248 / 1,141
第四章 魔動乱編
243話 国宝の魔導具
しおりを挟むあらすじ。レジーを捕まえたことでご褒美がもらえることになった。
私だけご褒美をもらうっていうのもちょっと気が引けるけど、なんかもうそういう……ご褒美もらわなきゃいけない流れになっている。
「それで、ご褒美っていうのは」
やっぱりお金かなぁ。こういうのって、いっぱいお金もらえるイメージがある。
そうしたらなに買おっかなぁ。それともおいしいものいっぱい食べちゃおっかなぁ。
「うむ。エラン・フィールド……キミにはこれを授けたい」
その言葉を受け、王様は側に立っていたジャスミルおじいちゃんに目配せをする。
それを受けたおじいちゃんが、歩き、私の前まで来て……手のひらを、差し出す。握手? いやそれともまさかお手しろってのか?
それがどういう意味だろうと考えていると、おじいちゃんの手のひらが白く光る。これは……
「空間転移の魔法……」
「ほほぉ、よくご存じですな」
白い光、それには見覚えがあった。空間転移の魔法だ。
それは文字通り、空間を転移する魔法。離れた場所にある物も、この魔法を使えば自分の手元に持ってくることができるのだ。
昔師匠がよく使ってたっけな。それも、師匠の場合は人くらい大きなものでも移動できるくらい、大きな転移魔法を作れていた。
さて、光が弱まると、おじいちゃんの手のひらに一つの箱が置かれていた。
手のひらサイズの、白い箱。これがご褒美?
「エラン殿、あなたへの褒美は、これになります」
と、言っておじいちゃんが箱を開ける。パカッと。
その中に入っていたのは……小さな、リングだ。指輪、ってやつだろうか。
リングの一部分には赤い宝石がついている。小さな宝石だけど、きれいだなぁ。
……ん? 褒美、指輪、そして私に指輪をプレゼントするおじいちゃんの図……まさか……!
「え、プレゼントはわ、た、し、ってやつ?
いやー、ごめん。いくら私が超絶かわいいからって、そういうのはちょっと……」
「話が飛躍しすぎだ! そんなわけあるか!」
私がドン引いた顔を見せると、おじいちゃんからのツッコミが飛んできた。その直後、こほんと咳払いをして「失礼」と謝罪。
どうやら、私の発言に我を忘れるくらいの勢いでツッコんでしまったらしい。なんだ、人間味あるとこあるじゃん。
まあ、私だって本気で、プレゼントはわ、た、し、と思っていたわけではない。
私はそっと、目の前に差し出された指輪を手に取る。
「……キレイ」
「お前にも、物を美しいと思う心があったんだな」
指輪を手に取り、天にかざしてその輝きを見つめていると、ゴルさんがちゃちゃをいれてくる。ちょっと、それどういうことよ。
……っと、それはそれとして。本当にきれいな指輪だ。
指輪に付いている宝石も、指輪自身も。手入れが行き届いているのか、すごくきれい。思わずうっとりしちゃうくらい。
「それが、お主への褒美だ」
「……くれるの? こんな高そうなもの」
「たかっ……いいですかエラン殿。それは国宝と呼ばれる魔導具ですぞ」
「へぇ……国宝? 魔導具?」
どうやらお金ではなかったこれは、魔導具らしい。だけど、国宝ってなんだ?
なんか聞くからに、すごそうだけど。
チラッとゴルさんと先生を見ると、目を見開いていた。その視線の先は、もちろんこの指輪。
「そう。魔導具は、お主もよく知っているだろう」
「うん。ピアさんが作ってるやつだよね」
魔導具。魔力を持たない人でも扱える、魔力の道具。灯りをつけたり、火を出したり、魔力を吸収したり。その用途は様々だ。
私はゴルさんとの決闘のとき、ピアさんからピアさんの作った魔導具を借りた。というかもらった。壊しちゃったけど。
この指輪も、それと同じ魔導具……ってことか。
「でも、国宝って?」
「魔導具には時に、凄まじい力を放ち扱いの難しいものがあります。
それらを国宝と呼び、王城へと集められたものを、保管庫に保管しているのです」
「へぇ……そんな、すごそうなのもらっていいの?」
要するに、これはすごい魔導具だってことだよね。その、すごい魔導具をもらっちゃっていいんだろうか。
こんな小さい指輪、無くしたら弁償しろとか言わないよね!
