史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第四章 魔動乱編

281話 遥かに上の存在

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「魔獣ぅ?」

 マーチさんが言った言葉に、眉をひそめるのはカゼルと呼ばれた若者。
 その反応は、すでに一度あの獣を見たことがある……ってことだろうか。もしかして、ここにいる人たちってあの獣を見たことがあるのかな。

 ギルドに引き渡した後、どうなったかは聞いてないけど……ここに集められたってことは……

「あの獣、マーチさんが調べてるの?」

「そそ。マーが調べてるよ。ギルドから話があってね」

 やっぱり、マーチさんが調べているのか。マーチヌルサー・リベリアン……ノマちゃんが言うには、あらゆる開発研究の部門ですごい有名な人らしい。
 子供みたいな容姿だけど、見た目と中身は合わないってことだ。

 ノマちゃんのことも調べてくれたわけだし、信用できる人だ。

「いやー、驚いたよ。見たことのない獣を倒して持ってきたのが、エラン・フィールドちゃんだって聞いたときは」

「いやー、倒したのは私じゃなくて……」

 いや、なんかもう、いちいち訂正するのが面倒だから、このままいこう。
 そんな私たちの会話を聞いて「それで」とカゼルが言葉を挟む。

「アレについてわかったことがあるなら、説明してもらおうか。マーチヌルサー・リベリアンさんよ」

「相変わらず嫌味な態度を隠そうともしないねぇ。はいはい、今話すからおとなしくしててくださいよカゼル・オートラインさん」

 ……なんだろう、この二人の間にもなにかあるのか。険悪、ってわけじゃないけど、ピリピリした空気を感じる。
 この灰髪オールバックは、いろんな人との空気を気まずくさせる天才なのかな?

 とはいえ、私もあの獣については気になっているので、黙っておく。

「こちらは暇ではないんだ。陛下からの呼び出しだっていうからこうしてここに来た。そして、陛下の名を使ってまでということは、相当な案件なんだろうな?
 マーチヌルサー・リベリアン」

「だから呼んだんだよー。なんで、少し黙って話を聞いてなよ。
 カゼル・オートライン」

 ……気まずいよぉ。帰りたいよぉ。
 あのオールバックだけじゃなくて、マーチさんにも結構なトゲを感じる。まあ、あんな話し方されたら誰だって苛つくとは思うけどさ。

 まだ二回しか会ってないし、ちゃんと話したのは一度きり。でも、こんな風にトゲトゲしい人じゃなかったのに。
 ただ言い方の問題でこうはならないだろうし。二人の間になにがあったんだよ。

「二人とも、国王陛下の前ですよ」

「へいへい」

「はーい」

 ジャスミルおじいちゃんの仲裁に、二人はなんとか矛を収める。そうだよな、王様もこの場にいるんだよな……よくあんな言い合いができるよな。
 ただ、王様はその様子を注意もせずに見ていた。まるで、いつもの光景だと言わんばかり。

 場が静かになったことで、マーチさんはコホン、とわざとらしく咳払いをしてみせる。

「あの魔獣を倒して運んできてくれたエランちゃんはもちろん、その後この場にいるみんなには魔獣の姿を確認してもらってるよ。覚えてるよね?」

「あのような印象強い獣、早々忘れることはできないでしょうな」

「檻の中でキャンキャン吠えてるのは傑作だったな」

 獣を捕まえてから、この数日の間にここにいる人たちには獣を見せたのか。ゴルさんたち、そうならそうと言ってくれたらいいのに。
 初めて会う二人の反応は、やっぱり対称的だ。

 そこで、アルミルおじいちゃんが手を上げる。

「しかし、リベリアン殿。あの獣を魔獣と断ずる根拠とは?」

「魔獣っても、あんな白いの見たことないぞ。
 ……あー、こないだ王都で暴れたってのが、白い魔獣だったっけか」

 気になっているのは、あの獣を魔獣だと断定していること。マーチさんがそう言ったのなら、実際にあれは魔獣なのだろう。
 でも、魔獣にしてはこれまで見たものとだいぶ違う気がする。というか違う。

 他のみんなも同じ意見らしいけど……あれを魔獣と断定した本人は、首を振る。

「確かに、真っ白な魔獣というのはこれまで見たことがない。それに、エランちゃんの話を又聞きした形だけど、あの魔獣は魔法を吸収し、魔術は使うことが出来なかった……そうだよね?」

「うん」

「そんな特徴の魔獣は、見たことがないけど……以前王都に出現した魔獣も、真っ白な体だったって話だし、解剖していろいろ調べた結果、体内組織は魔獣と同じであることがわかった」

 解剖、とわりと怖いことをさらっと言った気がするけど、とりあえずそこは聞き流しておこう。
 調べたとは言っていたけど、まさか体の中まで調べていたとは。その結果が、これまでに見てきた魔獣と同じだった、と。

 ……あれは魔獣、なのか。

「なら、あの獣……いや魔獣は、"上位種"ということか?」

 話を聞いて、ゴルさんが口を挟む。
 魔獣の中にも、位がある。"上位種"と呼ばれる魔獣は言葉を喋ることができ、それは以前ルリーちゃんを襲いに学園に現れたやつだ。

 結果として、あれを学園に放ったのはルランだってわかったけど……それと、同じタイプか?
 ちなみに、喋るとは言っても人間の言葉を覚えて真似しているだけで、自分でもなにを喋っているのか内容は理解していない。

 そんなゴルさんの質問に、マーチさんは首を振る。

「いんや。あれは、"上位種"なんてもんじゃない……それよりもっと、とんでもない化け物だよ」

 "上位種"よりも、遥かに上の存在だと……そう、言い切ったのだ。
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