史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第十章 魔導学園学園祭編

739話 気になるあの子の話

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 私の言った言葉に、場の空気が凍った……ような気がした。
 というか、タメリア先輩とクレアちゃんから感じる空気というのが……ひえひえだった。

 対して、アルミルおじいちゃんはなにを思っているのかわからない。

「えっと……」

 もしかして、私が見当外れなことを言ってしまっただろうか。
 そう思って、口を開いたのと同時……

「くく……くはははは!」

 唐突に、おじいちゃんが笑い出した。
 腹を抱えて、本当に愉快そうに。この人、こんな笑い方するんだと、思った。

 そして、それを見た先輩とクレアちゃんは、ぽかんとしている。私だってしている。

「くはは、はぁ……いやはや、本当に聞いていた通り。思っていることをズバズバ言うのだな」

 なんとか落ち着いたらしいおじいちゃんは、それでも目に浮かんだ涙を指先で拭っている。
 どんだけ笑ってたんだよ。

 ただ、今の言葉で私に対して悪感情を持ったとか、そんなことはなさそうだ。

「私、みんなの間でどんな噂されてるの?」

「噂など、一概にどういうものとは言えん。人の数だけ、噂というものは存在する。なので私は、自分の目で耳で確かめる。噂など信じることはないが……
 少なくとも国王様は、キミのことを『何事にも動じない面白い子』だと称していた」

 噂話は信じないけど、だからといって噂話を信じないわけじゃない。
 それに……この人、多分王様の言葉ならそのまま信じるんだろうな。王様のことめっちゃ尊敬してるし。

 というか、王様は私のことそんな風に思っていたのか。

「だからって、ちょっと笑い過ぎじゃないですかねー」

「ははは、すまないな」

 それから、おじいちゃんはこほんと咳払い。

「先ほどの疑問だが……まあ、おおよそその認識で合っている」

「ナタリアちゃんとどう接していいかわからないってこと?」

「……本当に、辛辣なことだ」

 おじいちゃんにとっては、この話題は思うところがあるのだろうか。
 けど、あからさまにも話題をそらそうとしていないし……

 なんとかしたいと、思っているのかな?

「キミは、ナタリアの友達なのかね」

「そうだよ! めっちゃ仲良し!」

 私は、胸を張って応える。張る胸がないって? やかましいわ!

 この人にとっては、王様が面白いと言っていたに加えて孫娘の友達……ということになるのか、私は。
 なんか、ちょっと距離が縮んだ気がする。

「そうか。……なら、聞かせてくれないだろうか。ナタリアのことを」

 気のせいだろうか……おじいちゃんの目が、少しだけ優しいものになった気がする。
 ナタリアちゃんのことを聞かせて、か……

 寮暮らしのナタリアちゃん、休日もあんまり実家に帰ってないのかな?

「もちろんいいよ!
 ……あー、でも……」

 ナタリアちゃんの話なら、いくらだってできる。そう思って、オーケーと返事をしようとした。
 だけど、思い出す。私にはこの後、用事があるのだ。そう、クラスの手伝いが。

 さすがに、手伝いをほっぽり出すわけにもいかないよなぁ。

「ごめんなさい、私この後……」

「ぜーんぜん問題ないですよ!」

 その気にさせておいて悪いけど、断ろう……そう思って返事をしようとしたら、私の声をかき消すような大きな声が響いた。
 驚いて振り向くと、それはクレアちゃんのものだった。

 顔を真っ赤にして、それでも言うべきことを言ったと言わんばかりの顔だ。

「く、クレアちゃ……」

「クラスのみんなには、私から言っておくから! あ、アルミル様からの頼みを断るなんてありえないわ!」

 驚く私に耳打ちするように、クレアちゃんは早口でまくしたてる。
 どうやら、気を遣ってくれた……のだろうか? さっきからアルミルおじいちゃんをチラチラ見ている。

 アルミルおじいちゃんの頼みを断るなんて恐れ多い……と言っているようだ。

「ええと……いいのかい?」

「は、はい、もちろん! 全然ですよ!」

 話しかけられたクレアちゃんは、ガチガチに固まってしまっている。
 ナタリアちゃんの話なら、クレアちゃんも一緒に……とは思いもしたけど、この様子じゃ無理そうだ。

 それに、クラスの子に話を通してもらわないといけない。

「そうか、ありがとう」

「! い、い、いえぇ!」

 ……まずいな、このままじゃクレアちゃんがぶっ倒れちゃいそうだ。
 速めにこの場から退避させなければ。

 そして、この場にいるもう一人はというと……

「あぁ、じゃあ、アルミルさん。午後の予定は、このようになっていますので……この時間までには……」

「あぁ、わかったよ」

「じゃあ……お、俺たちはこれで」

 そそくさと、アルミルおじいちゃんに午後からの予定を伝えてから、クレアちゃんを連れて去っていく。
 クレアちゃんも連れて行ってくれるとは、気が利く。すでに一人じゃ動けない感じになっていたしね。

 さて、残されたのは二人だけだけど……

「……ここで話、というのもな」

 舞台裏のここで話をするというのも、なんだか色気がない。
 せっかくナタリアちゃんの話をするんだ、もっとこう……いい場所で話したいじゃん。

「そうだな。ならば、移動して……キミは、お昼はもう食べたか?」

「いや、まだだけど……」

「ならば、昼食も兼ねるとしよう。私の奢りだ、なんでも好きなものを頼むといい」

 お、なんて太っ腹!

 というわけで、アルミルおじいちゃんと昼食を共にし、ナタリアちゃんの話をすることになった。
 身内に身内の話をするなんて、なんか変な感じだなぁ。
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