史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第四章 魔動乱編

169話 治安のよろしくない王都

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 ……ルリーちゃんとナタリアちゃんの部屋にお泊まりをして。それから、しばらくの日数が経った。
 その間、"魔死事件"は起こっていない。もしかして、ルランがリーサに見つかったことが関係しているのかな、とも思う。
 リーサは、もうルランに好き勝手させるつもりはないように言っていた。ルランも、リーサから逃げるのに必死で他のことに気を取られている余裕はないのかもしれない。

 もしかしたら、もうこの国にはいないのでは……そう思ってしまうくらいだ。
 もちろん、事件の犯人のことを知らない世間は、またいつ事件が起こるかの恐怖に怯えているが……それも、だんだん落ち着いてきたように思う。

 最後に起こった事件は、学園でのもの。学園で事件が起こったことは規制されているけど、それもどこまで効果があるのかわからない。
 学園の生徒は、最初こそ世間と同じく事件の恐怖に怯えていたが、こちらもやはり落ち着きを取り戻している。中には、そうでない人もいるけど。

 事件の調査に進展はない。いいことなのだけど、事件が起こらないから新しい手がかりもないのだ。
 "魔死事件"に対して、国内で若干の落ち着きが見られた……そんな頃。

「はー、今日は一人だし、なにしよう」

 今日は休日、私は学園の外にいた。申請さえ出せば、休日に外を出歩くことは可能だ。
 本当なら、クレアちゃんやルリーちゃんたちを誘いたかったんだけど……みんな、それぞれ用事があるらしい。見事に私一人がお暇になったわけだ。

 なので、こうして王都をぶらぶらしている。思えば、いつも周りに誰かいたし……昔は師匠と暮らしていてほぼ二人きりだったから、一人になるのは、すごく久しぶりに感じる。

「みんなにお土産でも……いやでもなぁ」

 王都に住んでいるみんなに、王都で買ったお土産を渡すというのも、なんだかしっくりこない。
 ペチュニアにでも行ってみようか……いや、クレアちゃんの用事は家族で外出って話だったから、ペチュニアに行ってもタリアさんはいないかも。
 だったら、ガルデさんたちがいるかもわかんないしなぁ。

 ……あれ、もしかして私、王都の知り合い少ない?

「っと……ん?」

 いやまだ王都に来て深く馴染んでるわけでもないしほぼ学園寮暮らしだったし知り合いが少ないのは仕方ない……と自分に言い聞かせていたところで。
 なにやら、騒がしい声が耳に入る。この先かぁ。

 野次馬根性、ってわけじゃないけど、その声の方向へと私は足を進める。
 そういえば、ルリーちゃんと会ったのも……こうして、騒がしい声に導かれて、だったな。あのときはいじめの現場だったけど、まさか……

 いやいや、こんな道の真ん中で、いじめなんてないでしょ。あのときは、学園内のひとけのないところだったし、こんな人の往来のある場所でそんなこと……

「おうおう、いてーな、足が折れちまったよ! どうしてくれるんだあぁん!?」

 ……あったよ……しかもかなりその……なんていうか、アレな現場が。
 見たままを話すと、大柄のスキンヘッド男が、しきりに自分の右足を擦っている。その正面には、帽子を被った小さな女の子。

 今の台詞を聞くに、あの女の子がスキンヘッド男にぶつかってしまって、スキンヘッド男の足が折れた……と。こういうことだ。
 まあ……嘘だな。というか言いがかりが過ぎる。

 こんな街のど真ん中で、よくもまあ自分よりも小さな女の子にあんな態度を取れるもんだ。

「こりゃあ、弁償してもらわねぇとなぁ。治療費出しな!」

「そ、そんな……私、少ししかぶつかって……
 というか、あなたからぶつかって……」

「アニキにケチつけようってのかぁ!?」

 スキンヘッド男の背後にいるのは、トカゲの亜人。いや、トカゲというよりヤモリかなあれは。二足歩行のヤモリ。
 要はスキンヘッド男の取り巻きなのか。揃って、女の子に治療費を要求している。

