史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

文字の大きさ
524 / 1,141
第八章 王国帰還編

512話 対面

しおりを挟む


「ここが王の間だ」

 兵士さんに連れられ、やって来たのは王の間と呼ばれる大きな部屋の前。
 この扉の前に、新しい国王がいるってことか。

 というか……城の中は、変わってないんだな。当然といえば当然だけど。
 見たことのある兵士さんはいなかったけど、城の内装は以前のままだ。なにも変わってない。

 本当なら、この向こうには新しい国王なんかじゃなく、ザラハドーラ国王がいるはずだったんだけど……

「国王様、例の黒髪黒目の人間を連れてきました」

「うむ、入れ」

 兵士さんは扉をノックし、礼をしながら中へと呼びかける。
 すると、すぐに部屋の中から返事が来た。威厳のある声だ。

 それを受けて、兵士さんはゆっくりと扉を開けた。

「……」

 促されて、私たちは部屋の中へと足を踏み入れる。
 コツ、コツと靴音が響く。なんだか懐かしい気分になりながらも、ゆっくりと進み……正面にいる、見慣れない人物の顔を見た。

 こいつが……

「国王様」

「あぁ、ご苦労だった。その者たちが、なるほど……確かに黒髪黒目だ」

 ある程度の位置にまで進むと、兵士さんは膝をついて国王に礼の姿勢を見せる。
 チラリ、と私たちに視線を向けてきたけど……いや、私たちがこの国王に視線よくする必要はないじゃんね。

 なので、その場で突っ立ったままだ。

「確か……エラン・フィールドと言ったか」

「……そうだけど」

「貴様っ、無礼だぞ!」

 この部屋にいたのは、国王だけではない。国王の側に、彼を守るように鎧を着た兵士が立っている。
 他にも、メイドさんや執事と、いいご身分のようで。

「よい」

 腰の剣を抜こうとした兵士を、国王は手で制して止める。
 その一言だけでも、なんだか威圧感がある。それに、その顔には深いしわが刻まれていて、威厳を見せつけてくるみたいだ。

 目は鋭く、ただこっちを見ているだけなのか本当は睨んでいるのか、わからない。
 この人、ザラハドーラ国王より若いっぽいな。

 ……うん、確かに白い髪に黒い瞳だ。

「それで、私になにか? この場で捕まえる?」

「貴様っ……」

 私の態度は、誰が聞いても無礼なものなんだろう。
 だけど私には、この場で誰かに敬う必要なんて感じないし……一度は捕まえられたんだ、少しは腹も立つ。

 周りの兵士はピリついているけど、そんなの私には関係ない。

「ふむ、噂通りの人物のようだな」

「噂?」

「どのような相手にも自分を曲げず、貫き通す。良くも悪くも、自分というものをしっかりと持っている」

 ……自分を持っている、か。
 これは褒められているんだろうか? 褒められてないんだろうか?

 というか、私のことそんな風に噂しているの誰だよ。

「なあに、一目会ってみたくてな……あのグレイシア・フィールドの弟子に。まさか、自分から来てくれるとは思っていなかったが」

「! 師匠を知ってるの?」

「あぁ、もちろんだ。むしろ、彼ほどの有名人を知らない者などいまい」

 まさかここで、師匠の名前を聞くことになるなんて。
 ははぁ、やっぱり師匠はすごいんだねぇ。魔大陸から帰って来るまでにもちょいちょい名前出てきたけど。

 師匠の弟子だから、私に会ってみたかった……と。
 それは、興味からなんだろうな。でも、私だって国王に会いたかったさ。
 その理由は……興味もあるけど、それとは違う。

「で、主たちの要件を聞こうじゃないか」

 さすが、話が早い。
 私たちが望んでここに来たってことは、直接国王に言いたいことがあるから。それをわかって、こうして姿を見せてくれたってわけだ。

 国民を洗脳しているクソ野郎かと思ってたけど……なんか、イメージと違うな。それとも、こっちを油断させるための演技?

