史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第九章 対立編

663話 魔導の才能

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「これが、イメージの力だよ。まずは頭の中で火の玉をイメージする……まあイメージするのはなんでもいいんだけど、やっぱり初心者にはイメージしやすいものが火とか水とか生活に欠かせない身近なものになるわけで、その中でも火の玉ってなんかかっこいいなって感じがするんだよね。で、イメージしたものを魔力を通して具現化する……このとき、具現化する先も同時にイメージするのがコツね。でないと魔力が途中で暴発しちゃうから。この場合は魔導の杖の先端に火の玉を出現させるイメージで、出現させたらすぐにぶっ放すんじゃなくて少し杖の先に維持するように魔力を固めることができると、より効率的な……」

「エランさんエランさんちょっとお話が長いです」

「魔導のことになると急に早口になるわよねあの子」

 フィルちゃんに魔導を教えるにあたって、いろいろと説明することがあったけど、ルリーちゃんとクレアちゃんにストップをかけられた。
 私としたことが、体験して覚えろのつもりが長々説明してしまってたぜ。

 説明についていけてないのか、フィルちゃんはぽかんとしている。

「ごめんねフィルちゃん、難しかったかな」

「うぅん……」

 目をバッテンにしているフィルちゃんはかわいらしいが、そんなこと言ってる場合じゃないな。

 とりあえずフィルちゃんを落ち着かせ、深呼吸。
 これは私も落ち着いておかないといけないな。

「やっぱり私たちがいたほうがいいわね」

「エランさん、いろいろ暴走することありますからね」

「そこっ、聞こえてるよっ」

 まず、こういう小さい子には興味を持たせることが第一だ。興味がないとなにも聞いてくれない。
 私も、似た経験がある。師匠が私の興味を惹く形で、教えてくれた。

 というわけで……

「それっ」

「わぁ……!」

 私は魔力を集中し、魔導の杖を軽く振る。
 すると杖の先からは光が瞬き、杖を素早く動かすことで光の残滓がその場に残る。

 子供ってのはピカピカしたものが好きだからな。さっきの火の玉もそうだし、ピカピカさせときゃ一発よ。

「こーんなこともできるんだよー!」

「わぁ、すごいすごーい!」

「これなんの時間!?」

 おっとっと、興味を惹くことに夢中で目的を忘れてしまっていた。いつまでもピカピカやってる場合じゃない。
 ある程度フィルちゃんの興味を惹けたところで、改めて、だ。

「今のは、フィルちゃんも使うことができるんだよ」

「本当?」

「うん。私が見せたのを思い浮かべて、それを魔力に変換……ってのはまだ難しいか。
 とりあえず、私がさっきやったのを思い返してみて」

「わかった」

 イメージを持たせるには、直接見せるのが一番早い。さっきやったように、火の玉とかピカピカとかね。
 いきなりイメージを浮かべるのは難しいから、一度どういうものか見せてからやらせてみるのだ。

 そこまでを理解している必要はないけど、とりあえず見たものをそのままイメージすることからだ。
 まあ、うまくイメージできたところで自分の魔力の大きさによって、具現化できる大きさも変わってくるわけだけど……

「お、おぉっ、火が、火がついたよママ!」

「……」

 すると、フィルちゃんの持つ杖の先端には、ボゥッと火の玉が灯っていた。
 私が見せたものより形は崩れている。けれど、それは確かに火の玉だった。

 まさか、たった一発で成功するとは……
 子供だから、イメージの力が強いのかな。いやそれだけじゃないよな。

 やっぱりフィルちゃん自身の魔力も、かなり多いのか?

「よーしよしフィルちゃん、まず第一段階は成功と言えるね。じゃあ次は、それを真上にでもぶっ放してみて……」

「あっ、なんかとめられないかも……!」

 フィルちゃんが生み出した火の玉を、被害のないように私がさっきやったように天高く打ち上げる……そう示そうとしたけど。
 魔法を維持する力はまだないのか、フィルちゃんはプルプルと足を震わせ……力の入れられたままの杖を、ぶんぶんと振るってしまう。

 その結果、杖の先端が私の方へ向いた瞬間、火の玉が放たれた。

「あっつぁい!!」

「エランちゃん!」

「エランさん!」

 火の玉が顔面直撃し、私はその場に転げのたうち回る。
 な、なんてこった……まさかこんな不意打ちに、ぶっ放されるなんて……

 寸前に魔力障壁張ったから直撃は避けられたものの、間近で浴びた熱まではかき消せない。暑い。

「はぁ、ふぅ……あ、焦った……」

「ま、ママ……」

 あ、まずい。今の姿を見てフィルちゃん涙目になってる。
 自分の撃った魔法が私に直撃したんだ、無理もない。

 けれど、ここで魔法は怖いものだと認識が強くなってしまったら、もう魔導に興味は示さなくなってしまうだろう。
 魔法が怖いのはそうだとして、それはまだ教えるタイミングが違う。

 今は、めいいっぱい楽しいものだと思ってもらわないと。

「だ、だーいじょうぶ! 私なんともないから!」

「ほ、ほんとう?」

「ホントホント!」

 実際、強がりの部分もあるけど……熱以外は防げたので、たいした怪我ではない。

「でも、私以外に向けちゃったら危ないからね。対処が遅れた私も悪いけど、次はもっと気をつけよう」

「……うんっ」

 とりあえずは、これで大丈夫かな。
 それにしても、本当に魔導の才能はあるのかもしれないな。フィルちゃんは。
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