史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第九章 対立編

647話 クロガネのお披露目したい

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 結局、クロガネのお披露目はまた今度ということになった。
 私は別に、クロガネを自慢したいわけじゃない……ごめんうそ。めちゃくちゃ自慢したい。これが私の使い魔なんだよって。

 いっそのこと、全校生徒の前でお披露目する機会でもないだろうか。
 そう、ゴルさんとの決闘のときみたいな。ああいうときなら、ほとんどの生徒が見に来ていたはずだ。

 うんうん、ああいう場で誰も想像していないところで、使い魔召喚でクロガネを召喚、っていうのはすごく盛り上がると思うよね。
 ただ、いくら決闘と言っても相手が余程じゃないと。

「ゴルさん、また決闘してくれないかなぁ」

「キミの頭の中ではなにが起こっているんだ?」

 生徒会長で、なによりこの国の第一王子だったゴルさんとの決闘だから、あれだけの人が集まったんだ。
 あれと同じくらいってなれば、それはもうもう一度同じ人に頼むくらいしかない気がする。

 ただなぁ……


『同じ相手と何度も決闘をしてもいいのか、か? 別に、それを禁止している規則はない。
 誰であろうと、相手が生徒だろうと教師だろうと、同じ相手だろうと、決闘をしてはいけないとは…………待て、なぜそんなことを聞く』


 以前、ゴルさんに聞いてみたのだ。同じ相手と決闘をしてもいいのか。
 それに対してゴルさんは正直に答えてくれたけど……

 なんとなく、嫌そうな顔をしていた。

「エランちゃんは、決闘がしたいのか?」

「え? いやそういうわけじゃ……」

 あれ、もしかして今の私、ものすごい戦闘狂みたいになっているんじゃ?
 違うんだよ、戦うのは……嫌いじゃないけど、ただクロガネを合法的に見せびらかしたいだけなんだよ。

「ふむ、そうかそうか」

 そうかってなんか変に納得しちゃったよ!?

「しかし、残念な話だが……それは、難しいかもしれないな」

「へ?」

 レーレさんはなぜか、私が決闘をするのは難しいのだと言う。
 予想外の言葉に、私は開いた口が塞がらない。

「それって、どういう……」

「いや、これは私も含めて、先輩としては情けない話なんだが……ゴルドーラ会長とあんな激戦を繰り広げた相手と、渡り合える気がしない」

 情けない話だ、と前置きして、レーレさんは言った。
 えっと……私とゴルさんの決闘がすごすぎて、それを見てた人たちは腰が引けちゃった……

 これはつまり、こういうことだろうか?

「この学園には、貴族も平民も在籍しているが……その割合は貴族の方が、圧倒的に多い。
 そして貴族は、己の立場やプライドを気にする人物だ」

「立場やプライド……」

「あぁ。なにも、勝てる相手としか決闘をしない……というわけではないが……負ける可能性の高い相手と決闘をしようという貴族は、なかなかいないだろうな」

 なるほど……レーレさんの話を聞いて、だいぶわかってきたぞ。それに、以前に誰かが言っていたこととも一致する。
 貴族はプライドの高い生き物だ。そんな貴族にとって、魔導対決の敗北は結構傷つくんだろう。いろんなものが。

 そして決闘は、私とゴルさんのときのように学園内の人なら誰でも見に来れる。
 それはつまり、自分の勝利も……あるいは敗北も、見られ広まってしまうということだ。

「そりゃ、一年生にぼろ負けしたってなったらショックで立ち直るのに時間がかかりますもんねぇ」

「……自分で情けないと言っておいてなんだが、その言い方は私も傷つくな」

 うぅむ……これじゃあ、決闘ができなくなっちゃったってこと?
 ゴルさんの実力は、全校生徒が知るところだ。一年生だって、私みたいな世間知らずじゃなきゃ知っている。

 そんなゴルさんと、私はあそこまでの激闘を繰り広げたのだ。

「ってことは、私が決闘を挑んだとして、受けてくれるのは……自分はゴルさん以上に強い、って自負してる人だけってこと!?」

「状況にもよるだろうが、そうなるだろうな。
 ちなみに、決闘は申し込むだけでなく、申し込まれることでも発生するのは、わかっているな?」

「それは、はい……」

 私がゴルさんに決闘を挑んだように、誰かが私に決闘を挑むことも可能だ、と言うことだ。
 ……いるかなぁ、そんな人。

 今や先輩ですら私を敬遠しているらしいのに、私に決闘を挑んでくれる人いるかなぁ。

「ま、そもそも決闘とは互いに譲れぬものを賭ける時に行われるもの……というのが、暗黙に承知されているものだ。
 ただ戦いたいから、という理由で誰彼構わず決闘を申し込むものではない」

「は、はい……」

 あれ、いつの間にかちょっとお説教されてる?
 とはいえ、誰彼決闘を挑むもんじゃないってのは、その通りかもしれないしなぁ。

 うーん、クロガネお披露目はまた別の機会を考えた方がいいか。

「魔導の力を試したいだけなら、授業や試合もある。そのあたりで自分を鍛えるのもありだと思うぞ」

 どうやらレーレさんは、私が決闘をしたいのは自分の力試しをしたいからだと考えているみたいだ。
 それも間違ってはないけど……一番の理由は、クロガネのお披露目だって、言えない状態だ。

「……そろそろご飯食べに行きましょう」

「うん、そうだな」

 なんとなくいたたまれなくなった私は、話題をそらす。
 レーレさんは不思議がることなく、うなずいて立ち上がった。

 さて……私たちはともかくとして、今もベッドの上でぐっすりの毛玉魔物を、どうしようか。
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