「じゃあ単刀直入に。黒髪黒目の人間を捕らえろ、って命令を取り消してほしいな」

「ほぅ……」

 なにを考えているのか、国王の表情は変わらない。
 ただ、私を品定めしているような目線が……ちょっと、嫌だな。

「そもそもの話、私がそういった命令を出した理由を……キミは、理解しているのか?」

「うん。魔導大会をめちゃくちゃにした奴らが黒髪黒目だから、だよね。だからそいつらを捕らえるためってのはわかる。
 でも、私やヨルはそいつらとは無関係だよ。とばっちりで捕まえられたんじゃたまったもんじゃない」

「主たちが無関係である、という証拠もない」

 ……さすがに、やめてくれって頼んですぐにやめてくれはしないか。
 とはいっても、本当に無関係だ。今だって、周りの兵士たちは私たちを捕まえようと悩んでいる様子。
 国王の一声があれば、一斉に飛びかかってくるだろう。

 ここにいる奴ら程度なら、難なく倒せるとは思うけど……あんまり、大事にはしたくない。
 危険人物の仲間、の前に王の間で暴れた危ない奴として捕まることになってしまうからね。

 そんなことにはしたくない。だから……

「魔導大会を、そしてこの国をめちゃくちゃにした黒髪黒目の人間は、こいつらだよ」

 私は、エレガ、ジェラ、ビジー、レジーの四人を突き出す。
 フードを取り、四人の黒い髪を明らかにして。

 黒い髪が露になった瞬間、周囲の兵士たちがざわめく。
 そして……国王の眼光が、鋭くなった。ような、気がした。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

濡れ衣を着せられ、パーティーを追放されたおっさん、実は最強スキルの持ち主でした。復讐なんてしません。田舎でのんびりスローライフ。

さら
ファンタジー
長年パーティーを支えてきた中年冒険者ガルドは、討伐失敗の責任と横領の濡れ衣を着せられ、仲間から一方的に追放される。弁明も復讐も選ばず、彼が向かったのは人里離れた辺境の小さな村だった。 荒れた空き家を借り、畑を耕し、村人を手伝いながら始めた静かな生活。しかしガルドは、自覚のないまま最強クラスの力を持っていた。魔物の動きを抑え、村の環境そのものを安定させるその存在は、次第に村にとって欠かせないものとなっていく。 一方、彼を追放した元パーティーは崩壊の道を辿り、真実も勝手に明るみに出ていく。だがガルドは振り返らない。求めるのは名誉でもざまぁでもなく、ただ穏やかな日々だけ。 これは、最強でありながら争わず、静かに居場所を見つけたおっさんの、のんびりスローライフ譚。

追放したんでしょ?楽しく暮らしてるのでほっといて

だましだまし
ファンタジー
私たちの未来の王子妃を影なり日向なりと支える為に存在している。 敬愛する侯爵令嬢ディボラ様の為に切磋琢磨し、鼓舞し合い、己を磨いてきた。 決して追放に備えていた訳では無いのよ?

【完結】大魔術師は庶民の味方です2

枇杷水月
ファンタジー
元侯爵令嬢は薬師となり、疫病から民を守った。 『救国の乙女』と持て囃されるが、本人はただ薬師としての職務を全うしただけだと、称賛を受け入れようとはしなかった。 結婚祝いにと、国王陛下から贈られた旅行を利用して、薬師ミュリエルと恋人のフィンは、双方の家族をバカンスに招待し、婚約式を計画。 顔合わせも無事に遂行し、結婚を許された2人は幸せの絶頂にいた。 しかし、幸せな2人を妬むかのように暗雲が漂う。襲いかかる魔の手から家族を守るため、2人は戦いに挑む。

平凡な王太子、チート令嬢を妻に迎えて乱世も楽勝です

モモ
ファンタジー
小国リューベック王国の王太子アルベルトの元に隣国にある大国ロアーヌ帝国のピルイン公令嬢アリシアとの縁談話が入る。拒めず、婚姻と言う事になったのであるが、会ってみると彼女はとても聡明であり、絶世の美女でもあった。アルベルトは彼女の力を借りつつ改革を行い、徐々にリューベックは力をつけていく。一方アリシアも女のくせにと言わず自分の提案を拒絶しないアルベルトに少しずつひかれていく。 小説家になろう様で先行公開中 https://ncode.syosetu.com/n0441ky/

処理中です...