史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第四章 魔動乱編

120話 新生生徒会

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 ……私とゴルさんの決闘から、早いものでひと月が経った。あれから、特に大きな事件が起きることもなく、何事もなく平和に過ぎていった。
 ただ、決闘の次の日から、私は大忙しだった。

 クラスメイトからいろいろ聞かれるのは連日のこと。みんな、同じような質問をしてきたり、飽きないものだ。
 それと、早い段階で私は、ピアさんのいる研究室を訪れた。というのも、借りた魔導具を壊してしまったのだ……一言、謝らなければいけない。
 それを話題に出したんだけど……


『んん? にゃははは、いいっていいってそんなの。元々あれは失敗作って言ってたし、そもそも貸したんじゃなくてあげたつもりだったし。
 それに、あの決闘でいいデータが手に入ったからね! むしろアタシが感謝したいくらい!』


 ……と、笑いながら許してくれた。本当にいい人だよ。
 けど、できればサラマンドラの攻撃を吸収できるかどうかの結果は見たかった、とはぼやかれた。ただの使い魔なら自分でも試せるが、サラマンドラほどのものとなるとそうそう手に入るものではないのだ。
 ちなみに、使い魔の攻撃自体は、吸収できるらしい。なら多分、許容量の問題でサラマンドラは無理だろう。

 その数日後、私はゴルさんに呼び出され……正式に、生徒会に入ることが決まった。それを、全校生徒の前で発表するという、とんでもないことまでやった。
 わざわざ全校生徒集めて、新メンバー私の発表するんだもんなぁ。しかも私から一言。これまで、師匠と二人暮らししてきた私に、あんな大勢の前でのスピーチは難易度高いって。なんとかなりはしたけど。

 ともあれ、無事生徒会に入った私は、日々クラスで授業を受け、放課後はお茶会をしたり魔導の訓練をしたり、そして生徒会の仕事をしたりしていた。
 それは、今日も変わらない。

「おい一年、あそこに置いといた資料は?」

「あ、ここに移動しときました」

「一年、こことここの修正を」

「はいただいまー」

「おーい一年ー、喉乾いたー、ジュース買ってきてー」

「はいは……って、それは自分で行ってください!」

 私の仕事は……いわば、先輩たちのフォロー。というか雑用のようなものだ。
 私はてっきり、もっと大きな役割を与えられると思ったんだけど……いや、与えられてもやり方わからないから、別にいいんだけどさ。

 あとは、みんなの仕事見て覚えろ、ってことかな。

「さて……皆、そろそろ一息つこうか」

「おーう」

 上級生だらけの生徒会、どうなることかと一時は思ったけど、思いの外うまくやれている。
 あとから聞いた話だけど、私を生徒会に入れるっていうのは、元々はゴルさんの独断だったらしい。私に保健室で話した後、生徒会メンバーにも伝えたとのこと。

 みんな、最初は当然驚いていた……けど、決闘の様子を見て、私の実力は認めていてくれたらしく、反対する人はいなかった。
 ……一人を除いて。

「はぁ、うめえ。一年、紅茶入れるのうまくなったな」

「それはどうも」

 席に座り、私の淹れた紅茶を飲んでおいしそうに息を漏らすこの人は、タメリア・アルガ。この中じゃ一番フランクで、私にもなれなれしい。
 まあ、淹れた紅茶をおいしく飲んでもらえるのはありがたいけどね。師匠と暮らしていた頃、紅茶だって淹れたことはある。私の自慢の一つだ。

 多分、この生徒会の中で一番話しやすい。

「しかし、ゴルっちもいい人材を連れてきたわなぁ。猫の手もほしいところじゃったから」

 ゴルさんのことを『ゴルっち』を親し気に呼ぶこの人は、メメメリ・フランバール。タメリア先輩とは別の意味で、親しみやすい。
 狼型の亜人で、なぜかおじいちゃん口調。初めて見たときは、強面な外見に泣くところだった。

 その見た目と口調だけで判断するなら、間違いなく三年生ではない。

「彼女の魔導の腕は認めていますが……
 ゴルドーラ様、まさか他意などございませんね?」

「他意? 決闘の結果を考慮しただけだが」

「……ならいいです」

 他のみんなが座っている中で、ゴルさんの側でまるで仕えているように立っているのは、生徒会副会長にして、なんと第一王子ゴルドーラ・ラニ・ベルザの婚約者だ。名前を、リリアーナ・カロライテッド。
 凛とした佇まい、つやつやの肌、すらりとした体型、白髪のポニーテールを腰まで伸ばしている……これまで、かわいい子にはたくさん会ってきたけど、こうも美人だ、と思える人は初めてだ。

 見た目同様、中身もクールだ。だけど、生徒会に入ってから長くはない日数を過ごした私でもわかることがある……
 この人、ゴルさんのこと大好きだ。本人が隠しているかは、まあわからないけどね。
 コーロランは、婚約者と仲が良くないってコロニアちゃんに聞いたけど、この二人……少なくともリリアーナは、そうではないようだ。

 ちなみに、この三人とは、生徒会に入る前に一度面識がある。それは、私がゴルさんと初めて会ったときのこと。
 クラス対抗の試合終わりに、コーロランがゴルさんに会いに行った。それを尾けていった私だけど……そのとき、ゴルさんの側には三人の生徒がいた。男の人二人、女の人一人で、ゴルさんの友達なのだろうかと思ったものだが。

 その三人が、生徒会のメンバーだったわけだ。
 生徒会に所属しているのは、ゴルさんとこの三人を含めた四人の三年生。そして……

「……」

「あのー……おいしいですか?」

「……まあまあだな」

 先輩たちとは違って、静かに紅茶を飲むこの人。生徒会唯一の二年生メンバー。シルフィドーラ・ドラミアス。通称シルフィと呼ばれている。
 曰く獣人らしいけど、まだ獣の姿を見たことがない。どうやら私のことを信用していないらしく、必要以上に自分のことを話そうとしない。どころか、他のメンバーにも口止めしている始末。

 きつめのつり目が、度々私を睨んでいる気がするのは、気のせいではないだろう。
 私はこの人とは初対面のはずだけどな。


『シルフィはああいう奴だ』


 と、ゴルさんに言われた。どうやら、私だけがああいう態度を取られるわけではないらしい。
 とはいえ、同じ生徒会メンバーなんだし、あんなにつんけんしないでもいいのになぁ。

 その後も他のメンバーに話を聞いていると……彼は、ゴルさんを尊敬しているようだ。そんなゴルさんに決闘を挑んだ愚かな私のことを、気に入らないらしい。
 こりゃ、ゴルさんが自分は負けた、なんてことをポロッと漏らしたら、大変なことになるな。

 ま、とにかく、だ。以上、この五人のメンバーに、私を入れた六人のメンバー。
 これが、新生生徒会……というやつらしい。
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