史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第八章 王国帰還編

507話 罪作りなワタシ

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 あらすじ
 クラスメイトと再会した。

「はぁ、はぁ……」

「レィディがこんな公共の場で、ハァハァ息を荒げるものじゃあないヨ」

「あんたのせいなんだよ!」

「なんト。罪作りなワタシだねェ」

 なんでクラスメイトと再会しただけで、こんなに疲れなきゃいけないんだ! ツッコミ疲れたわ!
 筋肉男ことブラドワール・アレクシャン。それが彼の名前だ。

 見ての通りというか聞いてのとおりというか、なんとも扱いにくい相手だ。
 なんてったって、学園入学初日に教室で他のクラスメイトの席に勝手に座るような奴だ。

 その後一緒になった魔石採集の授業でも、一人でサボっていたし。
 自由気ままというか、あんまり関わり合いになりたくない部類の人間だ。

「アレクシャン……なんか、聞き覚えがあるような。
 ……あっ、魔導大会にそういう名前の人がいたな」

「へぇー……記憶力いいね」

「記憶力いいのは自慢の一つなんだ」

 ふふん、と鼻を鳴らすヨル。

「それにしても、偶然だねェ。こんなところで会うなんテ。
 例の事件の後、黒髪の君がいなくなったと学園中騒然だったというのニ」

「!」

 ただ、せっかく会ったクラスメイトだ。あのときのことをちゃんと聞いておきたい。
 今だって、すごい気になること言ってるし。

「私のこと?」

「キミは人気者だからねェ。突然何処へともなく消えたとなれば、騒ぎになるものサ」

 ……みんな、私のことを心配してくれてたんだ。
 なんか、不謹慎かもしれないけど、嬉しいな。

 同時に、心配させて悪いことしたなって気持ちにもなっちゃうな。いや私悪くないんだけどさ。

「そうなんだ……
 みんなは、元気?」

「さてねェ。学園が休校になってからというもの、ワタシは寮を出タ。各々がどう過ごしているのか、知る由もなイ」

「……」

 くそっ、みんなの情報を得られるかと思ったのに……こいつ……!
 そもそも、こいつの場合他人に興味なさそうだから……学園に残ってたとしても、みんなのことちゃんと答えてくれるかわかんないんだよね。

「そっか。とりあえず無事で良かったよ。じゃ、私たち行くんで」

「おやおや、相変わらず忙しないレィディダ。しかし、どこへ行こうというのかネ」

「……新しい国王のとこ」

 素直に答える必要はないんだけど。しつこく話しかけられるくらいなら、さっと答えて離れてしまおう。
 本当はこれから行くのは魔導学園だけど、まあ最終的に新しい国王のところに行くつもりだから同じことだ。

 学園に兵士に話を通して、国王の所へ連れて行ってもらう。
 そう考えると、町中で兵士を見つけられれば楽なんだけどな……まあ、こんな平和な空間に兵士がいるはずもないか。

「新しい国王カ。キミが今までどこに行っていたかは知らないが、戻ってきたばかりで新しい国王の下へと行く理由があるのかネ?」

「そこまでは、関係ないでしょ」

「はっはっは、それもそうダ。キミもまた、新しい国王に魅入られた一人かと思ったガ……そうでもないようダ」

 ひとしきり笑ったあと、筋肉男は背を向けて言葉を去ろうと歩き出す。
 ようやく会えたクラスメイトではあるけど、クラスメイトの中で一番話したことない相手だし……正直、話していると疲れるんだよなぁ。

 まあいいや。これで今度こそ、お城に向かうことが……

「……ちょっと待った!」

「んン?」

「今、新しい国王に魅入られたって言った?」

 さっきの言葉を思い出す。筋肉男は、気になることを言っていた。
 魅入られる……って、それどういう意味だろう?

 単にそれっぽい言い回しをしただけかもしれない。でも、なぜだか気になって。

「それ、どういう意味?」

「おやおヤ。ワタシとの会話を早急に切り上げようとしていたのでは、なかったのかナ?」

「ぬ……」

 あ、バレてた……
 こいつ、わりと勘がいいなぁ……それとも、私がわかりやすいだけか?

「……それは、ごめん。あんま離したくないし、ろくな情報持ってないからと思って」

「エラン!?」

「あっはっはっは、相変わらずキミは正直者のレィディだねェ! 面白イ!」

 つい本音を言ってしまったけど、それがハマったようで筋肉男は馬鹿みた……高らかに、笑っている。
 とりあえず、機嫌を損ねたわけではないらしい。

「しかし、ここだと落ち着かないねェ。急ぎの用事でないのなら、あの喫茶店でティータイムでもどうかナ?
 ……と言いたいところだが、人数もそれなりにいるようだしやめておこうカ」

 ルリーちゃんとラッへにはお留守番をしてもらっているとはいえ……それでも、やっぱりこの人数は多いよなぁ。
 これじゃ落ち着いてお店に入ることもできないし。

 急ぎじゃないとはいえ、そんなにのんびりもしていられないけど。
 ……していられないのか?

「それで……新しい国王について、なんか知らないのかなーって」

「ふム……キミも疑問に思ったのではないカ? 前国王が亡くなり……新たな国王が即位しタ。その者はラニ・ベルザの家系の者ではなイ。
 そうでなくとモ……国王が変わったばかりだというのに、この国の人間はあまりに落ち着いていル、と」

「!」

 それは、確かに私も疑問に思ったことだった。タリアさんから聞いて、思ったことだ。
 国王が変わった。それは、国の一大事のはずだ。おまけに、魔獣による騒ぎもあった。

 なのに、この国の人はあまりに普通だ。
 そして……筋肉男の言葉は、まるでそれに理由があるように、思えた。
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