史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第九章 対立編

607話 防御と回避

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「りゃあああ!!」

「……っ、ぶ!」

 クレアの、全霊を込めた拳がルリーの頬へとめり込んだ。
 魔力を纏った拳は、ルリーに確実にダメージを与え、吹き飛ばす。

 あまりの衝撃にルリーは受け身を取ることも忘れ、一度二度とバウンドし、地面に倒れた。

「ルリーちゃん!」

 それを観戦していたエランの声が、響いた。
 この位置からでは、クレアとルリーがなにを話しているのかはわからない。
 それでも、クレアがルリーをすごい形相でにらんでいるのは、わかった。

 仰向けに倒れたルリーは、頰に触れる。
 チクッとした痛みがあり、とっさに指を離した。この程度のダメージでは、結界内でも無効化はされない。

 痛い……でも、この痛みはただ体の痛みなだけじゃなくて……

「……クレア、さん……」

 ゆっくりとルリーは、起き上がる。
 その間、クレアからの追撃はなかった。ただ黙って、ルリーを見つめているのみだ。

 それでも、魔力を練り上げているのは、わかった。

「っ……」

 距離を詰めないのは、ルリーに警戒しているからか……それとも、他に狙いでもあるのか。
 そう考えているうちに、ルリーの思考は中断された。

「え……」

 立ち上がったルリーは、不意にバランスを崩す。
 転んでしまう前になんとか踏ん張りを効かせるが……それでも、足元が滑ってしまう。

 踏ん張ってはだめだ。転ばないよう、慎重に立ち上がる。
 足元を見ると、周辺はなぜか凍りついていた。足場が凍っているのだ。

「ちょっ、わっ、とと……!」

 手すりもないこの状態で、凍った足場で立ち続けるのは無理がある。
 攻撃を向けられれば、なおのこと。

 再び氷の槍が放たれ、驚きからルリーはその場で足が震える。滑らないように足が動くのと、攻撃が当たらないように足が動くのとでパニックだ。
 魔法障壁を張ろうにも、魔法はイメージの力。足場が滑りやすくなったことで、集中力が乱れる。

「っ、く、えい!」

 だからルリーは、その場で対処できるよう魔導の杖を魔力強化する。
 強化された杖は剣の如き硬さを手に入れ、向かい来る槍を弾いていく。

 それでも、杖を振るうたびにバランスを崩しかねない。焦りが募っていく。

「やっぱあんたみたいなのは、想定外のことに弱いみたいね」

「!」

 足場を凍らせ、防戦一方に集中させたルリーを前に、クレアは笑みを浮かべた。
 相手はダークエルフだ。なにをしてくるかわからない。ならばなにもさせなければいい。

 この身体は、妙に調子がいい。ならばこの力を持って、お前を潰してやると。
 クレアの頭は、その気持ちで溢れていた。

「なら……えぃ!」

「!」

 ルリーは自身の魔力を練り上げ、杖先に集中。杖を横薙ぎに振るうことで、剣圧のように魔力を放つ。
 それは氷の槍を破壊し、一時的に余裕が生まれた。

 その数秒の余裕を持って、ルリーはこの場から脱出。
 その先は、上空だ。足場が凍っているので下手に踏ん張れないが、それでも可能な限り力を込めてジャンプ。

 しかし、ただジャンプしたところですぐに着地してしまう。着地すれば、その瞬間に滑って転んでしまう可能性が増す。
 だが、クレアはなにかあると勘ぐり、杖をルリーが着地するだろう地点へと向けた。

 ……ルリーは、地に足はつけなかった。

「!」

 なぜなら、空中で止まっていたからだ。空中に立ち、そのままぴょんぴょんと飛んでいく。
 目論見が外れたクレアは、すぐに軌道を修正するが……空中を自在に移動する相手に、なかなか狙いが定まらない。

「……あれ、エランくんの参考にしたのかな」

「ど、どうだろう?」

 その光景を見ていたナタリアは、隣のエランに問いかけた。
 それは、彼女たちの「ドラゴ」クラスがコーロランやノマのいる「デーモ」クラスと試合を行ったときのこと。

 エランは『浮遊魔法』を用い、ゴーレム撃破に貢献した。
 空中に見えない足場を作り、それを地とすることであたかも空中を浮遊しているかのように感じさせる。
 よほど魔力の精度が高くないと無理な芸当だ。

「っ、ちょこまかと……!」

 空中を移動するルリーに、クレアは魔力弾を放つがそれをルリーは華麗にかわしていく。
 攻撃が当たらない事実に、クレアは徐々に苛立ちを募らせていく。

 もしや……と、一つの考えが浮かんだ。
 ルリーが反撃をせず、攻撃を防御したり回避に専念する理由。こちらの魔力を使い尽くさせ、魔力切れを狙っているのではないか。

 魔法は、自分の魔力を使っている。そうである以上、魔力を使い続ければやがては魔力切れを起こす。
 エランのように規格外の魔力があれば別だが、クレアの魔力は人並みだ。

「そう、そっちがその気なら……」

 正直、クレアは今の自分の魔力量がどれほどか、わかっていない。
 本来であれば、魔導を扱う者として自分の魔力量を知っておくのは基本中の基本だ。
 特に魔導学園の学生ならば、それを計る機会などいくらでもある。

 だが……以前はともかく、この身体になってしまってから、自分がどれほどの魔力を持っているのか、クレアにはわからなかった。
 ずっと部屋にこもっていた弊害だ。自分の魔力を試すようなことをしていない。

 とはいえ、先ほどからまったく、魔力が減っている感じがしない。

「……ふぅ」

 一旦、大きく深呼吸をする。頭に登った血、それを落ち着かせるためだ。
 目を閉じ、息を吸って吐き……目を、開ける。

 ……不思議と、ルリーが次に移動する方向が、わかった。

「! そこ!」

 だからクレアは、その先に杖を構え……高密度の、魔力弾を放った。
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