 周囲は……人の目はあるけど、助けに行こうって人はいないな。これだけの人がいるのに……

「お、おい、誰か助けに入れよ」

「無理だ……あいつ、Bランクの冒険者グリムロードだろ? とてもじゃねぇけど割って入れねぇよ」

 ……ほうほう。みんなが助けに入らない、いや入れない理由はそれか。あのスキンヘッド男は、冒険者。それもBランクだという。
 冒険者のランクは、例外のSランクを除けば四段階。一番下からD、C、B、そしてAランクと上がっていく。

 つまりは、あのスキンヘッド男は上から二番目に強いランクの冒険者ってことになる。一般人じゃ気後れしてしまうのも無理はない。
 ……あんなのが、ガルデさんたちと同じランクなのか。

「あの子には、かわいそうだけど……」

 ……自分に被害が及ぶことを恐れて、誰も動こうとしない。
 憲兵さんが来てくれれば……でも、それまでの間、あの子が無事でいられる保証はない。スキンヘッド男は、今にも掴みかかりそうだ。

 見てられない、よね。

「わ、私、お金そんなに、持ってなくて……」

「うるせえ、いいから有り金全部……」

「はいはい、そこまでそこまで」

 二人の言い争い……というよりスキンヘッド男が一方的に捲し立ててるだけだけど、ともかく私は二人の間に入る。
 もちろん、女の子を背に、庇うようにしてだ。

「あぁ? なんだてめぇ」

「いやぁ、ちょっとあまりに無様な姿を見ていられなくて。
 お兄さん、こんな小さな子に当たり屋なんて、恥ずかしくないの?」

「んだとコラァ! アニキがデマカセ言ってるってのかぁ!?」

 私が女で、それに男たちにとってはこの子より少し大きい程度しかないからか、男たちの態度は変わることはない。
 見た目で侮られていることに対してちょっとムカつくけど……我慢だ我慢。

 私は、わざとその場限りの笑顔を作る。

「ほら、まだこんなに小さいんだから。少しぶつかったくらい水に流してあげようよ」

「るっせぇな、ガキは黙ってろ! 俺はそっちのガキと話してんだ!
 それとも、てめえが慰謝料支払ってくれんのかぁ!?」

 ……だめだ、こっちの言葉全然聞いてくれないよ。
 いや、我慢だよ。我慢だ私。暴力に訴えてもなにもならないからね、言葉で平和的に解決しないと。

 そう、私は平和的に解決できる女。なんか最近、学園内ではクラスメイトや王族構わず決闘やらかす狂犬、みたいな扱いをされているけど。
 私は、我慢できる女だ。

「……おぉ? よく見りゃてめぇ、かわいい顔してんじゃねえか。
 なんなら、俺の相手でもしてくれるってんなら、それでも構わね……」

「はぁ? よく見なくてもかわいいだろ、目ん玉腐ってんのか」

「!?」

 あ、つい口をついて乱暴な言葉が出ちゃった。口を押さえてももう遅いか。
 でも、仕方ないじゃん……私がかわいい美少女なのは当然として、その前に「よく見りゃ」なんて付けるんだから。目ん玉腐ってるんじゃないかと思うよ。

 うーん……一回言っちゃったし。あとはもう、なにを言っても同じかぁ。

「この子に絡む性根も腐ってるし、目ん玉も腐ってるとか、こんなのがBランク冒険者とかがっかりだよ。
 それに、話し方にも品性がないし……なんなの、神様が作った失敗作なの?」

「っ、てめっ……!」

 とりあえず、言いたいことを言ってやった。さて、どう出る?

 私の言葉が聞いたのか、スキンヘッド男は額に青筋を立ててピクピク震えている。顔も真っ赤になっているし……
 あー……これは……

「怒った?」

「このガキなめやがって!」

 私の態度がよほど気に入らなかったのか、スキンヘッド男は私に向かって拳を振り上げる。周囲からは、悲鳴。
 大きな拳だ。拳だけで、私の顔の大きさくらいあるんじゃないか?

 振り下ろされた拳は、私を目掛けて放たれる。
 避けるのは簡単な安直な攻撃だけど……後ろに女の子いるからなぁ、避けられない。

 だったら……


 ドォン……!
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