史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第四章 魔動乱編

136話 それは果たして誰の記憶か

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 銀色の髪……そんな色の髪をしているのは、この学園にはたくさんいる。なんにも、不思議がることじゃない。……そう、銀色の髪"だけ"なら。
 ……なぜだろう。なんだか、気になる。すでに、銀色の髪は校舎の角の向こう側に隠れてしまった。

 ……気になる。

「ん? おい、どこに行くエラン」

「すみません、皆さん! えっと、あの……ちょっとトイレに!」

「えぇ!? って、トイレはあっち……
 ちょっとエランちゃーん!?」

 気づけば私は、走り出していた。下手な言い訳でごまかせただろうか。
 幸いと言うべきか、みんな事件のことを考えたり調べたりしているからか、私を見る人はいても声をかけてくる人はいない。

 走って、走って……銀色の髪を見つけた場所の、その角を曲がる。
 その先は、行き止まりだ。壁を登って上にでも行かない限り、そこで足止めされることになる。

 だから、だろうか……その人物は、そこにいた。ここが行き止まりだと知らなかったのか、それとも……私を、待っていたのか。
 びゅう、と吹く風になびく、銀色の髪。それによって露わになる耳は……尖っていた。さらには、顔や手など、見える部分の肌は褐色だ。

 間違いない……この特徴を持っている、種族は……

「ダーク、エルフ……」

 銀色の髪、尖った耳、褐色の肌、そして輝く緑色の瞳。その特徴が、彼……だと思う……を、ダークエルフだと示していた。
 そのダークエルフが男なのか判断に戸惑うのは、中性的な顔立ちだからだ。正直、男でも女でもイケると思えるくらい。

 ルリーちゃんのように、フードとかで髪を隠してはいないのか……

「って、ルリー……ちゃん?」

 こっちをじっと見るばかりで、言葉を発しないダークエルフは……なんとなく、ルリーちゃんを思わせる。雰囲気というか、見た目というか?
 それとも、単に私がダークエルフをルリーちゃんしか知らないから、そう感じているだけだろうか。

 その瞬間、ダークエルフの肩が、少し動いたような気がした。

「……お前……」

 ふと、そのダークエルフが口を開いた。ルリーちゃんの名前にまさか反応したのか、それとも睨み合いに痺れを切らしたのか。
 声を聞くと、男性のものだとわかった。どこか落ち着いた、優しい声だ。

 ……聞き覚えのある、声だ。


『――――――……ルラン、お願い』

『あぁ、行くぞ――――――』

『やだよぅ、お母さん! お父さん! 離して、お兄ちゃん!』


 ……この声は……この、記憶は……

「ルラン……お兄ちゃん……?」

「!」

 あれ、今私……なんて言った? ルラン……お兄ちゃんって、言ったのか?
 その名前は、昨日見た夢の中で聞いた名前。夢か、それとも正確には記憶なのかは、わからなかったけど。

 でも、なんで今、そんなことを……

「お前は……誰だ」

「へ?」

 自分でも気づかないうちに、夢の名前を言っていた。それを聞いたからだろうか、目の前のダークエルフの雰囲気が、変わった。
 これまでなにも感じていなかったのに……若干の、敵意を。

 ……この人、強い。この場でやり合っても、正直……

「なぜ、オレの名前を知っている。妹から聞いたのか?」

「へ?」

 一触即発の雰囲気。だけど、ダークエルフの言葉に私は唖然とした。
 自分の名前……ってことは、ルランが彼自身の名前だと、認めたのだ。私の夢の、名前……夢じゃ、なかった?

 いや、それ以上に……妹? 妹って誰よ。
 ダークエルフの妹、つまりその子もまたダークエルフだ。私が知っているダークエルフは一人しかいない。
 それに、さっき彼が反応を示した名前があった。


『って、ルリー……ちゃん?』


 私は彼を見て、第一印象にルリーの雰囲気と似たものを感じた。だからつい、その名前を呼んでしまった。
 ルリーちゃんの名前に反応を見せ、そして自分の名前は妹から聞いたのか、と言った。

 この二つからわかることは……つまり……

「ルリーちゃんの……お兄さん?」

 言って改めて、二人がそっくりなことに気づく。見た目だけの問題じゃなくて、雰囲気、髪をいじる仕草、立ち姿、魔力の感じ、その他諸々が。
 この人本当に、ルリーちゃんのお兄さん?

 ……ってことは、だよ。ちょっと待ってよ。このダークエルフがルリーちゃんのお兄さんで、名前がルランで……私の夢に出てきた名前もルランで、彼にも妹がいて……
 あれが、単なる夢じゃなく、記憶だったとして……それが、私以外の記憶だったとしたら……


『ルリー……ルラン、お願い』

『あぁ、行くぞルリー』

『やだよぅ、お母さん! お父さん! 離して、お兄ちゃん!』


 ……まさかあれは、ルリーちゃんの……記憶!?

「おい」

「!」

「質問に答えろ」

 あ、まずい……目の前のダークエルフ放置してた。
 若干の敵意を感じるダークエルフだけど、いきなり攻撃を仕掛けてこないあたり、話し合いの余地があると思いたい。

 私はなるべく、相手を刺激しないように話す。

「え、えっと……ルリーちゃんのお兄さん、なんですか?」

「質問しているのはこちらだ」

 あちゃあ、選択肢ミスったかなぁ……いやでも、ダークエルフさんの質問に答えるには、ここはっきりさせておかないといけないし……
 いや、ここは自分の推測を信じろ。彼はルリーちゃんのお兄さんだ。

「わ、私はルリーちゃんのお友達の、エラン・フィールドという……」

「……友達? あいつの?」

「! はい!」

 自己紹介をする前に、彼はまたも反応を示した。間違いない、妹イコールルリーちゃんで正解だ!
 だったら、もうこの人は知らないダークエルフじゃない! 友達のお兄さんだ!

 ……というか、なんかさっきから肩が震えているような……

「ぷっ……あっははははは!」

「え、え?」

 お兄さんは、いきなり笑い始めた。いや、なんで!? なんか面白かった!?
 てか、そんな大きな声で笑ってたら、人が来ちゃうよ!

 オロオロする私をよそに、お兄さんはひとしきり笑ったあと……

「はー、そうかそうか……友達、ね。
 それはまた……随分と滑稽なことだ」

「え」

 目尻に浮かんだ涙を拭いつつ、そんなことを言った。
 滑稽……ルリーちゃんと友達なのが、滑稽って言ったのか?

 それは、どういう……

「いや失礼、気を悪くしないでくれ。
 だが、当然だろう? 世間からの我々ダークエルフの扱いを知って、それでも友達などと……なにを企んでいる?」

「たくら……え?」

「妹は純粋な子でね。ダークエルフの汚名を拭うために立派な魔導士に、という理由でこの学園に入学したようだが……
 そもそも、我々を迫害した人間と歩み寄る必要などないのだ。わかるだろう?」

 なんだ、この人……妹想いの優しいお兄ちゃん……って、感じのことを言っているようにも聞こえるんだけど……
 なんだろう、なんか……うまく言葉に出来ないけど、なんかやばい!
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