史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第四章 魔動乱編

197話 再会と追及

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 私が見たこと、知っていることを話し、理事長室を後にする。私たちの部屋は、しばらく調査のために封鎖しているから、しばらくは別の場所で寝泊まりしてくれと言われた。
 もっとも、たとえ調査が終わって、部屋がきれいになったとしても、またあの部屋で前みたいに過ごせるかは、わからないけど。

 部屋を出た私は、このまま帰るよりも、少し散歩したいと考えて、校庭を歩く。
 誰も、いない……なんだか、不思議な気分だ。

 ……こうして一人になると、やっぱり考えちゃうな。いろんなこと。
 この、胸の中にあるもやもやを晴らすためにも、私はもう一度、ルランに会わないといけない。
 どこにいるかも、どうすれば会えるかも、わからないけれど。

「……ふぅ」

 見つけたベンチに、座る。当然他に座っている人は、いない。
 空を見上げる。青い空が広がっている。この青空の下眠ったら、気持ちいいんだろうなぁ。

 ……びゅうっ、と、少し強めの風が吹いて……

「こんにちは」

 ……隣から、声をかけられた。
 誰も座っていなかった、隣……そこには、一瞬のうちに、誰かが座っていた。

 その姿を、確認する。そこには、一人の女の子がいた……

「……リーサ」

「あはは、覚えててくれたんだ」

 褐色の肌に、銀色の髪を持つ女の子。ダークエルフである、リーサがそこにいた。
 あ、長寿のエルフに、子って言い方も失礼かな。

 "魔死事件"を起こしていた、ルランを追ってここまで来たらしいリーサ。ルリーちゃんの幼馴染でもある。
 そんな彼女が、いきなり現れた。ここは驚くところだ。

 ……なんだろうけど。

「ありゃ、あんまり驚いてない?」

「驚いてはいるよ。
 ただ、一日も経ってないのにいろんなことが起こり過ぎて、なんか感覚が鈍っちゃって」

「……そっか」

 ダークエルフは、世界から嫌われている種族だと、本人たちは言っていた。だから、人前に姿を現すことはない。
 ルリーちゃんだって、正体を隠す魔導具を使っているから、ダークエルフだとバレてはいない。

 そんなダークエルフのリーサが、このタイミングで私の前に現れた。偶然ではないことは、確かだ。

「いいの? こんなとこ誰かに見られちゃったら……」

「ちゃんと結界張ってるよ。それに、休校になったって聞いたから。人もいないみたいだし」

「……そうだね」

 お互いに、視線を合わせないままに話し合う。どちらも、まだ核心には触れていない。
 でも、このままじゃあ時間の無駄だ。聞きたいことが、あるんだ。

「いろいろ聞きたいことはあるけど……単刀直入に聞くね。
 ノマちゃんを……私の友達をあんな目に遭わせたのは、ルラン?」

「! ち、違う!」

 そのとき、私は深く意識していたわけではない……でも、出てきた私の言葉は、きっと今までに出てきたどの言葉よりも、冷たかっただろう。
 それに驚いたのか、それとも私の質問が見当違いだと言いたいのか、リーサは肩を跳ねさせて答えた。

 それは、ルランを庇っているとっさの嘘……ではないのは、なんでかわかった。

「これまでの……アナタたちが、"魔死事件"って呼んでる事件を起こしていたのは、ルラン。それは間違いない。
 でも、アナタの友達を傷つけたのは、アイツじゃない! ううん、エランちゃんと初めて会ったあの日から、アイツは事件を起こしていない! ワタシから逃げるのに必死だったのか、それともエランちゃんに会って思うところがあったのか、わからないけど……」

「……」

「だから……こんなこと言うのは、変だけど……アイツは、アナタの友達を殺そうとしていない。これは、信じて」

 必死に訴えるリーサの目は、嘘をついているようには見えない。
 もしそれが嘘だったならば、きっと私はリーサも許さなかっただろう。

 だけど、この言葉は嘘じゃない。それに、犯人はルランでもない。

「そっか…………はぁ、そっか」

「……疑わ、ないの?」

「ルランが犯人だとは、思ってなかった……って完全に思ってたわけじゃないけど。犯人だとは、思えなかったから。
 ……なんか変な言い方になっちゃったな」

 どうしてそう思ったのか、確証はない。でも、今回の事件は、今までの事件となにかが違う……そう、思ったのだ。
 あとは、そうだな……

「リーサが見張ってくれているなら、ルランがこんな派手なことをするとは思えなかったから、かな」

「……ふふ、なにそれ。
 ワタシたち、一回会ったばかりなのに」

「そうだね」

 一度しか会っていない相手を、こうして信じるようなことになっているのも、変な話だ。
 だけど、この子からは……人間に対して、ルリーちゃんのような怯えも、ルランのような怒りも、感じない。

 この子も、ルリーちゃんたちと同じように、つらい目に遭ったはずなのに。

「ところで、今日はなんの用? わざわざ私に、会いに来たんでしょ?
 まあ、私も確かめたいことがあったからいいんだけど」

「今、エランちゃんが聞いたことと同じだよ……エランちゃんのお友達を、あんな目に遭わせたのが、ルランじゃないって、伝えに来たというか」

「ふぅん……」

「あ。安心してね、ワタシはここに来たけど、だからってアイツの監視を怠っているわけじゃないから」

 事件の犯人が、ルランじゃないと……それを伝えるために、わざわざ来たっていうのか。
 なんというか、律儀だなぁ。

 ただ、これで事件を追う手掛かりがなくなったのも事実だ。
 ルランが犯人だったなら、リーサを拷問してでもルランの居場所を聞き出して、これまでの罪と一緒に反省させるところだったけど。

 ……ただ、疑問はある。いくら"魔死事件"のことが世間に広まっていたからっていっても、あの殺し方を簡単に、真似できるものか?
 "魔死事件"は、魔石を体内に入れられた人が"魔死者"になってしまうもの。だけど、魔石を体内に取り込むことで体内の魔力が暴走する……なんて、私でも知らなかったことだ。

「じゃあ、いったい誰が……?」
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