、真実も勝手に明るみに出ていく。だがガルドは振り返らない。求めるのは名誉でもざまぁでもなく、ただ穏やかな日々だけ。 これは、最強でありながら争わず、静かに居場所を見つけたおっさんの、のんびりスローライフ譚。

平凡な王太子、チート令嬢を妻に迎えて乱世も楽勝です

モモ
ファンタジー
小国リューベック王国の王太子アルベルトの元に隣国にある大国ロアーヌ帝国のピルイン公令嬢アリシアとの縁談話が入る。拒めず、婚姻と言う事になったのであるが、会ってみると彼女はとても聡明であり、絶世の美女でもあった。アルベルトは彼女の力を借りつつ改革を行い、徐々にリューベックは力をつけていく。一方アリシアも女のくせにと言わず自分の提案を拒絶しないアルベルトに少しずつひかれていく。 小説家になろう様で先行公開中 https://ncode.syosetu.com/n0441ky/

処理中です...