史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第七章 大陸横断編

481話 おいわい!

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「おぉ、これがドラゴンか……想定していたよりも、でかいな」

 人……じゃなくてモンスターが少ないところまで移動して、クロガネを召喚する。
 地面に巨大な魔法陣が出現して、その下から黒い生物が現れる。

 黒い鱗はギラリと光り、赤い瞳はにらまれただけで足がすくんで動けなくなりそう。
 ま、私も最初はビビっちゃったけど、今ではその鋭い眼光も愛しいとすら思っているけどね!

「ドラゴンじゃなくてクロガネ、だよ」

『うむ、クロガネだ』

「はは、悪かった。しかし、モンスターの言葉は使い魔に限り、契約者に聞こえると言うが……
 このドラゴ……クロガネの言葉は理解できているのか?」

「もちろん」

 クロガネの、というかモンスターの言葉は普通は聞こえない。
 例外は、使い魔契約を結んだ者同士でだけ……のはずなんだけど。

「ここにいるモンスターたち見てると、使い魔契約とか関係なくないって思っちゃうけど」

「みんなしゃべりますもんね」

 この村のモンスターは、元魔物だ。
 いや、魔物は元はモンスターなんだから、元の元はモンスターで……なんかややこしいな。

 とにかく、一度魔物になり、再びモンスターに戻ったモンスターはしゃべれるようになる……
 って認識でいいんだろう。ここにいるみんなを見ている感じ。

「わぁ、大きい!」

 そして、クロガネの存在にしゃべるモンスター……パピリは、ひどく驚いた様子だ。
 表情とか変わらないから、本当に驚いているのかわからないけど。

 ただ……クロガネを前にしても、怖気づいていないようなのは、なんかすごいな。

『言葉を話し、心を通わせることの出来るモンスターか……実に興味深い』

「クロガネは、知ってる? この子たち、魔物から元に戻ったらしいんだけど……そういうモンスターは、言葉を話すとかいう話」

『いや。そもそも、魔物からモンスターに戻った事例など聞いたことがない』

 ほぉ……クロガネも知らないことなのか。
 もしかして、それを実践して証明した魔女さんって、かなりすごいのでは?

「それで……クロガネさんを、透明化できますか?」

 魔女さんのすごさに感心していると、代わりにルリーちゃんが聞いてくれる。
 そもそも、クロガネを召喚したのは、魔女さんがクロガネを透明化できると言ったからだ。

 実際の姿を見て、それが可能かどうか判断してもらおう、ってわけだ。
 そして、その判断は……

「ふむ……正直、ドラゴンを見るのは初めてだがある程度の大きさだろうと思っていたからまあイケるだろうと思っていたが、これは予想以上の大きさ……」

「おい」

「いや待て待て。できないとは言っていないぞ」

 クロガネを観察するように、周囲を回る魔女さん。
 クロガネの体の大きさに驚いてはいるけど、それでも「できない」とは言わなかった。

「多少準備に時間がかかるだろうが、問題はない。
 それどころか、クロガネに乗っているキミたちもまとめて、透明化してしまおう」

「おぉ」

 なんとも、魔女さんの頼もしい言葉。
 クロガネだけでなく、クロガネに乗る私たちも同様にだなんて。

 人一人を透明化するのが精一杯の私にとっては、頼もしいとともに信じられないとも感じるものだ。

「準備、とは?」

「相当魔力を集中し、途中で透明化が切れてしまうことがないようにしないといけない。
 そのために、一日貰うぞ」

「わかった。私たちも、旅の準備で買ったものを整理したいし」

 今、買ったものはまとめて収納魔法に突っ込んでいるだけだからな。
 整理するのにも、もうちょっと時間がいる。

「エランちゃん! 今夜もここに泊まるの!?」

「うん、またお世話になるよ」

「やったぁ!」

 相変わらず表情は変わらないけど、パピリは喜びを全身で表してくれている。
 あぁ、見ていると癒されるなぁ。もうじきお別れだけど。

『では、ワレはそろそろ戻った方がいいか』

「うん。ごめんね、これだけのために呼んじゃって」

『構わぬ』

 それから、クロガネは魔法陣の中に戻っていく。
 こうしてお気軽にクロガネを呼べるのは、いざという時に助かるよね。

 さて、魔女さんは準備をする、ということでどこかに行ってしまった。どこかといっても、家だろうけど。
 私たちも、戻ろうか。

「エランちゃん! 明日しゅっぱつするの!?」

「うん、そうだよ」

「じゃあ、今夜はおいわいだね!」

 元気のいい、底抜けに明るい声でパピリが話す。
 明日出発するから、その前にお祝いをしてくれるというのだ。それはありがたいな。

 それから、パピリは「今夜はおいわい! 今夜はおいわい!」と飛び上がって叫んでいた。
 それこそ村中に聞こえるんじゃないかと思えるくらいに、大きな声で。

 加えて、モンスターは人よりも耳がいいらしい。きっと聞こえている。
 これは……なんか、村総出でのお祝いになりそうな気がする……

「そこまでしてもらうのは、悪い気も……」

「気にしないで! おいわいする!」

 パピリには気にするなと言われたし……まあ、せっかくの好意を無下にするわけにもいかないよね。
 そんなわけで、今夜は出発前夜のお祝いをしてくれるみたいだ。
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