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第九章 対立編
648話 頭にひっかかること
しおりを挟む「ふぁー、食べた食べた」
私は、膨れたお腹を擦りながら部屋に戻ってきた。
学園はお休みでも、食堂や購買は使える。それに、お風呂も。
お風呂を済ませ、食事を済ませ、戻ってきたわけだ。
ちなみに、部屋を出ていく際にどうしようかと悩んでいた毛玉魔物だけど、魔法で檻を作ってからそれに入れておいた。
かわいそうだけど、私たちがいない間にいなくなられても困るし。
魔物を連れて外に出ても、騒ぎになりそうだったしね。
「すぴー……すぴー……」
「……」
結果として、魔物はめちゃくちゃ眠ったままだったけど。
「すごい寝てるね」
「相当疲れていたということだろうな」
魔物を発見した時の様子から察するに、ただ転んだだけ……というわけではなさそうだ。
それに、魔物を見つけた生徒たちに集団で襲われた……という可能性も、みんなの様子を見るにないだろう。
それに、レーレさんは魔物相手だろうとそんなこと許しそうにないし。
「起きたら、なにがあったか話を聞こうと思ったのに」
「! 魔物の話が、わかるのか?」
「……いや、わかんない」
なんとなしに言ったけど、魔物の言葉なんてわかるはずもない。
そもそも、モンスターとだって会話はできないのに。
「クロガネは、魔物の言葉はわかる?」
『相手に話す意思さえあればな。矮小な存在は、我の覇気に当てられてまともに話も出来ん』
「ほぉ」
クロガネなら、魔物の言葉がわかるのか。ならクロガネ経由で、魔物がなにを言っているか聞きだせばいい。
使い魔がいる人たちは、こうやってモンスターや魔物の言葉がわかるってわけか。
「すごいな、使い魔」
「私にはキミとクロガネの会話は聞こえないが、一応言っておくぞ。普通は使い魔でも魔物と会話はできない」
レーレさんが呆れたように言う。普通は魔物と会話なんてできないのだと。
それってつまり……クロガネが普通じゃない。他の使い魔よりも優れているってこと!?
この圧倒的存在感は、やっぱり他とは違うんだ!
「ふふん!」
「鼻を長くするなんて、キミはわかりやすいな」
檻を消して、魔物を観察して。
小さく簡易的なものだったけど、これだけ弱った魔物ならあれくらいで充分の強度だ。
もう結構時間が経っているけど、起きる様子はない。
息はしているから、死んじゃったわけじゃなさそうだけど。
「ふぅ」
レーレさんが、ベッドに腰を下ろす。
普段は後ろで結んでいる髪も、今は下ろしている。お風呂上がりだからか、今は色っぽく見える。
ノマちゃんのドリルヘアもそうだけど、普段とは違った髪型って言うのも、なんかいいよね。
「そういえば、この部屋……キミのルームメイトは、あのノマ・エーテンちゃんなんだっけ」
「え? はい、そうですよ」
ふと、突然ノマちゃんの話が出てきた。
なんでノマちゃん……まあ、ノマちゃんの家は結構有名っぽいしな。ルームメイトだって話も、普通にわかるだろうし。
それにしても……"あの"ってなんだ"あの"って。
「いや、彼女と同じクラスの子から、面白い子がいるんだと聞いたんでな。ふと、思っただけだ」
「面白い子……」
ノマちゃんは……確かに面白い子。いやおもしれー女だ。
私とはクラスは違うけど、一緒のクラスならばその面白さもよくわかるだろうな。
いやあ、ノマちゃんと同じクラスだったらもっと楽しい学園生活になって……
……いや、ルームメイトってだけでも賑やかなのに、クラスまで一緒だとさすがに疲れてしまうかもしれない。
「ノマちゃんと同じクラスの子ですか。レーレさん、後輩に仲良しな子多いんです?」
「仲良し、というか……弟の、彼女だった子だから、懇意にしていたという話だよ」
「……」
やっべ、これ地雷踏んじゃったか? いや、考えすぎか。
レーレさんの弟の"魔死事件"、その第一発見者は私じゃなくてその彼女だった。
確かレーレさんの弟が二年生で、彼女さんは一年生だって話は聞いた気がするけど……そっか、ノマちゃんと同じクラスだったのか。
「彼女とは、個人的にも仲良くしていてな。弟が亡くなってからも……そのときに、まあいろいろな話をするわけだ」
「な、なるほど」
「ん、そんなに気にすることはないぞ。私も彼女も、普通にしている分には問題ない」
普通に……ってことは、やっぱりまだ吹っ切っていないんだよな。
そりゃそうだよな、弟のことだもん……
……きょうだいの、ことだもんね。
「……?」
「どうかしたか?」
「あ、いやなんでも……」
なにかが、頭の隅に引っかかる。そしてそれは、覚えがある。
あれは……そう、ゴルさんに決闘を挑んだあの時。
ゴルさんが弟のコーロランにひどい言い方をしていて、たまらず……飛び出したんだよな。
その時に思っていたのは、"きょうだいだから仲良くしてほしい"ってことだった。
私にはきょうだいどころか両親もいないのに、なんでか他人事のようには、思えなかったんだ。
「それより、レーレさんはノマちゃんとは面識はあるんですか?」
「いや、残念ながら。興味はあるんだけどな。
今はこの部屋にも、いないんだったか」
「あ、えぇ。ちょっと用事で、お城に泊まってて」
ノマちゃんがメイドとして雇われたから、ここにはいない……説明するには複雑すぎる。
お城での騒ぎも、いったんの決着を見せたから、もうすぐしたら帰ってくるとは思うんだけどなぁ。
「話に聞くノマ・エーテンちゃん。そして彼女と同室なのが、学園で話題の尽きないキミエラン・フィールドちゃん……なかなか面白い組み合わせだ」
「……私、そんなに有名なんです?」
「それはもう。いろんな意味でな」
どうしてだろう、自分のことだから気になるのに、あまり聞きたいとは思えないのは。
それほど有名になっているのに……自分に関する話って、思いの外耳にしていないんだよな。
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