史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第十章 魔導学園学園祭編

734話 ファンです。ファンっす

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 私に憧れてくれているという女の子、エコ・コンコンちゃん。
 私より大柄な女の子だけど、まるで小動物を思わせるのはなぜだろう。

 頭の上にぴょんと跳ねたアホ毛が、ぴょんぴょんと動いている。ちょっと面白い。

「ほらエランちゃん、よかったじゃない。熱狂的なファンができて」

「熱狂にも限度があるからね?」

 くぅ、クレアちゃんめ……やっぱり他人事だと思ってからに。
 まあでも、自分のファン……っていうのは、なんか嬉しい気持ちはあるかな。

「じゃあとりあえず、改めて握手でも……」

「おぉお……かん、感激っす……! ふきふきふき……」

 私が右手を差し出すと、エコちゃんは自分の右手を服で擦る。綺麗にしている、ということだろうか。
 別にそんなこときにしなくていいのにな、としばらく見守る。

 それから、ようやく手を離したかと思えば……「はぁー、はぁー」と自分の手のひらに息を吹きかけている。
 さらに、手のひらを自分の顔に近づけていき、その口からは舌を伸ばしてべろべろべろと上下に動かして……

「って、ちょっと待った!」

 その舌が手のひらより触れる前に、私はストップをかける。
 その声に反応して、エコちゃんの動きはぴたりと止まる。私の顔を見る。

 なぜか、舌をべろべろべろと動かしたまま。

「な、なにしようとしてるの! その動きやめろ!」

「……な、なにって……エラン様と握手させてもらうんす。消毒しないとっすよ」

「だから手をなめてきれいにしようと!?」

「ただ舐めてじゃないっす。舐めまわして、っす」

 こ、この子正気か……?
 いや、憧れの人との握手、できるだけきれいにしようという気持ちはわからなくはない。

 だからといって、舌ペロはどうなのよ!?

「いや、いいから! そこまでしなくていいから!」

 ぶっちゃけさっきの息吹きかけもグレーゾーンだからね! 美少女だから許されてるだけだからね!
 でもベタベタの手で握手はさすがにダメだよ!

「そ、そうっすか……」

「普通に握手してくれればいいから」

 なぜか納得してない感じのエコちゃんだけど、無理やり気味にうなずいてもらったことでようやく握手に移る。
 まさか誰かと握手するだけでこんなにまで疲れるとは、思わなかったよ。

 ぎゅ、と手を握る。

「あ、あはぁあ……か、感激っす……手、めっちゃやぁらかい……それに小さい……は、ぁは……!」

 目の前では、涙と鼻水といろいろなものを垂れ流しているエコちゃんの姿があった。感涙、ってやつだろう。
 こんなにも喜んでもらえるなら、握手の一つや二つ安いものだ。でも、ちょっと怖い。

 そして、すでにこの奇行に慣れつつある自分が怖い。

「ありがとうございますっす! ありがとうございますっす!」

「あぁ、うん」

 それから、堪能したのか握手を離す。曰く、これ以上手を握ったらバチが当たるとのことだ。
 私は呪いの類いかなにかか。

 握手した右手を、大切そうに撫でているエコちゃん。うわぁ。
 なんか、この先一生手を洗わないとか言いそうだ。

「自分、この先一生この手を洗わないっす!」

 言っちゃったよ。

「いや、それは洗って普通に。お願いだから」

「っす……エラン様のお言葉なら、従うっす」

 なんで残念そうにしているんだこの子は。

「ところで……迷路をクリアした商品って、なんなのかしら」

 今まで黙っていたクレアちゃんが、言う。
 多分このままじゃ話が進まないと思ったんだろう。

 それを聞いて、エコちゃんははっと手を叩いた。

「そうっした! ちょっと待ってくださいっす!」

 そう言って、座っていた席の下へと体を潜り込ませる。

「忘れてたみたいね」

「ははは……」

 大丈夫だろうかこの子……いや、私の前だから変になっちゃうだけなんだろうな。
 自分でそんなことを思うのは変な気持ちだけど。

「はい、こちら商品の限定アイスっす!」

 そして、エコちゃんが取り出したのは……キンキンに冷えた、アイスだった。
 それを受け取り、私たちは早速食べることにする。

 うん、大きさはあまりないけど、おいしいよ。

「んん、ちべたくておいしい!」

「はわわ……エラン様がアイスを食べてる……!」

 ……今まで、食堂とかでも注目されることは多かったし、つまりは食べるところも見られていたってことだ。
 でもそれは、私という特徴の人間が珍しいから見られていたわけで、食事を見られたのはそのおまけみたいなものだ。

 それが……今では、食事をまじまじと観察されている。
 恥ずかしいというか、食べにくい。

「あの、そんなまじまじ見なくてもよくない?」

「あ、も、申し訳ないっす。えへへ……
 あ、あの……食べ終わったらその棒、いただいたりとかって、できませんかね、えへへ……」

「……」

 この子、私のファンなのか? それとも行き過ぎた狂信者なのか?
 さっきから背筋の寒気が止まらないよ。

「そういえば……なんか、エランちゃんのファンクラブがあるとかなんとか、聞いたことがあるわね」

 アイスをなめながら、クレアちゃんが言う。
 あ、それ私も聞いたことがある。あんまり深くは聞いていないけど。

 私のファンクラブ……本人非公認だけど、まあそれはいいよ。別に。
 ただ……

「あ、もち自分もファンクラブ会員っすよ!」

 私たちの会話を聞いていたエコちゃんが、はいはいと手を上げた。
 やっぱりか……いや、やっぱりじゃなかったら逆に怖いんだけども。

 ……私のファンって、こんなのばっかなのかなぁ。
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