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第八章 王国帰還編
586話 腐れ縁
しおりを挟む先生に協力を求め、それを快く承諾はしてもらえた。
だけど……その内容を話すと、しばらく考えるようにしたあと先生は、それは難しいと答えた。
ダークエルフの、世間に対しての扱い。そして、生ける屍となってしまったクレアちゃん。
なんとかルリーちゃんとクレアちゃんを仲直りさせたいと、そう思っているけど……
「エゴ……」
それは私のエゴだと、言われた。
それは違う……と言いたいけど、そうなのかもしれない。少なくともクレアちゃんは、それを望んでいない。
本人が望んでいないことを、勝手にしてしまってもいいのだろうか。
……それでも、私は……
「協力すると言った手前、本当なら全面的に協力したいところだ。
知り合いのエルフが、ダークエルフのお世話になったって話を聞いたんでね。けど、さすがに状況が状況なだけに……」
「! 待って。……エルフが、ダークエルフの?」
先生も、意地悪で言っているわけではないというのは、申し訳無さそうにしている表情からもわかる。
彼が協力すると言ってくれた、その理由。それを聞いて、私は引っかかるところがあった。
悪いと思ったけど、話を止める。
「それ、どういうこと? エルフがダークエルフのお世話になったって?」
世の中では、エルフ族は総じて嫌われている。
真実は、ダークエルフの行いが飛び火して、同じ種族のエルフも嫌われてしまっている。
なので、エルフはダークエルフを嫌っているはずだ。先生みたいなのもいるけど。
そのダークエルフが、エルフをお世話した?
それに……なんだろう。今の話、どこかで聞いたことがあるような気がする。
「え、あぁ。不思議かい? その昔とある森の中に、ダークエルフの村ってのがあったみたいでね。
そのエルフは、そこで一年ほど厄介になってたみたいなんだ」
「ダークエルフの村……」
「そう。お世話になったってのが、リーフェルって名前のエルフでね」
所々で、聞き覚えのある言葉が出てきた。
ダークエルフの村、一年、リーフェルという名前のエルフ……
……あ。
「あぁああああ!!」
「!」
ポツポツと浮かんでいた点と点が繋がり、私はハッとして声を出す。
思いの外大声だったせいで、先生が肩を震わせていたけど、今はそんなことはどうでもいい。
今聞いた話……そうだ、そうだよ! ルリーちゃんから聞いた話と同じだ!
ルリーちゃんは過去、ダークエルフの村で兄のルランや幼馴染のリーサたちと暮らしていた。そこに、ある日エルフがやってきた。
いろいろな考えはあったみたいだけど、結局はエルフ……リーフェルを迎え入れて、一年平和に暮らしていた。
その後は……黒髪黒目の人間と魔獣による、蹂躙の話になってしまうけど。
「私、そのエルフ知ってる!」
「! なに? 本当か?」
「正確には、私が知ってるっていうか私の友達が知ってた話を聞いたっていうか」
直接会ったことはないどころか、一度話で聞いただけだ。
ともかく、彼女の話を聞いて知ったことに変わりはない。
先生は顎に手を当て、眉を寄せて難しい顔をしている。
やがて……
「その友達っていうのが……ルリーちゃんって子のことかい?」
そう私に聞く、鋭い質問。
ま、わかるよね。今の今まで私の友達がダークエルフだって話をしていて、それとは別に私の友達からエルフの話を聞いたなんて。
そのエルフの話を知っているのはまず当事者……つまりダークエルフだし。
私の友達にダークエルフが二人いない限り、私の友達つながりでルリーちゃんだとわかる。
「そうだよ。ルリーちゃんが教えてくれたの……自分の過去のこと。
その中に、リーフェルってエルフも出てきたよ。村にやってきて、楽しく暮らしてたって」
「…………そうか」
私の説明に、先生はじっくりと聞いたあと……手のひらで目元を覆って、そっとつぶやいた。
それはまるで、どこか安堵しているようにも見えた。
まさか知り合いが同じ名前を出してくるとは……
とはいえ、エルフ同士だしエルフは人種族ほど数も多くないようだし、不思議はない。
ただ……単なる知り合い、って風には、見えないんだよな。
「あの、先生とリーフェル……さんって、どんな関係が?」
「あー……まあ、腐れ縁みたいなものかな。同じ村で生まれて、過ごして、遊んで……」
先生は懐かしむように、話し始めた。
当時のことを思い出しているのか、少し嬉しそうだ。
……そういえばリーフェルって、ハーフエルフってやつなんだっけ。半分エルフ、半分人間の血が流れている。
ルリーちゃんの話だと、そのことで本人は苦労したようだけど。
「リーフェルはある理由で、村を出ていったんだ。当時の俺はなんの力もなく、止めることもできなかった。
けど、彼女は俺には連絡をくれたんだ。ダークエルフの村で保護されて、初めは怖かったけど楽しく過ごしている、ってね」
「そうなんだ……」
「だけど、ある時から……ぱったりと連絡が途絶えた。俺は彼女を探すために、旅に出ることにした。
その後グレイ師匠に出会って、また旅に出て、魔導大国のこの国なら人捜しの手がかりがあるかと思って、今や教育実習生ってわけ」
……ぱったりと連絡が途絶えた。それは、黒髪黒目の人間によるダークエルフの森襲撃のせいだろう。
その中でダークエルフたちは、蹂躙され……ルリーちゃんの友達も……
その中で、きっとリーフェルも。
先生は、リーフェルが死んだとは知らない。行方不明だと思って、あちこち捜しているんだ。
「それにしても、キミの友達のダークエルフが、まさかリーフェルがお世話になった村の子供だったとはね。
……前言撤回、今回の件には是が非でも協力しよう。いわばリーフェルの恩人を、このままにしてはおけない」
それから先生は……先ほどの自分の言葉を撤回し、とても力強い言葉をくれた。
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