史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第十章 魔導学園学園祭編

749話 初めてのちゅー

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「私これでも、去年も生徒会のお手伝いをしたのよ。わからないことがあったら、なぁんでも聞いてねん」

「ほぉなんでうか」

 私はカルさんと歩きながら、見回りを行っていた。なぜか、カルさんにほっぺたをむにむにされながら。
 どうやら、化粧もしていないっていう私の言葉に思うところがあったらしい。

 まるで肌触りを確かめるように、むにむにされている。

「それにしても、今年は面白い一年生ばかりで退屈しないわねぇ。その面白い筆頭が、エランちゃんなんだけど」

「ほぉれふかえ」

「そうよ。だって、入学早々ゴルちゃんに決闘を仕掛ける一年生なんて、面白いしかないじゃない」

 あー……やっぱりゴルさんとの決闘かぁ。
 特に三年生は、ゴルさんのすごさをよくわかってる。同級生に、王子で生徒会長がいるのだ。

 だからって、シルフィ先輩みたいに私のことを、身の程知らずな奴、という認識で接してくる人は今のところいない。
 むしろ、みんななぜか好印象だ。

「あほぉ……」

「うん? どうしたのかしら?」

「こえいいはえんはふいてうああい」

 私はカルさんを見上げ、いい加減これを外してくれ、と頬を指差す。
 するとカルさんは、「あらごめんなさいね」と手を離した。

「ふぅ。
 ……三年生の人たちって、やけに私に好印象ですけど……」

「そりゃ、こんな面白い後輩がいるんだもの。邪険になんてしないわよ」

 ……要は、面白いからってことか。
 考えてみれば、二年生からもゴルさん信者のシルフィ先輩以外からは良くない感情向けられたことないし。

 ま、言えるほど交流があるわけでもないけど。

「って、ここは……なんか、ひと気がないですよ?」

 ふと気づけば、周囲から賑やかな声は消え、人だかりもなくなっていた。
 学園祭最中だと思えないほどの静かな空間に、私はきょろきょろと辺りを見る。

「ふふふ……ここはね……」

 すると、カルさんが不気味に笑う。
 ま、まさか……私と二人きりになるために、人がいない場所にまで来たのか!?

 な、なにが目的で……

「こういうところに、風紀を守らないような生徒がいたりするのよね。みんな騒がしい所に行っているから、そうでない場所は穴場なんでしょうね」

「あ……そう、ですか」

 でも、身構えた私の耳に届いたのは、ここに来た正当な理由だった。
 ひと気がないからこそ、こういう場所で良からぬことをしている人がいるのだ……と。

 あ、あはぁは……私ってば、なんだか勘違いしちゃった。

「でも、本当にこういうところに……」

「しっ」

 空き教室を覗いていくけど、不審なところは見当たらない。
 本当にこういうところに、風紀を乱すような人がいるのだろうか。そう口にしようとしたときだった。

 カルさんが口元に指を当て、私に静かにするように合図する。
 それに合わせて、私は口を閉じる。それから、カルさんの動きに合わせて教室を覗く。

 なにかの準備室だろうか。そこに、物陰に隠れるようにして……人影が、見えた。

「もう、こんなところで……」

「いいじゃん、こんなところだから見つかんないって」

「もぉ」

 それは、男の人と女の人の声だった。
 やけに親し気な……というか、なんか甘えている感じがする。

 言葉から察するに、人に見つからないだろうこんな場所だから隠れてなにかをしている……ってところか。
 いったい、なにを……

「カルさん……あっ」

 とりあえず、カルさんにどうしればいいか聞こう……そう思っていたら、見ていた光景に変化が訪れた。
 見えていた人影が動き、私の目にも見える形で男女生徒の姿が露わになったのだ。

 やっぱり、男女二人だったか……と、思うのもつかの間。驚くべき候怪我、広がった。

「……!」

 私は、とっさに自分の口を手でふさいだ。
 自分で自分を褒めてあげたい。だって、こうしないと確実に声を上げていただろうから。

 私の視界に映ったのは……抱き合う男女の姿。
 そして……顔が、重なっているのが見えた。

 これは、角度的にそう見えているだけなのか……そ、それとも……ち、ちゅ……

「そこまでよ!」

「「!?」」

「!?」

 あわわわどうしようどうしよう……そう、頭の中がパニックになっていた。
 けれど、続けて驚くべきことが起こった。私の隣で事の成り行きを見守っていたカルさんが、声を上げて立ち上がったのだ。

 その姿には、男女も私も驚いてしまう。

「まったく、こんなところでなにをしているのかと思えば。風紀を乱すのは、感心しないわね」

「ご、ごめんなさーい!」

「失礼しましたー!」

 腕を組み、詰め寄るカルさんに男女は、顔を青ざめさせてものすごい勢いで去っていく。
 残されたのは、私たちだけ……

「あ、あの……さっきのって……」

「ありがちなカップルでしょうね。人目を盗んでいちゃついてたのよ」

「いちゃ……」

 なんでもないように言うカルさんに、これは珍しいことではないのだと悟る。
 しかも、いちゃついてるって……や、やっぱりさっきのって、ちゅーしてたんだ。

 きゃー、初めて見ちゃった。初めてのちゅーだ、きゃー。

「ウチは別に、学内恋愛禁止ってわけではないけど、さすがに節度は守ってもらわないと……って、大丈夫? 顔真っ赤よ?」

「へっ? だ、大丈夫ですけど!」

 うそ、今私顔真っ赤なの!?
 確かに、顔が熱い感じはするけど……

「へぇ、意外と初なのねぇ。
 どう? せっかくだし、私としてみる?」

「! お、お断りします!」

 きゅ、急になにを言い出すんだ、この人は!?
 私の反応を見て、くすくすと笑っている。

「あはは、ごめんごめん、冗談よ。あんまりにかわいくてつい」

「あっ……くぅ」

 この人……完全に、私をからかっている!
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