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第十章 魔導学園学園祭編
760話 こっちも張り切っていくよ!
しおりを挟む二人から注文を……とはいえヨルはもう終わりルリーちゃんはうんうんと悩んでいる……注文を取りつつ、ふとヨルからの視線に気づく。
「いやらしい」
「なにも言ってないけど!? いや、普通に感心してたんだよ」
いくら私がかわいいからって、じろじろと見られるのはいい気分ではない。
けど、ヨルが私を見ていたのは、別の理由だという。
「感心?」
「そうそう。いや、その服だよ……まさにメイド服だ。白と黒のコントラスト、頭に乗せたカチューチャ……それに、短めのスカートはメイドの奥ゆかしさはないけど"わかってる"感がある」
なんか腕を組んで語り始めた。キモいなこいつ。
「誰が考案したのさ、やっぱエラン?」
「やっぱってなによ。フィルちゃんだよ」
このめいど服を……というかめいど喫茶を提案したのはフィルムちゃんだ。
最初は、私が喫茶店と提案していたけど……そこからフィルちゃんの提案で、今の形になったわけだ。
「フィル……あぁ、お前の娘か」
「冗談でも言っていいことと悪いことがあるよ」
「あははは、ごめんごめん」
フィルちゃんは私のことをママと呼ぶ。
それを知ってそんなからかいをしてくるとは……しまいにゃぶん殴るぞ。
とはいえ、今の私はめいどさんだ。慎ましやにしないとな。
「……っと。そういえば、ヨルに聞きたいことがあるんだけど」
「お、エランが俺に? なになに? あとご主人様って呼んでよー」
……やっぱりヨル相手に慎ましやかにする理由はないな。
「さっき気になる人に会ってさー」
「取り入れてもらえないか……
で、気になる人?」
「うん。リーフェルって名前の人なんだけど」
バサッ……
ヨルに聞きたいこと……それを口にしたタイミングで、なにかがテーブルの上に落ちた音がした。
それは、メニュー。今ルリーちゃんが持っていたものだ。
「大丈夫? ルリーちゃん」
「えっ、あ、は、い……すみ、ません……」
メニューを拾い、ルリーちゃんに渡す。
なんだか、メニューを受け取る動きが、ぎこちない? それに、顔色もなんだか……
「リーフェル? いや、知らないなぁ」
と、ヨルが答えた。
「そっか」
「けど、なんでその人のことを俺に聞いたんだ?」
「その人、目が黒色だったんだよ。だから、なにか知らないかと思って」
「黒目か……黒髪でか?」
「いや、銀髪」
「……やっぱり知らないな。てか、たとえ黒髪黒目でも俺だってなにもかも知ってるわけないしなぁ」
「初対面の頃私に迫ってきたくせに」
「あれは忘れてくれ、同郷と思ってテンション上がったんだよ」
ふむ、結局ヨルはリーフェルさんのことは知らない、か。
まあ、ヨルに聞いた理由だって、目の色が同じだってだけの理由だもんな。
瞳の色を変えることが出来るくらいに高い魔力適性がある。生徒会室に行った時にはすでに別の色だったし。
魔法で黒目にしている可能性もなくはないけど、目立つから黒目から別の色に変えたのにそれはないだろう。
銀髪ってのも、髪だけならどこにでもいる特徴だ。褐色や耳の形、瞳の色が違えばダークエルフって可能性もあるけど。
魔導具を身に着けている様子もなかったし、人間だ。
「……そ、そう、だよね……名前が同じ人なんて、たくさん、いるし……」
「ルリーちゃん?」
「ひゃい!」
さっきから、メニューを見たままなにかぶつぶつ言っているルリーちゃん。
どうしたのだろう。さっきメニューを落としてから、様子が変だ。
「どうかした? もしかして、なにを頼むか迷って……いや、お気に召すものがなくて?」
「い、いえ! えっと、あの……こ、これお願いします!!」
「! り、了解です」
ルリーちゃんが指さした品物をメモしつつ、ルリーちゃんの表情を確認。
……うーん、よくわからないなぁ。
なにか気になることがあるけど、それを必死に隠そうとしているような?
「それでは、お二人とも少々お待ちくさい」
「はい!」
「へーい」
二人の注文を書き終えた私は、ぺこりとお辞儀をしてからキッチンへと戻っていく。
私は料理担当ってことになってるけど、張り切った私は接客もしたいとお願いしたのだ。
ルリーちゃんのことは気になるけど、こっちも疎かにするわけにはいかない。
もちろん、料理の方も手を抜くつもりはないよ!
「ふんふんふーん」
「エランちゃん、ごきげんね」
「そりゃあ、友達が来てるからね!」
そういえば……もう半年以上は経つけど、友達に私の手料理をごちそうするのは初めてじゃないかな。
いつも学食なんかで一緒に食事はするけど、まさか手料理を振る舞う機会なんてないし。
うはぁ、そう考えるとちょっと緊張するなぁ。
「あら、ルリーさんではありませんの!」
「え、ノマさん?」
「あれ、ルリーくんにノマくんじゃないか」
「ナタリアさんも」
……向こうから、めっちゃ知った声が聞こえる。
え、待って……ノマちゃんとナタリアちゃんもいるの? 来ちゃったの?
私もそっち行きたいじゃん!
「フィールドちゃん、大丈夫? なんだかすごい顔してるけど」
「え? だ、大丈夫だよ! なんの問題もないよ!」
「もしかして、生徒会の仕事で疲れてるとか? なんなら、あとは私たちに任せておいて……」
「いやいや、大丈夫だから!」
いかんいかん。顔に出ちゃってたか私。
確かに、みんな楽しそうだなって思ったけど。
昨日もお休みしちゃったのに、今日までお休みするわけにはいかないよ。
それに、みんなに手料理を振る舞うのだって、楽しみなんだから。
よぉし、気合い入れちゃうぞ!
「お待たせしました!」
できた料理はクレアちゃんに持って行ってもらい、私は作ることに集中!
誰かのために作る……師匠に作っていた頃を思い出すなぁ。
師匠は家事はできない人だったし、私が全部やってあげないとだめだったんだから。
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