史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第十章 魔導学園学園祭編

735話 おもしれー女

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 とりあえず、私の食べたアイスの残り棒を欲しがっていたエコちゃんには、棒をあげることにする。

「お、おぉ……ま、マジっすか! いいんすか!」

「うん、いいよ別に」

 どうせ、食べ終えたものはゴミになるだけだ。
 なら、欲しいという人がいるならその人にあげたほうが有効的……なはず。

「はぁ、はぁ……な、なにか密閉して保存できる袋とか、さ、探さないと……」

「……よかったの、あれ」

 残り棒を保存するため、エコちゃんはあちこち探って保存用の袋でもないか見ている。
 その様子に、引き気味のクレアちゃんがそっと耳打ちしてきた。

 よかったの、とは……なんのことなのか、わざわざ言われるまでもない。

「まあ……髪の毛を欲しい欲しいって言われるよりは、あっちのほうがマシかなって」

「ちょっと諦めの境地に入ってるんじゃないわよ」

 なにかあげないと、っていう強迫観念に駆られている。こんなの初めてだよ。
 髪の毛とか、体の一部は怖いから……まあ、あれくらいなら。

「保存するって言ってるし、あの棒をペロペロとかはしないでしょ。いや、もうあげたんだから自由にしていいんだけどさ」

「どうするのかしらね、あれ」

 憧れの人の持ち物をもらいたい……という気持ちは、わからないでもない。
 私だって、師匠から貰ったネックレスは肌身離さず持っている。外す時は、お風呂のときくらいかなぁ。

 そして、万一にも傷つかないために常に防御魔法をかけている。
 サビとかからは守ってくれないから、いつも磨いているけどね。

「……でも、ネックレスとアイスの残し棒は全然違うよなぁ」

 さすがに同列に語るわけにはいかない。

「えっと……そろそろ行きましょうか」

「そうだね」

 どうやら、異空迷路に挑んでいた他の人たちも帰ってきたようだし。いつまでもここにいたら邪魔になるだろう。
 うん、私がいつまでもいたら、エコちゃん本来の仕事しなさそう。

「じゃあm私たちそろそろ行くから。またねエコちゃん」

「! あ、あぁ……エラン様が、自分の名前を呼んでくれたなんて……感激っす!」

 私にはなんともないことでも、エコちゃんにとってはすごいことだったようだ。
 名前を呼ばれた感激に涙を流し、それでも私たちを見送ってくれた。

 ……面白い子では、あったよな。

「あんな子がクラスにいるなら、退屈はしないんだろうけどね」

「! ……そ、そうね?」

 何気なく呟いた言葉に、クレアちゃんはひいどく驚いた表情を浮かべている。
 なんだよう、その目は。まるで「それをお前が言うのか」みたいに言いたそうじゃないか。

 私はあそこまで面白くはないはずだ。

「っと。そろそろじゃない?」

「ん? ……あぁ、サプライズゲスト」

 時間を確認したクレアちゃんが、言う。
 一瞬なんのことかと思ったけど、今日来ることになっているサプライズゲストのことだ。

 午前と午後に、一回ずつ。
 私たちは午後からはクラスの手伝いなので、見ることが出来るのは午前だけだ。

「場所は……中庭ね」

 パンフレットを確認すると、当然時間と場所が書いてある。
 いったい誰が来るのか、直接行ってみないとわからない。

 ということで、私たちは指定の場所に向かう。
 まずは外に出て、それから……

「おー、今日も飛んでるわねー」

 歩いていくと、わいわいと騒がしい声が聞こえる。
 空を見上げると、そこには魔導具で空中飛行している人たち。ピアさんのとこか。

 ピアさんは魔導具作りが同級生にわかってもらえてないみたいだったけど、こうして見ると一般受けはするんだよなぁ。

「やっぱり、魔法を使えない人でも使える道具……っていうのが、みんな触れやすいのかな」

「そうかもしれないわね」

 魔導具って言ったって、日常的に使っているものはたくさんある。
 身近にあるものなのだ。だからみんな、一度触ってみれば楽しめるはず。

 ああいうのこそ、唯一無二だろうな。あんなにたくさんの魔導具を作って、それをみんなに使ってもらう。
 入学してからずっと作ってきた魔導具……どうしても出せないものもあるだろうけど、今まで作ってきた魔導具が日の目を見るのは、ピアさんも嬉しいだろう。

「でも、あそこまでみんなに楽しんでもらえてる成果を見せれば、同級生たちを見返せるんじゃないかな」

「……私は、その人のことよく聞かないけど。でも、エランちゃんがゴルドーラ様との決闘で使った魔導具……あれが、ピア・アランフェイク先輩が作ったものだって、話題になってるのは小耳に挟んだわよ」

「そ、そうなんだ?」

 へぇ、へぇ。私がピアさんの魔導具を使ったことで、ピアさんの魔導具がみんなに認められつつある。
 元々、魔導具の性能を試すため、で使わせてもらったけど……

 少しは、宣伝のようなこともできたのかな。

「ふふ、なんかちょっと嬉しいかも」

「まったく。迷子になってたまたま魔導具作ってる先輩に会って、その人の魔導具を借りる……エランちゃんは、入学した時からハチャメチャよね」

「そう?」

 まあ、ピアさんに会ったそもそもの始まりは校内で迷子になったことだしな。それに、ルリーちゃんに会ったのも迷子が原因だ。
 今でこそそんなことはなくなったけど……最初の頃は、しょっちゅう迷子になってたなぁ私は。

 そんなことをしみじみと考えていたけど、目的地に近づいているのを確認して意識を戻す。
 さあて、誰が来てるのかな。まあ、私が知らない人の可能性が高いけど。
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