史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第四章 魔動乱編

210話 ダークエルフを庇うわけ

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「……ダーク、エルフ……」

 世間を騒がせていた、"魔死事件"……被害にあった者はみんな同じような現象だ。その人の持つ魔力が暴走して体内をぐちゃぐちゃに傷つけ……死に、至る。
 被害者は"魔死者"と呼ばれ、死因も犯人も……なにが起こって死んだか、以外のなにもかもがわからず、人々を恐怖させた事件。

 その犯人は、ダークエルフ。そう聞いて、ダークエルフの名をつぶやいたのは、いったい誰だっただろう。

「ダークエルフ……じ、実在しているんですの? エルフではなく?」

「うん」

 まず、驚いた声を上げるのはノマちゃんだ。その驚いた様子から、ルリーちゃんの正体がダークエルフではないことがわかる。
 あと、ダークエルフってやつは当たり前のようにいる、とは思われていないということも。

 ダルマスは入学試験時、ルリーちゃんをダークエルフだからっていじめていたけど。あれは、ルリーちゃんが不注意で正体がバレてしまったのが原因だ。
 そうじゃなければ、これだけ一緒にいてもルリーちゃんの正体がバレることはないんだから。

「……確かなんだろうな?」

「はい」

 確認するように、先生は聞いてくる。それは、私の言葉が信じられない、というよりも、本当の意味での確認だ。
 ダークエルフが本当に存在し、そしてこんな大きな事件を起こしていたのか……と。

 それは確かだ。この目で確認し、話もしたし……先生も、私がこの場で嘘をつくなんて、考えていない。

「……」

「ご、ごめんなさい……」

 ゴルさんからは無言の視線を向けられる。なんで誰にも言わなかったのか、せめて自分には話してほしかった、といった視線だ。
 正直、これに関しては言い訳のしようもない。

「つまり、エラン・フィールド……キミは"魔死事件"の犯人と出会い、その正体がダークエルフだと知った。
 しかし、他の者の反応や、犯人の正体が私の耳に入ってきていない……これは、キミが故意に犯人の正体を伏せていた、ということでいいかな?」

「……はい」

 いろいろとごちゃごちゃしてしまったけど……つまりは、王様の言う通りだ。
 私は事件の犯人を知って、知った上で黙っていた……これは、どうやっても事実だ。

 そして、黙っていた理由は……

「では、なぜその事実を黙っていた?」

「……それは、言えません」

 当然、それも聞かれるよな……でも、言えない。友達に、ダークエルフがいるから。
 犯人は友達のお兄ちゃんで、犯人が捕まれば友達がダークエルフだと正体を隠していたこともバレてしまうから……とは、言えない。

 考えてみれば、黙っていた事実がある以上、私がダークエルフを庇うなにかしらの理由がある、と思われてもおかしくはないけど……

「言えない、とは……」

「……今はまだ、言えないです。
 でも、今回ノマちゃんを襲ったのは、ダークエルフじゃありません」

「!?」

 このままダークエルフについて追求されるのはまずい。そう思った私は、口早に別の話題に切り替える。
 あからさまではなく、それでいてスムーズに話を転換できる内容……それが、ノマちゃんを襲った犯人の存在。

 それは、ダークエルフとは違う。ダークエルフではない別の誰かの犯行によるもの。
 それを聞いて、みんなは……

「なにを、言っているんだ?」

 当然、困惑している。それはそうだろう。
 今までなんの手がかりも掴めなかった事件の犯人がダークエルフだと伝えられて。かと思えば、今回ノマちゃんを襲ったのはダークエルフではない別人だと伝えられて。

 これで驚かないほうが、どうかしている。

「待て待て待て……エラン、お前の言っていることを素直に信じられない」

「そうだねぇ……それに、ノマちゃんを襲った犯人がダークエルフじゃないとして。
 エランちゃんは、それが誰だがわかっているの?」

「……それは、わからないけど」

 問題は、そこだ。ノマちゃんを襲ったのがダークエルフ、ルランじゃないとわかっても、ならば本当の犯人は誰なのか。
 結局、そこがわからないから手詰まりだ。

「……つまり、あなたは世間で多数の死者を出した"魔死事件"の犯人が正体がわかっているのに黙っていた。だというのに、今回ご友人が被害にあったから黙っていた情報を明かした……
 そういうことですね?」

「っ……」

 痛いところをついてくるのは、王様の側に立っている一人の老人。物腰柔らかそうなおじいちゃんだけど、その眼光は鋭い。
 私を、睨みつけて……見定めているようだ。

 その人は、ゆっくりと私に近づいてくる。

「あなたの話には、信憑性にかけるところが多い……多すぎて、まるでこう考えてしまうのですよ。
 ダークエルフに罪を押し付けているのではないか、と」

「……え?」

 背の高いおじいちゃんは、私の前まで来て、私を見下ろしながら……
 予想もしなかったことを、言った。

 ダークエルフに罪を押し付けている? いや、なんだそれ……押し付けているって、そんな言い方、まるで……

「ジャスミル、なにを……」

「陛下、勝手な物言いどうかお許しください。
 ですが、私は……無礼を承知で申し上げるなら、この者が、くだんの"魔死事件"を起こした真犯人……そう、思えてならないのです」

「……私が?」

 まるで、私が本当の犯人であるかのような……いや、実際にそうではないかと、真正面から言われたのだ。
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