そんな私の疑問に、王様は……
「構わん。国の危機を救ってくれたのだ、当然のこと。
それに、二人には褒美を受け取ってもらえなかったからな。せめてキミには良いものを受け取ってほしい」
と、言ってくれた。それは私を安心させるためだけではなく、本心だっていうのがわかった。
そういうことなら……ありがたく、もらっちゃおうかな。
国宝、国宝かぁ……ただきれいだってだけで、国宝とは呼ばれないだろう。
凄まじい力を持つものが国宝だっておじいちゃんは言ってたし、王様も良いものだと言ってる。
「これは、どんな魔導具なんですか?」
私は、聞いてみた。魔導具と一言に言っても、それにはいろんな種類がある。さっき想像した種類なんかより、はるかに多くの種類が。
生活に欠かせないもの、戦闘に役立つもの、ないといけないわけではないけどあったら嬉しいもの……そういった様々な種類。
国宝って呼ばれるくらいだから、これはさぞすごい魔導具なんだろうと思うけど。
「その指輪……正確には、指輪についている石だな。これが国宝と呼ばれる魔導具だ。名を、"賢者の石"という」
「ほへぇ」
王様は言う。これは賢者の石……か。なんかどっかで聞いたことがあるなぁ。
けど、名前は聞いたことがあってもその効果まではわからない。単純に、ケンジャって名前の人が作った石なんだろうか。
はてこの効果はなんだろう、と石を覗き込んでいたところで、王様は言葉を続ける。
「賢者の石とはな。その石は命の水を生み出し、それを飲んだ者は永遠の命を得ることができる、と言われている」
「へぇ、永遠の……はい?」
さらっとなんか、今とんでもないこと言わなかった? この王様?
12
あなたにおすすめの小説
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
わけありな教え子達が巣立ったので、一人で冒険者やってみた
名無しの夜
ファンタジー
教え子達から突然別れを切り出されたグロウは一人で冒険者として活動してみることに。移動の最中、賊に襲われている令嬢を助けてみれば、令嬢は別れたばかりの教え子にそっくりだった。一方、グロウと別れた教え子三人はとある事情から母国に帰ることに。しかし故郷では恐るべき悪魔が三人を待ち構えていた。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
幼子家精霊ノアの献身〜転生者と過ごした記憶を頼りに、家スキルで快適生活を送りたい〜
犬社護
ファンタジー
むか〜しむかし、とある山頂付近に、冤罪により断罪で断種された元王子様と、同じく断罪で国外追放された元公爵令嬢が住んでいました。2人は異世界[日本]の記憶を持っていながらも、味方からの裏切りに遭ったことで人間不信となってしまい、およそ50年間自給自足生活を続けてきましたが、ある日元王子様は寿命を迎えることとなりました。彼を深く愛していた元公爵令嬢は《自分も彼と共に天へ》と真摯に祈ったことで、神様はその願いを叶えるため、2人の住んでいた家に命を吹き込み、家精霊ノアとして誕生させました。ノアは、2人の願いを叶え丁重に葬りましたが、同時に孤独となってしまいます。家精霊の性質上、1人で生き抜くことは厳しい。そこで、ノアは下山することを決意します。
これは転生者たちと過ごした記憶と知識を糧に、家スキルを巧みに操りながら人々に善行を施し、仲間たちと共に世界に大きな変革をもたす精霊の物語。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
平凡な王太子、チート令嬢を妻に迎えて乱世も楽勝です
モモ
ファンタジー
小国リューベック王国の王太子アルベルトの元に隣国にある大国ロアーヌ帝国のピルイン公令嬢アリシアとの縁談話が入る。拒めず、婚姻と言う事になったのであるが、会ってみると彼女はとても聡明であり、絶世の美女でもあった。アルベルトは彼女の力を借りつつ改革を行い、徐々にリューベックは力をつけていく。一方アリシアも女のくせにと言わず自分の提案を拒絶しないアルベルトに少しずつひかれていく。
小説家になろう様で先行公開中
https://ncode.syosetu.com/n0441ky/
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる