史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第九章 対立編

649話 漢らしい

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 私が有名だという話は、嬉しいような……ちょっと怖いような、複雑な気持ちがある。
 だって、やってきたことがやってきたことなわけだし……ねぇ。

 それに、今まで同級生からそういう噂は聞くことが多かったけど、まさか先生にまで有名になっているなんてな……
 学園で徐々に頭角を現していく、という私の密かな計画は未だ進行中というわけかな?

「ちなみに、どんな風に有名なんです?」

「そうだな……やはり、入学時の魔力測定で、測定用の魔導具を壊したのは有名だな。私が知る限り、そんなことをしたのはゴルドーラ生徒会長くらいだ」

 あぁ、やっぱりあの一件は先輩たちにも広まってるんだ。
 あの場にいたのは先生たちと新入生だけだと思ってたけど、他にもいたのかもしれないし、話はどこから広がるのかわからない。

 それにしても、ゴルさんも魔導具壊してたのか……これはいいことを聞いたな。今度いじってやろう。

「まあ、ほとんどは経験してるキミにとって改めて言うまでもないものばかりだろう。
 魔獣を単独で倒しその肉を生で食したと聞くし、生徒会長に決闘を挑む頭のネジが外れたイカれた狂犬とも……それに、王族といつの間にか太いパイプを作り上げていて、実は前国王の隠し子なんじゃないかとか」

「尾ひれがすごいし前に聞いたことあるのよりひどくなってる!」

 言うまでもないどころか初めて聞くものばかりだよ!

 魔獣退治やゴルさんに決闘を挑んだことは間違ってないけど、そこに付いてる尾ひれがひどい!
 魔獣食べるわけ無いだろ、どんな蛮族だ私は! あと若干ただの悪口入ってるだろ!

 果てには、国王の隠し子!? そんな噂まで流れてるの!?

「いや、ゴルドーラ生徒会長に決闘を挑んだこともそうだが、それを機に生徒会へ入り、そしていつの間にか弟妹とも仲良くしている。それはもしかして……という話だ」

「もしかしてもなにもないよ!?」

 これもしかして私先輩たちにひどい誤解されてない!?
 有名になりたいとは思ってるけど、こんななり方は望んでないよ!?

「他に、他にないんですか!? ほら、性格だけじゃなくて、私の強さ的な!」

「うーん……魔獣を倒したという話は直接目にしていないから眉唾だったが、その後ゴルドーラ生徒会長との決闘を見れば納得がいく。
 あの鬼気迫る迫力……なにを置いても勝利をもぎ取ろうという姿勢。どんな逆境にあっても諦めない心。あれこそまさしく、真の漢だと、私のクラスメイトは感心していたな」

「女だ私は!」

 誰の胸が漢みたいにぺたんこだって!? じゃなくて!

 あの必死の激闘の結果が、私を男にしてしまった……なんてこったい。
 もちろんそれは心意気の話なんだけど、花の乙女に漢はないんじゃない!?

「しくしくしく……」

「まあそう落ち込むことでもないさ。漢らしいなどと、武人の誉れではないか」

「武人じゃないんだよ!」

 レーレさんは武士っぽいからいいかもしれないけど、私は全然よくない! いや、レーレさんも女だしな……
 いやともかく、よくない!

 私に対しての噂、思っていた以上にとんでもないものばかりだな。

「私こんなか弱い女の子なのに……」

「本当にか弱い女の子は自分のことをか弱いとは言わないと思うんだが」

 これじゃあ、私のことをよく知らない人はムキムキマッチョな蛮族イメージついてるんじゃない?
 いや、ゴルさんとの決闘で姿は見せてるから、私がかわいい女の子って認識はみんなにあるはず。

 じゃあ、この見た目で蛮族キャラみたいになってるのか……それはそれでどうなんだ。

「ところで、キミがゴルドーラ生徒会長との決闘で使っていた魔導具……あれは、ひょっとしてピアの作ったものか?」

 落ち込む私に、レーレさんが疑問を口にする。
 気持ちを切り替えて、楽しい話題にしよう。うん。

「そうですよ。ピアさんとは知り合いなんですか?」

「知ってるもなにも……友人だよ。去年同じクラスになってからな」

「へぇ」

 私に魔導具を貸してくれた先輩、ピアさん。魔導具作りに専念している彼女は、レーレさんとは友達なのだという。
 ピアさん、友達いたのか……

 あ、なんとなく魔導具が友達って印象が強いだけで、別に変な意味じゃないからね!?

「あいつはなかなか楽しいやつでな。私が見たことないものをよく見せてくれた」

「いい話ですねぇ」

「そうだな。私を発明した魔導具の実験体にして心身疲労させられた思い出がなければ、素敵な思い出だったんだがな」

「……」

 ピアさんあの人なにやってんの……レーレさん遠い目になっちゃった。
 友達を実験体にしてたのか。全然楽しい話じゃなかった。

 というか、よくレーレさんはそんなことがあって友達だと言ってくれるな。

「はは、まあ散々なこともあったが、私はあいつを友人だと思ってるよ。最近は全然クラスに姿を……いや二年生になってから登校してたかあいつ?」

 実験体にされても、友達だと言ってくれるレーレさんはいい人だ。懐が広い。
 ピアさん、こういう人は大事にしなきゃだめだよ。

「研究室になら、毎日こもってると思いますよ」

「まあ、あそこはあいつの巣のようなものだからな。会いに行くならこちらから、くらいしかないか。本当にあいつは、魔導具のことになると……
 ……そうだ、キミが使っていた魔導具だが、あれには私も開発に関わってたんだぞ?」

「え、そうなんですか?」

 友達に対して、ブツブツと文句を言いながらもレーレさんは嬉しそうだ。
 そして、思い出したかのように指を立てて、私が決闘で使った魔導具について指摘した。

 ちょっとドヤ顔だった。
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