史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第四章 魔動乱編

248話 きゃぴきゃぴしたエルフ

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 全校生徒が集められ、学園再開についての説明があった。
 とはいっても詳細な部分については省き、学園で起こった事件の犯人が捕まり安全が確保されたから……というものだ。それに、被害に遭った二人目の生徒……つまりノマちゃんは命を繋いだということも。

 さすがに、その一件に私も関わっている……なんて話はされない。
 先生がどこまでを話したかはわからないけど、先生の立場なら知っていることはぜんぶ話しただろう。魔獣や、それを操っていた人物、そしてそれを捕まえたのが私ってことも。

 その上で、みんなの前では黙ってくれている。いやぁ、助かるよ。
 私が関わっていたなんて知れたら、みんなからなにを言われるかわかってものじゃないからね。ただでさえ私、自分で言うのもなんだけど有名人なんだし!

 ……そんなことを思っていたら。

「フィールド、今日の放課後、理事長室に来い」

 と、集会が終わったあとに先生に言われてしまった。

「……」

「そんな顔をするな。本人の口から聞きたいんだとさ」

「なんか以前にもそういうことがあった気がするんですけど」

「そういう星の下に生まれたお前が悪い」

 理事長室への呼び出しかぁ……これ何度目だろうなぁ。多分普通は、学生生活の中で理事長室に立ち入ること自体あまりないんじゃないかと思う。
 あんまり気乗りしないけど、逃げるわけにもいかないよねぇ。

 はーい、と返事をして、先生に背を向ける。ただ、その直前……私を見る先生の目が、なにか複雑な感情を含んでいるように見えたのは、気のせいだろうか。
 教室に行くと、そこには懐かしい顔が並んでいた。たった数日の間のことなのに、すでに懐かしいと感じるなんてね。

「エランさん、おはようございます」

「カリーナちゃん、おはよう」

 自分の席へ進んでいく最中、友達から声をかけられる。私も、挨拶を返す。
 やっぱいいなぁ、こういうの。学園に……いやこの国に来るまでは、おはようなんて師匠としかしたことがなかったもんなぁ。
 もちろん、それを寂しいと感じていたわけではないけど……現状を知ってしまうと、あの頃のやり取りは少し物足りなさを感じる。

 いつか師匠と再会できたときに、こんなにもいっぱいの友達と挨拶できるようになったよ、って自慢してみたいな!

「お前らー、席につけ」

 ガラガラ、と扉が開き、先生が教室に入ってくる。その光景に、喋っていたみんなはそれぞれ席についていく。
 教室に入ってくる先生……その後ろから、もう一人大人が入ってくる。

 誰だろう? フードを被って、顔を隠している……まるでルリーちゃんみたいだ。

「先生、その人は?」

「あー、今から説明するが……なんと言ったものか」

 普段から、言いたいことはわりとずばずば言う先生が、珍しく言いよどんでいる。どうしたんだろう、なにか言いにくいことでもあるのかな?
 あと、さっきから私をチラチラ見ている気がするのは……気のせいじゃ、ないよね。

 その時間は数秒だったけど、みんなが困惑するには充分な時間で。

「くっ……くふふふ」

 誰のものかわからない声が、それも笑い声がどこからか聞こえた。
 だけど、こんな状況で笑える人は限られている……それに、その人は肩を震わせていた。

 フードを被った人物は、なんでか笑っていた。

「なぁに黙っちゃってんすか、ヒルヤセンセ。さっさと紹介してくださいよ」

「おい、勝手に喋るなと……」

「はいはーい、皆さんちゅうもーく!」

 妙に明るい、男の声。先生の制止も聞かずに、その人物はフードを捲る。

 その中から現れたのは……思わずため息が漏れてしまうくらいに整った、きれいな顔。白い肌に細い目、まるで芸術品かなにかだ。
 ……だけど、それよりも、もっと注目すべきところが、あった。

 人目を引いてしまう金色の髪、人族ではないと確信できる長い耳、その瞳は緑色に輝いている。
 何者だ、と考えるまでもない……そこにいた男の人は、エルフだ。

「……はっ、え、エルフ!?」

「いや、ちょっと……」

「なんで、エルフがここに……!?」

 突然の出来事に、遅れてみんな困惑している。私だって困惑している。
 だってエルフ族は、世間的に嫌われている種族だ。正確には、ダークエルフが嫌われているせいで、同じ種族とされるエルフもその弊害を受けている、といったものだけど。

 師匠のおかげでエルフに対する認識は大きく変わっているらしい……とはいえ。
 この国には、正体を隠しているルリーちゃんを除いて、エルフ族がいない。一人もだ。なのに……

 ここに、エルフがいる。しかも、今のは先生が連れて来たみたいなことになっている……

「お前たち、落ち着け。こいつは……」

「はいはい、まあまあ落ち着いてよ。ね?」

 騒ぎ出すみんなを先生は止めようとするけど、その声すらもかき消すように、パンパンッと乾いた音が響く。
 あのエルフの男が、大きく手を叩いてわざと大きな音を出したんだ。ただ、それだけでみんなの混乱は収まらない……

 かと思いきや、叫びのような声は一斉に止まり、立ち上がっていた生徒は自分の席へと座る。
 これは、自発的にみんな黙り、座った……わけじゃない。この魔力の感じ……エルフの男は、魔法でみんなの体を操り、強制的に口を塞いで座らせたんだ!

「! お前な……」

「まあまあ、これくらいしないと、みんな話を聞いてくれないじゃん?」

「だからといって……」

「はいはい、めんごめんご。あ、これもう古い? やだなぁ、エルフと人間の時間の感覚は違うから、なにが流行りで古いのかわっかんねえや」

 みんなの体を魔法で操っておきながら、ヘラヘラした態度……なんなんだ、この人。
 とりあえず、この教室のほとんどの子が魔法で拘束された、と見ていい。いくら動揺していたとはいえ、これだけの人数を……

 無事なのは、私と……筋肉男くらいか。師匠と暮らしてきた私は、みんなほどの動揺はないけど……
 あいつはあいつで、なんでこんな時にも手鏡で自分の顔見てるんだよ。少しはあせろよ。

「まま、これで話は聞いてくれるようにはなったかな」

 話を聞くっていうか、話を聞くしかない状況にさせられた。
 そもそもなんなんだこの人は。いかにも人畜無害って顔をしているけど、油断ならないな。師匠みたいに、親しみを感じられそうにもないし、先生がいるとはいえちょっと警戒して……

「じゃじゃ、静かになったところで自己紹介をね。オレオレの名前はウーラスト・ジル・フィールド。
 皆さんご存じグレイシア・フィールドの、一番弟子でぇす! きゃぴっ」

 …………はぁ……!!?
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